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鈴木英治「義元、遼たり」

鈴木英治「義元、遼たり」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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「海道一の弓取り」と称された今川義元。幼いころに仏門に出され、師父・太原雪斎とともに京都での学びの日々を送っていた栴岳承芳(のちの今川義元)は、兄・氏輝に呼び戻され駿府に戻る。やがて氏輝は夭逝、還俗し家督を継ぐことになった義元に、同じく仏門にあった兄の玄広恵探が対抗。『花蔵の乱』と呼ばれる家督争いが起こる。『心を鬼にしなければならぬ』と仏の道を捨て今川家総領としての道を選んだ、若き日の義元に焦点を当てた長篇歴史小説。
 今川義元と言えば、勝利の美酒に酔い痴れて、桶狭間で織田信長の奇襲に遭ったという「驕慢」のイメージ。しかしこの作品に出てくる義元は、全くイメージが違っている。京都の仏門で禅を学び、師である雪斎の教えを忠実に守り尊ぶ。師弟とも酒は嗜まなかったと言う。兄弟への敬愛は深く、家督争いも嫌う。側近の部下の功績もきちんと評価し、かける情にも厚い。今でも静岡県民には人気があるそうだ。惜しむらくは、雪斎亡き後に名軍師を得なかったこと。それほど師弟の絆は深かったのである。

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