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ダメ男、ビアガーデンの司会をする 後編

一週間のご無沙汰です。タマオキヒロ・・・ま、そんなことはどうてもいいや。
とにかく「ダメ男、ビアガーデンの司会をする 前編」の続きですが、ちょっとだけ前編の<おさらい>をしておきます。

大学の先輩の通称<おっちゃん>に上手いことハメられたアタシは、何のことか、ビアガーデンの特設ステージで司会のアルバイトをするハメになってしまいました。
最初は「とてもじゃないけど司会なんか出来ないよ」と思っていたアタシでしたが、何とかかんとか、所詮素人のド下手クソな司会ではありますが、一応はコナせるようになり、翌年おっちゃんから「今年も頼むわ」と言われるレベルにはなったんです。
しかし灰皿やらパイプ椅子が飛んでくる環境にウンザリしたアタシは何とか断ろうとしたのですが、そこは受け流しの天才おっちゃん、断るタイミングなど一切くれずに会話を進められ、再びビアガーデンの司会をやることになってしまったわけでして。

えと、こんな感じでいいかね。つか今まで<おさらい>なんて書いたことないからどういうのでいいのかさっぱりわからん。
どうだ、ぽんぽこ。これで大丈夫そうか?

そんニャことより、早く缶詰を寄越すんだ!

・・・まだ途中なんだけどなぁ。まァ、ぽんぽこが食べ終わったみたいなんで続きをやります。

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◆ とある疑問

その年アタシは各地の、各地ったって全部大阪市内だけど、あちこちのビアガーデンに行くことになりました。
前年まで行ってた百貨店のビアガーデンはそれまで通り週に3回、残りを他のビアガーデンでって感じでやることになってしまった。

以前から、というか前年からずっと気になってることがあった。
繰り返しになりますが、アタシが前年とこの年に□□百貨店のビアガーデンで司会をやっていたのは週に3回です。つまり他の4日は別の人が司会をやってることになる。
いったいどんな人が司会をやってるんだろう。まさかプロ?
おっちゃんに聞いても

「知らんねん。他の業者がやってるんやけど、ワシも3日しか獲れへんかってん。しっかし(道が)混んどるなぁ。コンドルが飛んでいく」

・・・聞いたアタシが間違いだった。
あ、このダジャレ、アタシが考えたんじゃなくて本当におっちゃんが発したダジャレだから。
しかしかれこれ30年ほどの前のダジャレをいまだに憶えてるなんて我ながら呆れる。いやもっと言えば、どこの道をクルマで走ってる時に飛び出したダジャレか、場所さえも思い出せる。
すげぇわ。たぶん人生で一番インパクトのあったダジャレってことになるんだろうな。

「あ、そういうたら来週の現場な、他の業者の人間とふたりでやってもらうから。ホンマはワシが行くつもりやってんけど、どうしても無理になってな」

何その話。というかビアガーデンの司会でふたりって、何をやらせる気だ。
正直気が重かった。当時のアタシは極度の人見知りだったし、誰だかどころか年齢もまったくわからない人と掛け合いめいたやりとりを出来る自信なんか微塵もない。
その当日です。
現場に着くと、ひとりの若い女性が駆け寄ってきた。

「○○さん(←アタシ)ですよね。今日一緒にやらせてもらう△△です」

あ、ああ、どうも、よろしくお願いします。

「○○さんって、□□百貨店で週3でやっておられるんですよね。ワタシ、あそこで週に2回やってるんです」

ああ、そうか。この子だったのか。うーん。
週3でやってるのがアタシという小汚い男で、週2が若い女性ってのは、こりゃだいぶ差があるなぁ。
しかもです。この子、かなりかわいい。今の芸能人に例えるなら、ますだおかだの岡田の娘によく似た感じでね。だから彼女をここから「元オス」にする。何だか性転換した感じになっちゃうけど、これでいいや。

さあこの後、どうなるか。次章へレッツラゴン!


◆ ダメ男はオクテ男でもあった

ここでいう<奥手>ってのはね、ただたんに「なかなか女性にアプローチ出来ない」ってことじゃなくて、もっと精神的なものでして、わかりやすく言えば「特定のことにかんして、自我が芽生えるのが遅い、幼い人間」という意味です。

いろいろ<オクテ>だったことはあるけど、ここでは恋愛だけに絞って書きます。
まァアタシも健康な男子だからね、中学の時点で「性欲の昂り」のようなものは感じていたし、この話はまた今度書くけど、初恋も中学生の時だった。
しかし「無垢な恋愛心」と「性欲」には大きな隔たりがあった。つまり「好き」と思う相手に性欲を向けることは一切なかったんです。逆に言えば性欲をおぼえる女性に恋愛心を持つこともなかった。
この辺は「みんなそんなもん」だったかどうかは、正直わからない。でも少なくともアタシはそうだったんです。

アタシは大学生になってもしばらくは、みうらじゅんが言うところの<DT>だった。この時点、つまりビアガーデンでバイトをしていた頃もDTだったってことになります。
当時のアタシは、だから女性にたいして極端な接し方になった。
「あ、いいかも」ま、好きかもってことですね。これはわかりやすい。やっぱ、どこか、意識したような態度になってしまう。
しかし「あ、なんか欲情してしまう」と思う女性にたいしては「まるで男性に接するかのような」ある種の逆張りっぽい態度になってしまうんですよ。

死んでも「エロい目で見ている」なんて見透かされたくないって気持ちが先走って、オレはアンタのことなんか、何とも思ってませんよ、という態度になってしまうっつーか。
女性だって「相手が好意を持ってる」ってのが図れたところで、そこまで悪い気はしないかもしれない。もちろん相手にもよるだろうけど。しかし「エロい目で」ってなると話が変わってくる。よほど自分が好意を持ってる人以外からエロい目で見られたら、もう「キモッ!」としか思わないだろうし。
だから、アタシは悟られないように必死だった。もう、それだけに全神経を集中していたっつーか。

ここで話を戻しますが、ビアガーデンで一緒に司会をやった女の子、つまり元オスには初めての感覚をおぼえた。
初対面の時点ではまったく欲情はしていない。しかし恋愛対象に入る感じかというと、それも違う。もう、単純に「かわいい!」だけだったんですよ。まァ、今の目で見ても元オスは、かなりイケてる子だったことは間違いないしね。

だからといって、本来なら所詮は「ただ、たった一回こっきり、一緒に仕事をしただけ」でしかありません。
ところが何のことか、これから何度も、彼女と同じ現場に入ることになるのです。


◆ 淡すぎるダメ男

何度も元オスと顔を合わせるようになると、自然とたわいない会話をするようになります。
話を聞くと、年齢はアタシよりひとつ下で、元オスもアタシ同様、別にプロでもなんでもなく、ただの大学生で、もう、ただのバイトとして司会をやり始めたそうな。

そのうち仕事のこと以外の、プライベートの話なんかもするようになって、もうどっちが誘ったのかとかまったく憶えてないけど、仕事が終わったら一緒にメシでも食いに行こうってことになってね。
この日以降、同じ現場の日は必ず一緒にメシを食いに行ったし、アタシがクルマで行った時は家の前まで送っていったこともある。
向こうはカレシとかいなかったし、アタシもぜんぜんお呼びじゃないレベルでカノジョなんかいない。そんなふたりが、仕事の帰りに限ってとはいえ、当たり前のように食事に行き、2時間とか3時間とか喋るのです。
普通に考えれば、いや普通っつーか今考えれば、これは「恋のはじまり」以外の何物でもない。

しかし、結論を申し上げるなら、この子とは最後まで何もなかった。
今思えば、この子には「無垢な恋愛心」をおぼえることがなかったんだと思う。たぶんかすかな欲情はあったように思うんだけど、先ほども書いたように、この時点では恋愛心と性欲は結びついていない。
元オスとは話も合ったし、話してて本当に楽しい子だった。明るくて性格も良かったと思う。ま、所詮はメシを食いに行っただけだから深くはわからないけど、アタシはそう感じた。

かわいくて

性格も良くて

かすかだったとはいえ欲情をおぼえて

アタシの誘いに喜んで乗ってくれた

少なくともアタシには嫌悪感を持ってない

そんな子に何の不満があるのだ

それはもう、わからない、としか言えない。とにかくアタシは元オスに最後の最後まで恋愛感情をおぼえなかった。
そして。
夏が終わった。つまりビアガーデンの季節が終わったわけで、ビアガーデンの司会の仕事がなくなると元オスとはまったく連絡を取らなくなっていました。
一年くらい経ってから頼み事があって一度だけ電話したことがありましたが、これもよくよく考えたら電話番号の交換に応じてくれたってことですよね。

当時の電話番号の交換は今のLINEの交換とは重みがぜんぜん違う。ましてやその子は実家住まいだったんだから。


◆ ビアガーデンの話はどこいった?

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おミャえにはわからんかもしれんが、それ、押してたら、イケたんじゃニャいのか?

ぽんぽこよ、まったく、その通りだよ。でもな、当時はアタシもまだウブだったんだよ。最後のひと押しが出来ないっていうかさ。
これがね、あと数年のちの、恋愛心と性欲が結びついたどころじゃないくらい汚れたアタシなら、好きとかそういう感情は後から付いてくるんだから、こんなかわいい子を逃す手はない、とにもかくにも行っとけ!ってなったんだろうけどさ。

え?ビアガーデンの話?ビアガーデンの司会は結局このシーズンで終わります。というのもおっちゃんがビアガーデンの仕事から手を引いたから。
そして翌年、おっちゃんから「今度はアシスタントをやって欲しいんやけど」と電話があるのですが、それはまた別の話。

こんな多少は色恋めいた話も混ぜていきますんで、よろしければ何らかのリアクションお願いします。
さらばじゃ!