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一日一杯のお茶習慣を広め、「だれもがひとやすみできる社会」を目指して

フリーライターを経て株式会社宿木屋を設立し、代表取締役社長に就任した宿木雪樹さん。お茶に関する事業を始めるため法人化を決めてからは、会社をあらゆる方向から支えてくれる人たちに恵まれました。後編では、会社設立準備中に直面した苦悩を乗り越えた経緯や、今後目指していく会社の姿に迫ります。

(取材・執筆・写真=相良海琴)

激しいダメ出しの先にあった、キーパーソンとの出会い

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―法人化の準備を進めるなかで、特に印象的だった出来事はありますか?

法人化を決めた頃から、急に人間関係の入れ替わりが起きましたね。

それまで付き合いのあった友人が離れ、新しい道へ進むためのキーパーソンとなる人が続々と登場しました。やっぱり、目指す場所が変わると自然と周囲の人も変わるんですかね。

―たとえばどのような方が、雪樹さんにとってキーパーソンとなったのでしょうか?

今、定期的に話を聞いてもらっているコンサルタントの方がいるんですが、その方との出会いは私にとって大きいものでした。

2019年11月頃は法人化やそれに関わるプライベートの課題を見て見ぬふりをしていて、それについて友人からめちゃくちゃにダメ出しされました。私を想ってのことだったのでしょうが、当時の私はどん底に落ちてしまったんです。この生活のすべてが信じられない、もう死んでしまいたいと考えるところまで追い込まれて、常時ネガティブ思考になってしまいました。

このままではいけないと思い、カウンセリングを予約したんです。そこでカウンセラーの方に、法人化を目指している現状や苦悩を泣きながら打ち明けました。

そうしたらそのカウンセラーの方が、「自分は資格を持っているからカウンセラーをやっているけれど、法人化のアドバイスをする仕事もしているんです」と言い出して。しかも、もともと小売業をやられていて、オンラインショップを成功させた経験がある方だったんです。そこからお茶の事業について話して、今はカウンセラーではなくコンサルタントとして相談させていただいています。

―カウンセラーとして出会った方が、会社のコンサルタントに。すごい奇跡ですね。

そうなんです。お茶の相談をしているうちにいつの間にか涙も止まっていましたし、改めて法人化を目指して歩き始めようと思えました。

振り返ってみると、私はきっと泣き言を聞いてもらうよりも、未来を見せてもらったほうが元気になれるんですよね。ずっと同じところで悩んでいるとどんどん疲弊してしまうので、とっとと切り上げて次に行くほうがいい。前に進むお手伝いをコンサルタントの方にしてもらったおかげで、すごく元気になりました。

その方に相談する時間は、私の精神的な安定にもつながっています。会社でこれをやりたいという夢を思い描くと、ふくらみすぎてどうしてもごちゃごちゃしてしまうんですよね。自分だけではまとまらないとき、一緒に整理してくれる人が必要なんだと実感しました。

また、同時期にオンラインコーチングを体験したのも良かったです。具体的な事業相談をコンサルタントの方にしつつ、自分自身の特性や内面を見直す時間をコーチの方に支えてもらいました。

前へ進むために、これまでは向き合えなかったこととも向き合えるようになった。少しだけ自分を理解できるようになって、いままでより落ち着いた気持ちでいられるようになったと感じています。

理想を明確にしたことで、差し伸べられるようになった救いの手

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―そうして設立した会社は、ご自身の理想が反映されたものになっていますか?

なっていると思います。漠然とあった理想を彫刻のように少しずつ削って明確にしていった結果、今の会社が生まれた感じですね。

法人化しようと決めてから会社を設立するまでの時間は、人生で1番自分に向き合ったと思います。私は何をやりたいんだろう、何を価値として提供したいんだろう、とずっと考えていましたね。

―会社の社長となったことで、今までと変わったことはありましたか?

フリーライターの頃からさまざまな事業に関わる経営者や社員の方にインタビューする機会をいただいているんですが、そういった方々の話を以前よりも自分事として聞くようになりました。

もし自分の会社で同じことが起きたら、自分は経営者としてどう判断するだろう。この会社の社員は誇りを持って働いているけれど、自分の会社で社員を雇ったとしたらそんなふうに働いてもらえるだろうかと、考えるようになりましたね。

より他人事でなくなった分、記事も以前より評価されることが多くなりました。会社を設立したことが、ライターとして携わるコンテンツの質を高めていると思います。

あとは、フリーライターの頃よりも信頼度が格段に上がり、救いの手が差し伸べられるようになりました。会社について聞かれて事業の説明をすると、みんな好意的に話を聞いてくれます。そのうえで、「私の友達に茶葉を作っている人がいるから紹介しようか」とか、「茶器を仕入れるときはここに気をつけたほうがいいよ」とか、助けようとしてくれる人がたくさんいるんです。

ライターの頃は、特に自分自身には理念がなかったので、夢を語ることもありませんでした。会社を設立して事業を明確にしたことで、応援してくれる人が増えたのかな、と感じます。

応援してくれる家族の存在と、幸福度が高い北海道での生活

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(撮影:宿木雪樹)

―会社の経営者になったことに対する周囲の反応はどうでしたか?

家族は私の決断をいつも応援してくれています。私は性格や気質が会社勤めに合わず、無理をしすぎては辞めていたので、フリーランスになったときも家族は賛成してくれました。今度は会社を設立すると思い切って相談したら、1番合っているんじゃないかと笑っていましたね。

会社設立にあたって、父からもアドバイスをもらいました。手を動かし続けなくてもある程度収入を得られる基盤を作ったほうが生きやすい、と。手から職が離れない状態だと自分が動けなくなったときに収入がなくなってしまうから、自分が動かなくても価値が生み出され続けるようなシステムを意識して作るよう勧められました。

私の父は元大学教授で、退職した今も論文を書きつつ、法律関係のお仕事をしているんです。勉強と仕事が大好きな父を尊敬するからこそ、私も勉強して働き続けたいと思いますが、娘である私に父はそれを強制していません。

―自分と同じ生き方を強制せず、娘である雪樹さんのことをきちんと考えてアドバイスしてくださるお父様。素敵ですね。

そうなんです。2018年に北海道へUターン移住した理由のひとつは、家族のそばにいたいと感じたからです。私は18歳から約10年間東京で暮らしていたのですが、東京にいるときは、家族が何をしているのかつかめなくなっていました。

今は家族と近い場所にいて、間接的にですが一緒に生きている感じがするので、北海道に帰ってきて良かったと思います。それぞれの人生をリアルタイムで知っているからこそ、ちょっとした相談もしやすいんですよね。

―会社も北海道で立ち上げられましたが、北海道での生活はいかがですか?

日々の幸福度が圧倒的に高いです。空や空気が澄んでいて、ごはんがおいしい。今は上京するまで住んでいた家に旦那と2人暮らしですが、周りに何もないのどかな環境は今の私にとって快適です。騒音もなく、静かに文章を書きながらお茶を飲んで過ごせる。まさにユートピアです。

でも、もしも東京で過ごした経験がなかったら、私はフリーランスにも経営者にもなっていなかったと思います。東京のスピード感や価値観を知ったうえで仕事をしているからこそ、北海道で暮らして月に数日東京へ出張するという2拠点生活が成り立っているんだと感じます。

どんな立場の人も、まずは一日一杯のお茶から始めてほしい

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―長期的な展望として、思い描いていることはありますか?

宿木屋には、「だれもがひとやすみできる社会をつくる」というビジョンがあります。これを達成するため、いつかは息苦しさを感じている人のセーフティネットをつくりたいと考えています。

障害やマイノリティによって分類される何かがあるかないかに関わらず、何かがマジョリティと違うことで居心地の悪さを感じながら生きている人って、たくさんいると思うんです。私も居心地の悪さを感じながら生きてきたので、同じ気持ちを抱く人たちのために何かできればいいなと考えています。

その願いへの答えが、「ひとやすみ」を伝えることでした。どんな立場の人にも、一日一杯のお茶を飲む習慣を届けたいんです。データに表れなくても、ひとやすみを必要としている人はたくさんいる気がするんです。

これから少子高齢化が進んで働く人が少なくなれば、きっと1人にかかるストレスはさらに高くなっていくでしょう。過度に働かなければならない環境にいる人にも、きちんとひとやすみしてほしいと思います。ひとやすみすることの価値を、会社として伝えていきたいですね。

―確かに、ひとやすみの大切さを知ることで救われる人はたくさんいそうですよね。

そう思います。いずれは同じお茶を好んで購入している人の存在が見えたり、他の誰かにお茶を贈り合ったりできるSNSのような仕組みをつくりたいと考えています。ただし、従来のSNSのように、過度な共感や評価をする必要はありません。同じような息苦しさを抱えて、同じお茶でひとやすみしている人がいることを知って、自分は1人じゃないと思える。それでいいと思える場を作りたいです。

周りの人に感謝し、大切な人や社会に新たな価値を提供したい

―会社を無事に設立できた今、周囲の人に伝えたいメッセージがあればお願いします。

今、私が会社の未来を思い描けているのは、本当に周囲の人たちのおかげなんです。自分ひとりの力では、決してありません。

フリーランスを気持ちよく選択できたのも、会社設立を決意できたのも、支えてくれた家族や友人がいたからです。もちろん私の想いを否定して止める人たちもいましたが、落ち着いて考える機会や、潰されてたまるかというエネルギーをもらえたので、そういう人たちも感謝の対象なんですよね。

これまで関わってくれた人たちのおかげで、今の私がいます。これから宿木屋のお茶事業を通じて、大切な人や社会に「ひとやすみ」という価値を提供し、恩返ししていきたいです。

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