読売新聞記事の「楽しい」読み方

 東京五輪の金の動きが少しずつ明らかになってきている。2022年11月29日の読売新聞の記事を読んで、私は、ちょっと笑い出したところがある。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221129-OYT1T50041/?ref=webpush
 ネット配信の見出しは、こう書いてある。

広告業界は公正にやる感覚がマヒ?広告トップ3、談合関与か…業界ぐるみの疑い

 そして、記事は。
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 東京五輪・パラリンピックを巡る入札談合事件は28日、東京地検特捜部と公正取引委員会が新たに大手広告会社「博報堂」など4社を捜索し、入札に参加した9社のうち6社が強制捜査を受ける事態に発展した。博報堂は25日に捜索を受けた「電通」に次ぐ広告2位。談合を認めた3位の「ADKホールディングス」側を含め、業界ぐるみで受注調整が行われていた疑いが浮上している。
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 ここには、「談合」が「業界ぐるみ」だった、と書いている。「談合」はたいてい「業界ぐるみ」だから、わざわざ「業界ぐるみ」と書かなくてもよさそうな気がするが、そして、これは「談合事件」を書くときの「常套句」なのだが……。
 問題は。
 この「前文」を読むかぎりでは、「広告業界は公正にやる感覚がマヒ?」ということばは、見出しにならない。だいたい、誰が言ったことば? 捜査当局? そうなら、はっきり、そう書くだろうなあ。
 だいたい電通に広告を支配されている新聞が、よく「広告業界は公正にやる感覚がマヒ?」とよく書けたなあ。電通から、広告を回してもらえなくなるぞ、と誰か(トップ?)が言わなかったのか。
 そう思って読み進んでいって、私が笑い出したのは、次の部分。
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 相次ぐ強制捜査に、入札に参加したある広告会社の関係者は、「広告業界の中で、公正にやろうという感覚がマヒしていたのかもしれない」と漏らす。
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 さて、この「入札に参加したある広告会社の関係者」とは、誰のことだろう。具体的には、どういうひと? いま焦点が当たっているのは「博報堂」。いままで「電通」の陰に隠れて出てこなかった。その焦点が当たっている「博報堂」の関係者が、いま、こういう発言をするはずがない。
 入札に参加したけれど、「落札」させてもらえなかった(談合から外された?)関係者か。でも、そういうひとなら、その声は「漏らす」ではなく、「怒る」だろう。「怒っている」だろう。自由な競争を妨害された、と。
 でも、そうではない。
 で、私は推測するのだ。
 いままで「電通」が批判されてきた。でも電通にしてみれば「多くの広告会社に割り振ってやったのに、なぜ電通だけが叩かれるのだ。恩恵を受けたほかの広告会社は捜査されずにのうのうとしている」という気持ちがあるのではないのか。「博報堂」も調べろよ、という思いがあるのではないのか。
 だいたい「談合」がばれるのは、「談合」でいちばん「おいしい部分」から外された関係者だよなあ。その「内部告発(?)」のようなものがきっかけになることが多い。
 まず誰かが「電通」のことを「内部告発」した。そのあと、告発された電通が、他の会社を告発し、電通だけが「悪者」になることを避けようとしている、というのが今回の「談合拡大」の「裏側」ではないのか。
 だから。
 「入札に参加したある広告会社の関係者」とは、きっと電通の関係者なのだ。
 読売新聞は「ほら、電通だけではなく、博報堂も悪い、広告業界全体が悪いと書いたよ。これで電通批判は少しは和らぐと思う」と、電通相手に「恩を売っている」感じなのだ。恩を売って、「だから、これまでどおり広告は優遇してね」と言っているのだ。
 「恩を売る」を紙面でちゃんと、「証拠」として残している。
 ここが、読売新聞の、なんとも「馬鹿正直」なところ。何度も書くけれど、この「馬鹿正直」を読むのは、ほんとうに楽しい。

 (もちろん、前文にある業界3位の「ADKホールディングス」が、「2位の博報堂より3位の自分のところが告発されるのはおかしい」と博報堂を告発し、ついでに自分の「正義」を主張するために「広告業界の中で、公正にやろうという感覚がマヒしていたのかもしれない」と言ったのかもしれないが。私は、電通だと思っている。電通だけが悪いんじゃない、というのが、この「作文」の趣旨なのだから。そして、見出しも、その趣旨にしたがってつけられているのだから。)

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