見出し画像

ダメ男の相棒とその子分

ぽんぽこ、というのは前回までを読んでもらればわかるように、猫でありながら「我が相棒」です。我が田中ではありません。当たり前だけど。

その時も書いたように、ぽんぽこってのはハンドルネームでしかない。
正式な名前が別にあるのですが、正式な名前以外にも<つい>様々な名前で呼んでしまうんですよ。
何しろ見た目がたぬきっぽいのでね、それこそ<たぬきち>(もちろん「どうぶつの森」から)から始まって、本当にいろいろ通称があるんだけど、その中のひとつに<親分>ってのがあります。

親分然としたふてぶてしさがあるってのもあるんだけど、それだけじゃない。
あくまで子分あっての親分ですが、いるんですよ実は。そう、ぽんぽこには子分がいるのです。

◆元気に育った野良猫

子分ってくらいだから、もう一匹ももちろん猫ってことになる。名前は「くるくる」(当然これもハンドルネーム)です。
くるくるがもらわれて来た日のことはものすごく憶えています。

ま、アタシは前の飼い主(詳しくは前回の「ダメ男とダメ男の相棒」参照)と一緒に引き取りに行っただけなのですが、ま、そんなことはともかく、くるくるは「一応血統書付き」のぽんぽことは違い、元は完全な野良猫でした。
どうも生後一週間以内に親猫とはぐれたか、それとも捨てられたかしたみたいなんですが、運のいいことに優しいおまわりさんに拾われた。
んで、一旦保護猫の世話をしているところに行って、結果としてアタシの家(正確には前の飼い主の家だけど、今後それは省略する)に来たって寸法です。

この時点で生後1ヶ月くらいって話だったんだけど、とにかく小さい。身体もやせ細っており、毛もゴワゴワで、しかも<まだら>に生えている。
あきらかに健康状態が良くなくて、と言っても病気とかじゃないんだけど、衰弱、と言っちゃったら保護猫を世話してくれていた人に失礼だな、いわば「衰弱状態から立ち直りつつある」程度だったんです。
最初は餌もまったく食べず、牛乳も飲まない。ただ、じっと見ているだけ。
ところが「食べていいよ」「飲んでいいよ」と声をかけると、おそるおそる、口をつけるって感じでした。
ほんと、ちょっとずつ、ちょっとずつ、元気になっていって、毛艶も良くなってきてね。もちろん今は元気そのものです。

誰の目から見ても元気だって感じになるまで半年くらいかかった。やっぱ、相当弱ってたんだな。

◆戦う相棒

ま、この時点ではまだ相棒じゃないんだけど、それはいいや。とにかく、くるくるが来た時の、相棒ぽんぽこの反応です。

いやぁ、もう、全力で「新しい猫」が来ることを拒否した。わかりやすすぎるくらい。
しかも怒りの矛先は何故かアタシに向けられた。

おミャえか!せっかくニャア(←ぽんぽこの一人称)はノンビリ暮らしてるのに、ニャぜ余計なことをするんだ!!

いやいや、一匹じゃ寂しがるとか言い出したのはアタシじゃないよ。なのに、全力でアタシに歯向かってきたんです。
前回書いたように、何しろぽんぽこの馬鹿力はハンパじゃない。そのぽんぽこが全力で噛み、引っ掻いてくる。

こ、こ、こ、怖ァ~!!!

こうなるとくるくるを可愛がるとか、相手をしてあげる、ましてや親代わりなんてレベルじゃない。はっきり言ってくるくるを敵だとしか思っていない。当然くるくるを連れてきた(と思い込んでる)アタシのことも敵ってことに他ならないわけで。

違う。違うんだ、ぽんぽこ。話せばわかる。

グギャア~!!!

・・・とりあえずほとぼりが冷めるまで、ぽんぽこに近寄るのはよそう・・・。

◆思わぬ突破口

最初はね、くるくるもぽんぽこのことを怖がっていたんです。そりゃそうだよ。近寄るだけで「フーッ!!シャーッ!!」って言われるんだから。

ところが、怒った態度を見せるだけで、くるくるには直接的な危害は加えない。何だよ、アタシにはあれだけ直接的なっつーか実力行使に出たのに。
やっぱり、わかってるんだね。まだ仔猫なんだ。この子には怒ってるのさえ伝えればいい。実力行使に出る必要はないって。
そのうち、くるくるもそれがわかったみたいで、普通にぽんぽこに近寄るようになった。いくらフーッだのシャーッだの言われようが、構わずぽんぽこの傍にいるようになったんです。

ぽんぽこってね、なんだかんだ言ってもあきらめのいいのが取り柄で、そのうちぽんぽこも「しょうがニャい。かまってはやらニャいけど、傍にいることは許す」みたいになった。
こうなるとシメたもので、なんとなく、ぽんぽことくるくるは一緒にいるようになっていったんです。
さて、くるくるは元野良猫です。しかも生後すぐに親と離れたので、ある意味「猫としての振る舞い」が何も出来なかった。
たぶん、最初に餌にも牛乳にも食いつかなかったのは、自分がナニモノなのか、何をすれば良いのかさえわかってなかったんでしょう。
結果として、くるくるに猫の振る舞いを教えたのはぽんぽこでした。

これは食べていいヤツニャんだ

これも飲んで良いんだ

もちろん口に出して教えるわけじゃないですよ。でも、ぽんぽこの振る舞いを学習することによって、ちょっとずつ、くるくるも猫らしい振る舞いをするようになったんです。
とくに、たまたまアタシが見ているタイミングだったんだけど、ぽんぽこが毛づくろいをしているのをね、くるくるが見てて、見様見真似で自分もやってみる。チラチラみながら、そうか、こんニャふうにするのか、と確認しながら毛づくろいしてるのが本当に可愛かった。

こうして、元飼い主の目論見であった「親代わり」にはならなかったけど、ぽんぽこは背中で教える「親分」になった。もちろんくるくるが「子分」ってことになったというね。

◆くるくる、ダメ男と決別

先にぽんぽこの紹介をして、くるくるのことを後回しにしたのは親分子分で<差>を付けたわけじゃないんです。
ひと言で言えば、厳密には現在、くるくるはアタシと離れて暮らしてるんです。

前回書いたように、2019年の正月に、アタシはそれまで暮らしてきた神奈川県を離れて、生まれ故郷である神戸に引っ越してきました。
しかし引っ越しってのは、こう言っては申し訳ないんだけど、猫の存在ってかなり足手まといになる。だから神戸の実家に一時的に預かってもらうことにしてね、ぽんぽことくるくるを実家に先に連れて行ったのです。

それはいいんだけど、ぽんぽこってのは典型的な「我が道を行く」タイプなので、新しいっつーか一時的に預かってもらってる実家の環境に居心地悪そうにしていました。そうはいっても肝っ玉が座っているんで不安がるとかじゃないだけど、ニャんだか、この家は落ち着かニャいぞ、おミャえ(←母親)なんか嫌いだってのを隠そうとしない。
まァね、この時点で10歳を超えてる、猫としてはかなりの年齢なので、新しい環境に馴染もうっていう気が薄かったんでしょう。
一方くるくるはまだ2歳。新しい環境にもすぐに馴染み、しかもわずか一週間ほどの間に母親にもものすごく懐いていたんです。
ここまではいいんです。問題はこの後。母親がとんでもないことを言い出した。

早くぽんぽこを連れていきなさい←そりゃあ、ぽんぽこは母親に敵意むき出しなんだから当然

けど、くるくるはウチに居た方がいいんじゃないか←・・・え?

いや、くるくるはウチで預かる!←・・・まァ、母親にエラく懐いてるし、母親もひとり暮らしで寂しいだろうから、それでもいいか・・・

でもくるくるはアンタ(←アタシ)の猫だから、カリカリと缶詰はアンタが買ってきなさい←???どういうこと???

今も母親は「くるくるの飼い主は息子(←アタシ)」という態度を崩していない。にもかかわらず、くるくるを返す気など毛頭ない、という独自理論を展開しておるのです。
ま、もう、それでいいわ。別にくるくるがいなくてぽんぽこが寂しがってるわけでもないし。
つか逆らうのもめんどくさい。何しろアタシは「猫と庄造と二人のをんな」の庄造ばりのダメ男なんだから。どうにかなるさ、とかまやつひろしの歌をひとくさりするのが関の山なわけで。

てなわけで続く。もし興味を持っていただけたら何らかのリアクションお願いします。
さらばじゃ!