『しじまの海』 【SS】
一週間ぶりに煙草に火をともし、思いっきり吸ってみると、肺の奥の方がぎゅうっと音を立てて唸った。新鮮な外の空気よりも、濁った生気のない煙の方が俺の喉を熱くする。吸い終わった煙草を地面に落とすと火が消えてからも何度も何度も踏み潰す。夕陽に照らされたアスファルトの上で散らばった灰と煙草の残骸を、俺はしばらくみつめていた。
車内に戻ってラジオをつけると俺の嫌いな恋の流行歌が流れていた。性欲をポップな歌詞に変えただけのくだらない曲だったが、ラジオを消す気力もなくつけたまま仮眠をとる