見出し画像

投資における必読書「ウォール街のランダム・ウォーカー 」

投資関連の書籍の中ではダントツ有名でよく必読書と言われている「ウォール街のランダム・ウォーカー」を、重い腰をあげてやっと読んでみました。初版が1973年とかなり昔なのに、今なお名著と言われ続けてるのってすごい。

正直なところ「一般の個人投資家にとって必読か」と言われると若干怪しい気もしました。翻訳された洋書ゆえの難解さが結構あったり、金融から程遠い一般的な人たちには難しすぎる説明が多々あったりなど、入門書としてはオススメできない感。

ただ一方で、書いてある内容自体は示唆に富む部分が多かったし、データに裏付けされた解説が多くて一個人の投資・資産運用ライフを考える上でとても参考になりました。

以下、本書から抜粋・コメントしておきます。

過去四五年間を通して、私の提唱するこの理論は驚くほど当てはまることが確認できた。というのも、プロの運用する株式ファンドの長期的な運用成績を調べたところ、その三分の二以上は幅広い銘柄に分散投資するインデックス・ファンドよりも見劣りすることがわかったからだ。

本書で著者のバートンさんが何度も繰り返し言っているのが、分散投資ができるインデックスファンドに長期間の積立投資をすることを個人の投資戦略の主軸にすべきということ。

戦後最大のバブルとその崩壊劇は、日本での株価と地価をめぐるものだろう。一九五五年から九〇年にかけて、日本の地価は約七五倍に高騰した。そして、九〇年には日本の地価総額は約二〇兆ドルと推定された。これは世界全体の富の約二〇%、世界中の株式時価総額の二倍に相当するものだった。アメリカは国土面積では日本の二五倍も大きい。しかし、九〇年当時は、日本の経済繁栄を織り込んで日本の地価総額は、何とアメリカ全体の五倍にも評価されたのだ。計算の上では日本は単に首都圏を処分するだけで、アメリカ全土を購入することができたことになる。
日本の株価水準の異常さは、個々の会社ごとに比較してみると、より劇的なものであった。バブルの最中に公開されたNTTの時価総額はAT&T、IBM、エクソン、GE、GMを全部足したものよりもさらに大きかったのだ。
バブルの崩壊は、日本の金融システムならびに日本経済全体に対して、甚大な影響を及ぼすことになった。アメリカと異なり、日本では商業銀行も生命保険会社も一般企業も、巨額の株式や不動産を保有していたのである。この結果、バブルが崩壊したことによって金融システムが破綻し、深刻な景気後退が二一世紀に入ってからも日本経済を苦しめ続けることになった。

日本のバブル、もっと過去を遡ってオランダのチューリップバブル、そして2000年代初頭のネットバブルなどを事例に、どんなバブルもいつかは弾けるという解説。どんなプロにとっても株式投資は難しいことを指摘。

過去の株価の記録を用いて将来を予測しても、そこから利益を得ることはできない。テクニカル戦略の発想は概して面白いし、しばしば気休めにもなる。しかし、実質的な価値は全くない。これがウィーク型のランダム・ウォーク理論の結論である。テクニカル理論は、テクニカル情報を作ったり売ったりする人々と証券会社だけを肥えさせてきた。
アナリストというのは、どんな状況下でも強気シナリオを作る能力を持っている。したがって過去においては、一〇の「買い推奨」に対して「売り推奨」はせいぜい一程度であった。しかるにインターネット・バブル相場の下では、その比率は一〇〇対一まで拡大した。やがてバブルがはじけた後に、著名なアナリストたちは「殺すぞ」という脅迫電話や集団訴訟の対象となり、彼らを雇っていた証券会社もSECやニューヨーク州の司法長官エリオット・スピッツァーによって取り調べを受け、罰金を科せられることになった。
ウォール街の専門家の多くは、企業の過去の経営実績と将来の成長の間には、信頼に足るような因果関係は全く見られないという事実を受け入れようとしない。しかし実際には、一九九〇年代の長期繁栄の時期ですら、毎年安定的に成長率を維持した大企業は八社に一社の割合でしか存在しなかったのだ。そして、その中で二〇〇〇年代に入ってからも高成長を維持した企業となると、一社もなかったのだ。証券アナリストが、長期間一貫して高成長を続ける企業を予見することはできない。

テクニカル分析やアナリストに沿った投資戦略もひたすら批判。笑

インデックス運用の優位性を示す証拠は、時が経つとともにますます増えている。スタンダード&プアーズ社は、毎年S&P平均に関する様々な指数と積極(アクティブ)運用されている株式投信のパフォーマンスを比較して公表している。過去五年間を見ると、積極運用ファンドの四分の三以上はそのベンチマーク指数に負けていることがわかる。どの年の結果も似たようなものだ。本書の版を改訂するごとに新しいデータを紹介しているが、いつも結果は同じだ。

ひたすらインデックス運用の有用性をあらゆるデータをもとに語っていきます。

多くの人がインデックス運用とはS&P五〇〇指数を買うことだと間違って思い込んでいる。しかし、もはや今日ではそれだけがインデックス運用ではない。S&P五〇〇指数はアメリカ経済の最もダイナミックな部分を構成する、何千もの中小企業群を除外しているからだ。この結果、私は今では、もし一つだけアメリカ株のインデックス・ファンドを買うとするなら、S&P五〇〇ではなく、市場の動きをよりよく反映していると思われるラッセル三〇〇〇、ウィルシャー五〇〇〇、もしくはMSCIブロードUSインデックスのほうを勧めする。

S&P500への投資が一般化する昨今でこの論調は新鮮だった。なるほど。

インデックス・ファンドの普及は、一般投資家にとっては大変な福音になってきた。激しい競争が展開されてきたため、インデックス・ファンドの運用コストは限りなくゼロに近づいている。そのおかげで、老後に備えた資産運用もかつてなく低コストで行えるようになったのだ。また、何百万人もの投資家に対して、投資のやり方そのものを大きく変革するように仕向けてきた。広く分散投資された安価なポートフォリオを提供することによって老後への備えを助け、資産運用全体に対して貢献してきた。

最後の最後までインデックスファンドという発明に賛辞を送る内容でした。

かなりページ数のある中からほんの一部を抜粋しただけなので、中身はもっと様々なデータに基づいてインデックス運用のメリットについて語られています。その上で一般個人としてどんなマインドを持って資産運用に取り組むべきか、どんな知識を身につけるべきか、「貯蓄から投資へ」がなかなか進まない日本において必要な知恵が詰まっている本でした。

ただ洋書の翻訳ってやっぱり読みづらいな...

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?