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千葉ロッテマリーンズの高校生投手指名戦略

どうも、やまけん(Twitter:@yam_ak_en)です。毎度noteを閲覧いただき、誠にありがとうございます。これからも不定期で気が向いた時に投稿していくのでよろしくお願いいたします。

前回のnoteで有料化に関して書きましたが、こちらは無料で公開いたしますので、是非読んでいってください。

野球ファン(とりわけプロ野球ファン)である方は、ドラフト会議の際に

「あぁ〜ドラフト1位で2人指名できないかな〜」

なんて一度でも思ったことはありませんか?
もしかしたら、野球ファン以上にスカウトや編成部・フロント等のプロの現場の方々の方が強く思っているかもしれません。

もちろん現行のドラフト会議のルールだと不可能です。いくら今年根尾昂(内野手・大阪桐蔭高)と松本航(投手・日本体育大)の2人が贔屓チームに欲しいと言っても、1巡目で指名される(された)彼らを両方獲得することはできません。当然ながらどちらも欲しいといっても、どちらか一方に絞らなければいけません。繰り返しになりますが、ドラ1の選手は1人しか獲得できません。

しかし、もしもスカウティングと育成の力でプロ入り後にドラ1級に匹敵する能力の選手が誕生したら…

2017年の大学生投手

2017年のドラフト市場は高校通算111本塁打の怪物・清宮幸太郎(早稲田実業)を筆頭に、高校生スラッガーが豊作の年でした。一方で、例年1位に名を連ねることが多い大学生投手は不作とされ、横浜DeNAが1巡目で入札した東克樹(立命館大)を除くとやや1巡目で指名するには実績・スペックともに足りないかな…という印象を個人的に抱いていました(結果的には東は1位指名にふさわしい成績を残したものの、豊作年であれば彼も2巡目まで残りそうなタイプであることは否めません)。

こちらは、2017年のドラフトで上位3位までに指名された大学生投手の一覧です。1年目から活躍できた!とはっきり言えるのはやはり東くらいでしょうか?

彼らが高校3年生だった2013年のドラフトでも、3位以内に指名された高校生投手は、5球団競合の末に楽天が交渉権を獲得した松井裕樹(桐光学園)、その松井の抽選を外した中日が1位指名した鈴木翔太(聖隷クリストファー)、読売が3位で指名した田口麗斗(広島新庄)の3名しかいません。この世代は総じて投手不作の世代なのかもしれません。

そんな中で、マリーンズは6位で鹿児島情報高校の142キロ右腕・二木康太を指名します。彼が後にドラフト上位指名で入団した投手たちと遜色ない成績を残し、マリーンズの将来のエース候補になると予想していた人は当時はほとんど居なかったかもしれませんが…。

始まった“高校生投手育成メソッド”

マリーンズは二木を指名するまで、高校生投手の指名に消極的でした。本指名では2008年のドラフト5位・山本徹矢(神戸国際大付)、育成を含めても、2010年の山口祥吾(立花学園)まで遡ります。二木を指名した2013年、マリーンズでは2008年に育成指名した西野勇士が台頭し、一軍で24試合に登板(22先発)して9勝6敗の好成績を残すなどブレークします。その後西野は背番号を村田兆治、小野晋吾らがつけた29に変え、活躍の場をブルペンに移し、マリーンズの守護神に君臨しました。現在は2016年に負った肘の故障もありなかなか思うような成績を残せていませんが、彼がマリーンズの偉大な投手の1人であることは間違いありません。新湊高校から2008年の育成ドラフト5位で指名された西野は、マリーンズの二軍本拠地・浦和で身体作りにフォーム固めと1から作り上げ、支配下登録をゲットし、のちに一軍主力級の投手となり侍ジャパンにまで選出される偉大な投手になりました。高校生投手・二木康太の指名の背景にはどこかで「第二の西野を誕生させたい!」と行った球団の思惑があったのかもしれません。

こちらは、二木の入団からの一・二軍成績一覧です。簡単に説明すると、

・1年目は体力づくりやフォーム固めメイン
・2年目に二軍で本格的な実戦登板開始
・3年目以降、本格的に一軍で登板を重ねる

といったものです。これはあくまで二木の場合ですが。

二木の場合は、2年目の2015年シーズンにイースタンリーグで好投を続け、消化試合となった一軍公式戦の最終盤で登板機会が訪れました。そこで好投を披露し、翌春のキャンプでもアピールを続けた二木は、先発不足のチーム事情もありましたが3年目でローテーション入りを果たします。打ち込まれることも多く最終的には防御率が5点台に乗ってしまいましたが、このシーズンから一軍で本格的に投げ始めている時点で、大学に進学した同世代の投手と比べて大きなアドバンテージを取っている、と言っても過言ではありません。4年目には規定投球回に到達し、リーグ最下位に沈むチームの中で7勝(9敗)防御率3.39の好成績を残しました。5年目の今季は春先にフォームを崩した影響もあってか少し成績を落としてしまいましたが、それでもチームの必要戦力に変わりはありません。

高校時代に最速142キロだった球速も、今では常時140キロ中盤、最速は150キロに乗るほどまでに成長しました。そんな二木がもしも昨年のドラフトの市場にいたら…

もしかしたら、1位で指名をする球団がいたかもしれません。
1位は極端かもしれませんが、2位,3位あたりで指名されてもおかしくないと言える成績をプロで残していると言えるでしょう。

二木以降のドラフト

二木を指名した2013年以降、マリーンズはそれまでとは打って変わって高校生投手を毎年指名しており、15年,16年,18年のドラフトではいずれも2名ずつ指名しております。
特筆すべきなのは、二木以降は岩下大輝(星稜)や成田翔(秋田商)など甲子園やU-18日本代表に選出された比較的有名な高校生投手を上位(3位)で指名しているのに対し、二木がローテーション投手を務めるようになった2016年からは種市篤暉(八戸工大一)や森遼大朗(都城商)、古谷拓郎(習志野)など、全国経験のないような投手を下位(もしくは育成)で指名するように、ハッキリと方向転換している点です。二木康太という素材を発掘したスカウト陣、そしてその素材を一軍水準までの戦力に育成したコーチ陣双方に自信が生まれた瞬間なのかもしれません。

今シーズンも4年目の岩下大輝と2年目の種市篤暉が後半戦から一軍に顔を出すようになりました。岩下は度重なる故障でやや出遅れた感はありますが、その間の強化トレーニングの成果として高い平均球速を誇る、これまでのマリーンズにはあまりいなかったタイプの投手になりつつあります。2016年に二木と同じ6位指名でプロの世界に入った種市も、2年目の今季は夏以降一軍で7試合に登板。勝ち星を挙げることはできなかったものの、決め球のフォークボールで強打者から空振りを奪うなど随所に才能の片鱗と育成の成果が見て取れます。登板数で言えば2年目の二木を上回っていますし、昨年の台湾ウインターリーグに続いて今年はオーストラリアのウインターリーグに参加しているため、来季の更なる成長が楽しみです。

ドラフト当時は世間的に無名だった投手も、素材を見抜いて指名して育成し、一軍の戦力に仕上げる。その育成例をもとにチームとして更なる育成メソッドの確率を図る。そして、それに基づいて再び高校生投手を指名して育成する。毎年継続して高校生投手を指名することで、このようなサイクルが形成される可能性もあります。また、ドラフトでは一般的に上位で指名された選手の方が一軍での出場数も多いですし活躍してくれる可能性も高まりますが、二木のように下位で指名した選手が着実に成長して活躍してくれると、俗に言う「うまい指名」となり、編成面で考えた時にチームにとって非常にありがたい存在となります。特に、マリーンズのように決して外部補強が多いと言えないチームでは、チーム編成においてドラフトの占める比重は必然的に大きくなるため、尚更下位指名の選手が活躍してくれるありがたみが増します。

高校生投手指名・育成に関しては球団として自信を持ち始めているように感じ取れますし、今後はこのスカウティングと育成メソッドを更に発展させて、「投手育成に定評のあるマリーンズ」と言われるようなチームになってほしいものです。

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