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悪人も、まぁ、悪くない

会社の飲み会にて。

社長がだらだらと喋って、
誰かが「長い!」と突っ込んで、乾杯して。

しばらくすると、
ちらほらと壁のシミができてくる。

女性なら壁の花だが、
男どもはシミなのだそうだ。

真面目で素朴な中国人技術者達。
当時のメンバーは静かな人が多かった。


ヒマそうにしている。

ので。
そして私も飲み会は苦手なので。

話しかける。

と、それなりには喋るが、
お互いすぐに静かになってしまう。

やはり言葉の壁は高い。

のだが。

鉄板ネタがあった。
三国志である。


好きな武将は?

どういうわけか、
ってのも変かもしれないが。

みんな即答してくれた。


Aさんは孫権。

ソンケン。
子供のほうね。

日本語読みで応じてくれた。

三国志でソンケンといえば
孫堅か孫権、あるいは孫乾。

親子なのは孫堅と孫権。
孫堅の子が孫権。

うまい具合にホワイトボードがある。
Aさん、孫権と大きく書いて丸で囲った。

実際には簡体字で「孙权」と書かれたが、
分からんと言ったら繁体字で書いてくれた。


孫堅もいいけど、孫権がいいね。

孫策は?
あの人は‥‥、ちょっとね。

孫策も孫堅の子。孫権の兄。
勇猛で知られ人気も高い。

他は?、と聞けば、
見覚えのある名前が並んでいった。


Bさんは趙雲。

強いし、義理堅いし、格好いいし!

劉備陣営、五虎将ってことで、
馬超は?、と聞くと、

あれは、駄目!

理由は良くわからないが
Bさんとしては馬超は駄目らしい。

ホワイトボードに名前を書き、
その上に、ご丁寧にも赤色で✕印を書いた。


そんなホワイトボードを見て、他の、
壁のシミの中国人技術者達が集まってくる。

みな、思い思いの名前を挙げていく。
そして必然的に魏呉蜀その他に分かれる。

とても分かりやすい。


あなたは?

と聞かれたので、曹操と答えた。

すると一斉に、なんで?、と非難の嵐。
魏派も同じような反応をしつつ笑っている。

いや、ちょっと、変だよ!
アタマ、おかしいんじゃない?

とまで言われる。

なんで?、と聞き返す。

いやー、あの人はね、悪い人だよ。
うん、悪人。すっごい悪人。

京劇や演義の影響とは聞くが
ここまで浸透しているものか。

すると近くにいた先輩が、
なんだ、おまえ、悪人なの?、だって。

曹操扱いされるのは嬉しいけれど、
いくらなんでも重すぎる。


なんてことをしていたら、
中国人技術者のグループに放り込まれた。

日本語は片事。
英語はお互い片事。

C言語はお互いそれなりに分かる。
あとは紙に図や絵を書いたりで‥‥。

これはもう20年近く前のお話。
今ならgoogle先生にお任せだろう。

まぁ、記憶を辿って、懐かしいなぁ、
なんて思えるのだから、良い事なのだろう。


ちなみに、去年だったか。

若い中国人技術者に聞いてみたら、
三国志は詳しくないので‥‥とのこと。

人にもよるのだろうけど。

もひとつちなみに、50過ぎのCさんは、
やたら金瓶梅の話をしたがって困った。

分かりましたから、
はい、飲みましょうねー。

ビールを注ぐと、ぐいと飲み干して、
よし、じゃあ、源氏物語の話をしようか!

なに繋がりだよ、まったく。


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