Vol.3『つぼのなか ~inside a pot~』について
やぎ座のA型、八木詠子です🐐
平成.EXEで脚本と演出と照明を担当しています。
演劇企画 平成.EXE vol.3『つぼのなか ~inside a pot~』にご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました! お客さまひとりひとりの感想やご声援が活力になっております。心から感謝いたします。
あらためて作品を振り返って作・演出としての想いを綴っていこうと思います。
この作品のはじまりは今から約1年前。主催の藤松さんにプロットをお渡ししたときにはキャラクターもストーリーもほぼ変わらない形でした。そこからブラッシュアップを重ね、本来なら1月に公演する予定でしたが、団体として様々なことを鑑みて見送ることに…。結果として今年1月に公演した前作『怖カフェ怪談』という作品が生まれ、たくさんのお客さまにご好評いただけました。
作品の大きなテーマは「婚活×オカルト」「恋愛・結婚・出産」
ですが、裏のテーマとして「女性の怒り」がありました。これはストーリーとしての繋がりもある前作『怖カフェ怪談』でも同じテーマを扱っていました。オカルトや怪談文化を前に消費される女性、村の悪しき風習で搾取される女性。どちらも煮えたぎるような怒りを抱え、その振り上げた拳をおろす場所を探していました。
前作の霞侑子が復讐のため一線を越えた女性ならば、今作の栗田葉子は周囲との出会いで越えずに済んだ女性として、対比的に描きました。(霞に殺された湯浅仁は実薙村出身という設定!)
作品としてこだわったポイントは多々ありますが、書く時に意識していたのが「2時間サスペンスとオカルトの融合」でした。2時間サスペンス的な分かりやすい事件や群像劇を交えながら、今までの作品で描いてきたオカルトやそこにまつわる悲哀を描きたかったのでSNSにて「最後のシーンで崖がみえた」との感想を拝読したときにはガッツポーズをとりました!ありがとうございます。
現実の社会問題や人々の置かれている状況と地続きの葛藤を描くのに、普遍性を欠いたわかりにくい作品を作るのは誠実ではないな、と思いどのお客様も置き去りにしないよう気をつけました。結果的にわかりやすさをお褒めいただくことが多く嬉しかったです。
演出として。作品として書き上げたとき、正直自信がなかったです。キャラクターがどこかで観たことがあるようなものになっていないか。設定上は複雑さを持っていてもそれが物語の上できちんと現れているか。とても不安でした。
ですが、そういった面を演者の皆様にたくさんカバーしていただきました。生身の人間が役として板の上に立つ。それがどんなに面白い化学反応を生むか、わたし自身改めて学びました。自分と違う考えを持った方が作品やキャラクターを別の角度から理解してくれる温かみも感じました。この1ヶ月間、演者の皆様に支えられて走り抜けることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。
個人の生き方を模索している方がたくさんいるこの時代に『つぼのなか ~inside a pot~』という作品を多くのお客様に楽しんで頂けたこと、心より嬉しく思います。
作品をつくるときに願っていることはただ一つ。
「この作品が受け取った方々のお守りになりますように」
これだけです。どうか現実社会に疲れ、生き方に悩んだときこの作品を、キャラクターたちの決断を思い出して皆様なりの幸福を追い求めていただけたら作者として、また演出としてこの上ない喜びです。
改めましてご来場、誠にありがとうございました!
平成.EXEとして大きな公演は来年までお休みですが、ワークショップやちょっとした企画など楽しんでいただけることを定期的にやっていこうと考えております。八木詠子個人としても、小説や短歌のアップをしていきます!
今後ともご声援よろしくお願いいたします!
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ここからはオマケで、作品に登場する言葉の由来をこっそりお教えします。
苦手な方はここでページを戻ることをおすすめいたします!
・胡桃沢笑の「笑」という漢字の由来は、巫女が神を楽しませるために両手を広げて舞い踊る姿を表していることから。
・李坂、梨田、胡桃沢の務めるイベント会社「ホワイダニット」の由来。もともとはミステリー用語でWhy done it?の略。「なぜ行ったのか」犯行に至った動機の解明を重視した推理小説のこと。
・観神原の会社「リトルリドル」の由来。
「リドル」とは謎かけの意で「リドルストーリー」から取った。物語中の謎に明確な答えを用意しないまま終わるストーリーのこと。
・なぜ月の神なのか?
柚のモチーフのひとつはかぐや姫。「竹冠のつく名前」「出自が不明な子ども」などかぐや姫を元に考えた。
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