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(お蔵入り原稿)30年前の日経平均3万円と、2021年の日経平均3万円は実はまったくの「別物」である

※コラム掲載用に執筆をしていたのですが、日経平均株価が3万円を割って掲載タイミングを逃してしまったので、こちらに公開します。次に日経平均が3万5千円を超えたときには再利用するかもしれませんが、メルマガ読者限りということで。

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(リード文)
日経平均株価が3万円を超えてきて、31年ぶり高値と盛り上がっていますが、そもそも31年前の日経平均株価と今の日経平均株価が「別物」ということをご存知でしょうか。

(本文)
■31年ぶりの日経平均225高騰に盛り上がるメディアだが…

国内の株価が好調です。日本の場合、しばしば政権交代が発表されると動きの鈍い株価が上昇に転じます。アベノミクスの株価上昇も、安倍政権の成立が選挙で確実になってからではなく、野田政権が解散を打ち出してからスタートしています。

今回も菅総理の退陣表明が改革機運の高まりにつながり、一気に日経平均株価(225種)が上昇しています。9月14日の終値は前日比222円73銭高、3万0670円10銭となり、1990年8月以来の31年ぶり高値と盛り上がっています。

ところで、「30年前の日経平均株価3万円」と「2021年の日経平均株価3万円」というのは同じ数字のようにみえますが、実は同じでない、ということをご存知でしょうか。

もっとはっきりいうと「ほとんど別ものの3万円」なのです。

■31年前に「225社に入っていなかった会社」、これから入る会社

日経平均株価というのは、日経平均225種ともいわれ、その名の通り「225社」の平均株価です。これは国内を代表する企業を絞り込んだ株価指数となっており、全上場企業の株価が影響するわけではありません。

(ちなみに日経が出す指数はたくさんあって、「日経株価指数300」というものもあれば「JPX日経インデックス400」というものもあります。一番有名なのが225社を採用した株価指数です)

https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index?type=index

さて「225社」しか入らないといっても、時代の変化により倒産する会社、吸収合併される会社、市場シェア拡大のため対等合併して1つになる会社などがあります。また、かつては上場すらしていなかった会社が時代の変化で主力企業になることもあります。

例えば、「ソフトバンク」という会社は30年前の日経平均株価の構成銘柄ではありません。それもそのはず、ソフトバンクが東証一部に上場したのは1998年です。そして、日経平均株価に採用されたのは2004年です。

同様にユニクロ(ファーストリテイリング)が日経平均株価に採用されたのは2005年のことです。

過去には2000年4月に大量の銘柄入れ替え(30社)が行われたのですが、銘柄変更そのものの影響で日経平均株価が約15%低下したとも指摘されています。

先日は、今後の入れ替え銘柄が発表され「任天堂」がようやく225社に入ることが発表されました。言い換えれば今までは任天堂の好業績はまったく、日経平均株価に影響してこなかったということです。

なお、銘柄の入れ替えがダメというわけではありません。日本を代表する企業225社の平均株価を示すという目的を考えれば、入れ替えの意味はありますが、「連続性」として考えると、同じ225社といいながら、違う企業に新陳代謝されているわけです。

先ほどの2000年の入れ替えの例では、住友製炭鉱業、三井鉱山、品川白煉瓦、富士紡績などが225社から除外されていますが、日本の産業構造の変化があらわれています。採用された企業にはJR東日本、セブンイレブン、京セラ、エーザイ、セコムなどが入っており、これらは今でも活力のある企業という印象です。

今でも入れ替え前の企業が225社のまま残っていて、入れ替えがなければ、「日経平均株価」はある意味「古い会社の平均株価」となっていたことでしょう。

いずれにせよ、「連続性」を考えたとき、こうした性格は知っておく必要があります。

■日経平均株価の数字の算出方法も変化する

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