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物事について本当に理解するには? ファインマン・テクニックのススメ


あなたは、本当に理解しているかをどうやって確かめる?

何か新しい物事について理解したいとき、学ばなければならない状況に至った時、どのように学習を進めるか?

例えば、試験のための勉強を進めている際、あんなに勉強したのに1週間経ったら知識が抜け落ちてしまっていた。理解したつもりだったのに、理解できていなかったという状況に陥ったことはないだろうか?
僕は今までに何度も経験している。
物事について理解できたつもりになることを防ぎ、本当の理解を得るためにはどのような学習を行えば良いのだろうか?

このように「理解していることが何であるか理解する」ということをメタ認知と呼ぶ。メタ認知を働かせながら学習を行うことで、より正確に学習進捗を測ることができる。

一般的な進捗の測り方としては、読み進めたテキストのページ数、解いた問題数、費やした時間などがあると思う。メタ認知では理解度という指標によって進捗を測ることができ、これは理解しているかどうかをより正確に確認できる。

メタ認知を働かせながら学習できるテクニックとして、今回はファインマン・テクニックを紹介したい。

ファインマンテクニックとは?

ファインマンテクニックとは、ノーベル物理学者のリチャード・ファインマンが推奨していたとされる、深い理解を得るための学習法である。

自分が理解している・もしくは理解したいトピックについて、分かりやすい説明を行えるか?というチャレンジを通して理解度を測ることができる。
もし、説明の途中で言葉に詰まる部分があれば、すぐに理解度が不足している部分を特定できる。

説明によって理解度に対するメタ認知を働かせ、足りない部分を再学習によって補強する。その後、再度説明を行い理解を強化していくことができる。
これを繰り返していくと、最終的には分かりやすい説明をスムーズに行えるようになる。この時点で初めて、本当の理解を得ることができたと言っていいだろう。

ファインマンテクニックの実践手順

  1. 学習したい物事について、自分が知っていることを説明するか、書き出す

  2. 説明の過程で、理解が足りない部分やうまく説明できない部分が見つかる

  3. 理解が足りない部分については再学習を行い、理解を強化する

  4. ステップ1から3を、分かりやすく説明できるまで繰り返す


1. 学習したい物事について、自分が知っていることを説明するか、書き出す

例えば、円安・円高について学習したいとする。
テーマについて現時点で知っていることを書いてみるとする。

・円安とは円が他の通貨に比べて安い状態にあること
・円高とは円が他の通貨に比べて高い状態にあること

小学生が理解できる説明であれば、分かりやすい説明であろうと考えたので、知り合いの小学生に円安・円高を説明してみることにした。


2. 説明の過程で、理解が足りない部分やうまく説明できない部分が見つかる

すると、「他の通貨に比べて安い状態、高い状態」という部分が理解できないと言われてしまった!
この説明は十分に分かりやすいものではないということだろう。

うまく説明できない部分が見つかったので、再学習を行なって出直すことにした。


3. 理解が足りない部分については再学習を行い、理解を強化する

ここで、Google検索などを使って円高・円安について学び直す。
すると、「他の通貨に比べて安い状態、高い状態」を
もっと分かりやすく説明できることに気づいたとする。


円安とは、
例えば明日アメリカに旅行に行くとして、円をアメリカのお金である、ドルに交換してもらう必要がある。
100円で1ドルに交換できるみたいなので、空港で1万円を100ドルに交換してもらい、アメリカに行った。
しばらくして、アメリカから日本に帰ってきたので、もう使わないドルを日本円に戻したくなった。
また空港で100ドルを交換してもらったが、今度は12000円ももらえた。ドルに交換するときは1万円で100ドルだったのに、今度は100ドルが12000円に増えた。なぜだろう?

答えは、旅行に行っている間に日本円とアメリカドルの関係が変わってしまったからなのだ。100ドルで交換できる円の数が増えて、逆に10000円で交換できるドルの数は減ってしまった。
今もう一度100ドルを手に入れるには12000円を支払わないといけない。
同じ100ドルを手に入れるのに多くの円が必要なので、旅行に行った時に比べて円が安くなったと言える。これを円安という。

円高とは
さっきの逆で、円の価値が高くなることを言うので、100ドルを手に入れるのに必要な円の数が減ることになる。
例えば、8000円で100ドルに交換できたとすると、旅行に行った時に比べて円が高くなったと言える。これを円高という。

さっきよりも分かりやすい説明になったとは思うが、説明がものすごく長くなった。ここで伝えたいのは、誰にでも分かるような説明を行おうとするとある程度の簡潔さは失われるということだ。

専門家だけが理解できる説明に比べて、小学生でも理解できる説明を行う際には、簡潔な語彙を分かりやすい複数の語彙に変換する必要があるので、文字数は増える。
ただし、僕は簡潔であることと分かりやすいことは異なると考えている。

最初と最後の説明、どちらが優れているかは状況によって変わるが、今回の目的である、理解を深めるということにおいては、分かりやすい説明ができることが、理解をしている証明になる。

円安とは円が他の通貨に比べて安い状態にあること

この簡潔な説明を誰かに行ったとして、「理解できない。もっと丁寧に説明してほしい」と言われた際に説明をし直すことができないのであれば、それはどこかで見た円安に対する説明を丸暗記しているだけであり、理解しているとは言えないだろう。


4. ステップ1から3を、分かりやすく説明できるまで繰り返す

もう一度、知り合いの小学生にステップ3で作り直した説明を行うとする。
その結果、「なるほどね。同じ量の円で買えるものの量が増えたら円高、減ったら円安ってことかー」と言われ、説明を理解してもらうことができた!

というか小学生の説明の方が簡潔で分かりやすいかも?と思ったことは心の奥にしまっておくとして、チャレンジには成功することができた。


以上の4つのステップによって、ファインマン・テクニックを実践することができるだろう。今回はアウトプットとして話して説明することにしたが、紙に書き出すのだってOKだ。とにかく、自分が理解した気になっているかもしれない状態から、アウトプットによって理解していること、していないことを明確にすることが大事である。


まとめ

  • 理解できているかを確かめながら学習するためにファインマンテクニックが有効

  • ファインマンテクニックでは、学習対象について分かりやすい説明を行うチャレンジによって、理解度を測る

  • うまく説明できていない場合は、理解が足りていないので学び直す

  • 小学生でも理解できるような説明ができるまで、学習と説明を繰り返す


ファインマンテクニックは紙とペンもしくは、話を聞いてくれる人がいれば今日から実践できるテクニックだと思う。
最初はうまく説明できなくて打ちのめされるかもしれないが、その過程で必ず理解が深まっている。自分を安心させるだけの不確かな学習法を卒業して、本当の理解を得る学習法を実践していこう。

リチャード・ファインマンとそのテクニックを広める存在に感謝。


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