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フリーライターから社長へー苦悩の先にたどり着いた“お茶×言葉”の仕事

本noteは、相良海琴(@mikoto_write)さんに企画・執筆・取材を担当していただいた、宿木雪樹のロングインタビューです。

宿木雪樹は2017年にフリーライターとして歩み始め、自身がお茶に救われた経験から、『一日一杯のお茶で「ひとやすみ」を届ける』というミッションを掲げ、2020年1月株式会社宿木屋を設立、代表取締役社長になりました。

宿木雪樹が、どのようにしてお茶の事業にたどり着いたのか、前・後編の2回にわたり、その物語をお伝えします。前編では、フリーライター時代に抱えていた苦悩や会社設立に至った経緯を語ります。

(取材・執筆・写真=相良海琴)

ライター業務と新事業、二刀流で邁進する社長

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―会社設立、おめでとうございます。無事に会社を設立できたときの率直な気持ちをお聞かせください。

「ここから始まるんだ」と気持ちを新たにした一方で、ちょっと拍子抜けもしました。オフィスを借りたわけではないので当たり前なんですが、大変な手続きを経て出来上がったのは書類だけなんですよ。大きなことを始めた割には日常が続いているような、不思議な感じがしました。

ホッとしたと同時に焦りも生まれました。法人化したからといって、会社が勝手に何かを始めてくれるわけではありません。特に現在は私1人なので、自分がしっかり動かないといけないんだと改めて実感しています。

―現在の仕事状況は、どんな感じですか?

ライターの仕事をそのまま継続しつつ、宿木屋として始める新しい事業のことも考えている状態です。

ライターの仕事と新しい事業って、脳の使い方が全然違うんですよね。依頼されて記事を書くときは、依頼のなかに答えがあります。でも、新しい事業はどこにも答えがないので、最善を自分で作らないといけません。その都度頭を切り替えなければならないので混乱はしますが、なんとかやっています。

―ライター業務も続けられているんですね。フリーライター時代を振り返ってみて、「ライターとしてやっていけそう」と思えたきっかけは何かありましたか?

正直、ライターとして自信を持てたことは1度もないんですよね。それでも強いて挙げるとすれば、初めて取材をした経験が大きかったと思います。

クラウドソーシングを卒業してビジネスSNSのWantedlyに登録したところ、ある企業から、Wantedlyに掲載する記事の取材依頼がきたんです。その企業と面談や打ち合わせをしたうえで、ユーザーさんに取材しました。でも、編集者さんがいないので細かい調整を自分でやらなければいけませんでしたし、記事の型も特に決まっていなかったんです。

すべて自分で考えて対応するのは大変でしたが、書き上げた記事はとても良い評価をいただきました。取材相手の方も、良い時間を過ごせたと言ってくださったんです。

そのとき、人と対面して物語を紡ぐことが、すごく楽しいと思えました。それが、ライターとしてやっていけそうだと感じた出来事ですね。

壁にぶつかり、立ち戻った原点は7万字の小説

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―ライターとして記事を生み出す一方で、2019年にはnoteの「#あの夏に乾杯」投稿コンテストで『消えない泡』が特別賞に選ばれるなど、小説も精力的に執筆されていますよね。

そうですね。仕事で書く記事と小説は全くの別物で、仕事が忙しくなればなるほど小説を書きたくなります。今も、すごく小説を書きたい。

子どもの頃から小説を書くのが好きだったんですが、実は大人になってからは人前に出すのが恥ずかしくなっていたんです。一応文章のプロとして仕事をしている以上、読めるものを出さなければいけないと考えていました。

―そんななか、再度小説を書き始めたきっかけは何だったのでしょうか?

2019年の夏頃、ライターを続けるのが本当に嫌になってしまった時期があったんです。物語を紡ぐのが楽しいと思って仕事を続けてきたはずなのに、ライターとして評価されるためにどこを目指せばいいかわからなくなってしまって。もっとうまく文章を書かなきゃ、記事を読んでもらうためにインフルエンサーみたいにならなきゃ、といろいろ考えていたら、頭がパンパンになってしまいました。

このままだと、文章を書くことが嫌いになってしまう。そう思ったので、一度原点回帰することにしたんです。そもそも私にとって文章を書くことってなんだっけと過去を振り返ってみたら、子どもの頃に小説を書いていたのが始まりでした。

12歳のときに書いた小説を読んでみたら、7万字もの大ボリュームだったんですよ。しかも支離滅裂な文章でもなく、普通に読めるレベルでした。子どものころの私は、お金ももらえないし読者もいなかったのに、こんなに小説を書けたんだと驚きました。それを見たら、やっぱり私は文章を書くのが好きだなと思ったんですよね。

じゃあ、大人になった今の私が小説を書いたらどうなるのか試してみよう、と思ったんです。何の縛りも依頼もない私の文章として小説を出してみて、その結果を受け入れよう。それが今の私の実力なんだと認めてあげたら、仕事でも鎖にとらわれる感覚はなくなるかもしれない。そう思ったんです。

―書くことが好きな自分を見つめ直せたことで、改めて小説を書くことができたんですね。

そうなんです。『消えない泡』を書き、吹っ切ることができました。私は書くことが好きだから、仕事じゃなくても書くことを止めないと思ったんです。そうしたら、「好きを仕事にしている」という感覚が戻ってきましたね。


お茶を売るだけでなく、付随する物語を紡いでいく

―宿木屋の事業は、「茶葉や茶器のオンライン販売」や「お茶の情報を発信するメディア運営」など、お茶に関するものが目立ちます。そこに、ライターの仕事はどう絡んでいくのでしょうか?

今までフリーライターとして培ってきたスキルを、そのままお茶の魅力を発信するために使うのが理想です。茶葉の栽培や茶器のデザインなど、お茶に関わる仕事をしている人に取材をして、商品の魅力を言葉にしていきたいと考えています。

あとは、地域のライターさんにお茶の魅力について語る記事を書いてもらって、編集する仕事もしたいです。日本では地域ごとに異なる茶葉が育てられているので、その地域に住んでいるライターさんに記事を書いてほしいと思っています。たとえば、ブレンドハーブティーのことは北海道のライターさん、ねじめびわ茶のことは鹿児島のライターさんが書くようなイメージです。それぞれの地域のお茶を、物語と一緒に届けることができればいいですね。

2020年中には、お茶と物語を販売するオンラインサイトを作りたいと考えています。

―ただ茶葉や茶器を売るのではなく、これまで培ってきたライターのスキルを活かした物語をつけることで、よりお茶の魅力を伝えられるようにするんですね。

そうですね。それと、北海道で会社を立ち上げたからこそ、地域経済の活性化というのも関わりたいテーマです。

北海道はインバウンドが盛んで、外に北海道の魅力を発信することに力を注いでいると思います。でも、私は北海道に住んでいる人が北海道の魅力を感じ、お互いに称賛し合うこともすごく大事だと思っているんです。たとえばオンラインサイトでも、北海道にいる人が北海道のお茶の素晴らしさに気付けるような仕組みを取り入れたいと考えています。

お茶を通じ、ひとやすみの習慣を広めたい

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―そもそも、なぜお茶の事業を始めようと思ったのでしょうか?

フリーランスになって趣味としてお茶を飲み始めてから、救われたんです。

私は放っておくと仕事ばかりしてしまうので、無理やり作ろうとしないと趣味を持てないんですよ。でも、外に行かなきゃいけない趣味は長続きしないので、家で仕事をしながら続けられる趣味を探しました。そして、お茶に行き着いたんです。

私にとってお茶はおいしいだけでなく、心に余裕をもたらしてくれる存在なんです。忙しいときも、ライターとして自信を失ってしまったときも、お茶を飲むと心に余裕が生まれて頑張ろうと思えたんです。お茶を飲んでひとやすみして心に余裕をつくることが、自分にとってとても大切な価値だと思えました。

そして、この価値を自分で生み出せるようになれば、私のようなワーカホリックがひとりでも救われるんじゃないかと考えたんです。そこで、一日一杯のお茶を飲んでひとやすみする習慣を多くの人に広めたいと思い、お茶に関する事業を始めようと決めました。

―自分が好きなお茶を売りたいというだけでなく、お茶によって得られる余裕を届けたいんですね。

どうしても自分を急かしてしまう、休めないタイプの人っていると思うんです。でも急かし続けるとどこかで爆発してしまうから、そうなる前にお茶を飲んでひとやすみする習慣をつけましょう、と伝えたいですね。

お茶に向き合う会社をつくり、逃げずに育てていく決意をかためた

―お茶の事業を始めたいと思ったから、会社を設立したということですか?

はい。個人事業主のままでは、限界があると思ったんです。

お茶に関わる仕事をしている方とつながるため事業の説明をしようにも、個人がいきなり「宿木ですけど」と言っても「お前誰だよ」ってなるじゃないですか。だから、ちゃんとお茶に向き合う会社ですと言えるのが大事だと思って、法人化しようと決めました。

あと、法人化は「もう逃げないぞ」という私の決意の表れでもあります。

私は会社を2回辞めていて、好きでやっているはずのライターですら辞めてしまおうかと考えたことがありました。だから、今からおばあちゃんになるまでずっと携わり続けるものを立ち上げて、他の誰でもない私が育てていこうと覚悟を決めたんです。

始めた当時は覚悟を決めたはずのフリーランスですら逃げようとしてしまったので、絶対に逃げられない社長になれば、辞め癖もなくなるんじゃないかと思ったんですよね。逃げると自信を失ってしまうので、逃げない私になりたい。法人化には、そんな意志も込めています。

【後編】はこちら


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