ゲームデザインはこんなふうに

月に二度、ゲームやそのつくり方について講義をしている。

中高生から大人まで、毎回参加する人もあれば、ときどき顔を出す人もいる。昼過ぎの13時半から16時まで、2時間半の講座だ。

このゲームデザイン講座では、そのつどテーマを設定している。今日は「推理型アドベンチャーゲームをつくる」というお題だった。

講座では、はじめにこれについて私から説明をする。そして実際に理解したことに基づいて、めいめいにゲームのアイデアを考えてもらい、それについて検討する。

私の講義では、基本的に受講者はいつでも質問や発言をしてもよいことにしている。なんなら私の話の腰を折ってもよい。気になることがあれば、気になったときに言おうというわけだ。私は、彼らの発言をすべて受け取って応答する。予めどんな質問や意見が出て来るかは分からない。私も自分では予定していなかった問題についてその場で考えることになる。そこがまた面白い。(これについては、以前、日本経済新聞の連載エッセイに「教室のノーガード戦法」と題して書いてみたことがある)

ところで、アドベンチャーゲームというのは、コンピュータゲームの古くからあるジャンルの一つだ。訳せば「冒険ゲーム」というわけだが、昔から「アドベンチャーゲーム」と呼ばれることが多かった。

基本的な仕組みはこうだ。

①まず、プレイヤーに状況が説明される。
②プレイヤーはなんらかの行動を選ぶ。
③行動によって生じた変化が説明される。

③は①のことでもある。つまり、状況⇒行動⇒状況……というループで成り立っている。実はこれ、アドベンチャーに限らず、多くのゲームに共通する基本的な構造でもある。プレイヤーが、自分で行動を選ぶところに醍醐味がある。こう書けば当たり前だろうと思うかもしれない。しかし、これを実際に作ってみようとすると、簡単ではない。特に、プレイヤーをその気にさせるゲームにしようと思ったら。

黎明期のアドベンチャーゲームは、当時のパソコンの性能が限られていたこともあって、全てテキストで表現されていた。小説のように状況が説明され、それに対してどんな行動をとるかを、キーボードから言葉で入力するという方式だった。

いま、君の目の前には古びた洋館が建っている。その手前には郵便受けがある。
>郵便受けを見る

という具合。「>」の後ろに書いたのが、プレイヤーによる行動選択。すると画面に次のように表示される。

郵便受けを見ると、中に小さな紙片が入っているのが見える。
>紙片を取る

と、こんな具合に進んでいくわけである。

これを基本として、次にはグラフィックと文章を使ったアドベンチャーゲームが登場し、さらには行動を言葉で入力するのではなく、選択肢から選ぶ方式や、画面上をクリックする方式などが現れた。3Dグラフィックをパソコンで扱えるようになると、奥行きのある空間の中を移動するような表現も使われるようになった。

――などという具合にホワイトボードに図や説明を書きながら説明する。アドベンチャーゲームの基本構造、その起源や歴史、作り方、注意すべきポイント、遊ぶ人の心理などなど。

そうしておいて、じゃあ実際にアドベンチャーゲームのアイデアを考えてみようといってお題を出す。これが仕事なら1日とか数日の時間をかけるところだが、限られた講座の時間なので、3から5分ほどで思いつくことでよい。また正解があるわけではないし、駄目で元々失敗上等の精神でアイデアを出そう。はじめから素晴らしいアイデアがぽんぽん出るとは限らない。日によっては何も思いつかないことだってある。それでもよい。いま、このお題に触れて、自分の脳裏でなにが思い浮かぶかを観察してみよう、と伝えて考えてもらう。私も考える。

その様子も描写してみようと思っていたのだけれど、長くなったのでここでおしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?