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薮中塾6月勉強会報告

皆さんこんにちは! 薮中塾6月勉強会担当です。

今回は6月20日(土)に開催された薮中塾6月勉強会の報告を、小原と善波がお送りいたします。

今回のテーマは「社会保障政策」です。

3度目の勉強会であった今回もオンラインでの開催でした。コロナ禍の影響は大きく、3月の6期生の活動開始から、我々6期生はまだ一度も直接顔を合わせることができていません。もちろん「今回こそオフラインで勉強会を…!」と誰もが望んでいましたが、塾生の中には本来の勉強会開催地である京都からは遠い地域に住む人も少なくなく、開催形式の決定日の時点でまだ都道府県を跨ぐ移動の自粛が解除されていない地域もあったことなどから、オフライン開催実現の希望は7月勉強会に託すことに。(…悔しい!)

とはいえ、今回のオンライン勉強会でも熱く活発な議論が繰り広げられました。この場を借りて、ダイジェスト版でお伝えしていこうと思います!

勉強会準備

4・5月は5期からの薮中塾参加者(6期ディレクター)を中心としたメンバーによって勉強会の準備が進められていましたが、6月勉強会からは初めて、6期からの参加者でのみで構成されるメンバーで準備がされました。

エネルギー政策、移民問題など様々な有力テーマ候補があった中で、最終的に選ばれたのは「社会保障政策」。

今回このテーマに決定するに至った経緯には、以下のような背景や塾生に対する思いがありました。

【背景】
・2019年12月に「全世代型社会保障会議中間報告書」が作成されるなど、少子高齢化社会の加速する日本において、数十年前に確立された社会保障体制は改革の時期を迎えている。
・昨今、新型コロナウイルスが全世界を襲い、医療・介護崩壊危機や失業・自殺といった様々な社会問題が噴出。今日改めて社会保障の意義が問い直されている。

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【思い】
・我々の生活に密接に関係するものでありながら、あまり知る機会のない社会保障について、その全体像を把握してほしい
・少子高齢・課題先進国の日本を生きる我々にとって、そしてポストコロナ社会を生きてゆく我々にとって、社会保障はどうあるべきなのか、塾生一人一人に自分の意見を持ってほしい

非常にタイムリーな話題で今、扱うにふさわしいということもあり、勉強会担当全員が納得してこのテーマを選びました。
しかし、一言に「社会保障」といえどそれがカバーする範囲は、医療・介護から年金・労働までと非常に広く、かつ個々の制度の抱える問題は互いに複雑に絡みあっています。そのため、

「社会保障全体を扱うとなると範囲があまりに広すぎて勉強会全体がぼやけたものになり、with logicな議論が成立しないのではないか」
「もちろん個別の問題にフォーカスすれば議論はしやすいが、マクロ的視点に欠けるため、我々の目指す社会保障の全体像の把握と社会保障についての自分の意見を持つことは厳しいのではないか」

などと、意見が何度もぶつかりました。また、5月勉強会において短い時間内でオンラインでディスカッションする厳しさも痛感していたため、勉強会の構成を考えるにあたり、かなりの時間を要しました。

幾度に渡る話し合いを重ねた末、以下のような勉強会の目標と概要を定めました。

【目標】
①我々の生活に密接に関係する社会保障について、その全体像を把握する
②課題先進国日本のポストコロナ時代を生きてゆく我々にとって、社会保障はどうあるべきなのか、どのような社会を築きあげていくべきなのか、塾生一人一人が自分の意見を持つ

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【概要】
全三部構成。
第一部:ミニレクチャー
社会保障の観点から見る、ポストコロナで目指すべき社会像や今回の勉強会の意義についての簡単なレクチャーを行う。
第二部:ディスカッション1(分野別)
事前アンケート結果の結果をもとに、参加者を医療・介護/年金・労働のグループに分け、各分野での問題点を整理し細分化。確認された問題点の重要性と解決のための手段を議論し、最後に全体でスライドを使って発表。
第三部:ディスカッション2
第二部の分野別グループをシャッフルして新たに作成したグループで、ポストコロナの社会保障政策全体について議論。各グループでの議論について、最後に全体でスライドを使って発表。

当日のディスカッション時間をできる限り多く確保するために、
・塾生には参考資料を早めに共有して事前のインプットに集中してもらう
・第一部のミニレクチャーは事前準備で拾いきれない最低限の範囲に絞る
など、勉強会当日の時間を有効に活用するための工夫などについても話し合い、以上のような目標と概要を設定するに至りました。

勉強会当日
●第一部 ミニレクチャー

はじめに、勉強会担当が社会保障の観点から見るポストコロナ時代に目指すべき社会像や今回の勉強会の意義について簡単に説明を行いました。

第一部レクチャー

(↑ミニレクチャー内で使用されたスライドの一部。目指すべき国家や社会の姿について説明。)

今回の勉強会までに、何度かcovid-19そのものやコロナ禍の諸問題について考えるミニ勉強会を開催していたこともあり、塾生も予備知識をあわせて熱心に説明を聞いていました。

●第2部 ディスカッション1

社会保障の全体像を把握するにあたり、まずは土台となる医療・介護・労働・年金という4つの視点から考えました。

事前アンケートの結果から、それぞれの関心に合わせて【医療・介護】の2チーム、【年金・労働】の3チームの全5グループに分かれてディスカッションを行いました。
社会保障を少しミクロで専門的な視点から考えてもらうため、「各分野での問題点を整理し細分化したのち、確認された問題点の重要性と解決のための手段を議論する」をテーマとし、最後に議論した内容をスライドとともに全体に共有しました。

ディスカッションは6期塾生にとって初めての試みで不安もありましたが、個々人でしっかりと事前共有していた資料を読み込んでおり、当日ではそれをベースに塾生が日頃学んでいる各々の分野からの視点を生かした議論ができていました。
なかには、完成度がミニレクチャーレベルの素晴らしい発表もあり、塾生の勉強会の準備に対する熱を感じました。

ここからはディスカッションで実際に塾生から出た意見を少しだけご紹介します(スライドもほんの一部です)。

(以下、原因→問題→解決策)

【医療・介護】
・原因:良好でない労働環境 →問題:人材不足 →解決策:政府による制度改革と民間による参入でアプローチ
・原因:過剰医療 →問題:持続可能な医療サービスを提供できない →解決策:医療・介護のビッグデータ利用で医療システムにおける無駄を省く

(↓医療介護②チームのスライド)

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【年金・労働】

・問題:在職老齢年金制度が雇用安定法の意義を相殺している →解決策:高齢者は誰しも年金満額取れるようにする
・問題:短期雇用の女性労働者が厚生年金の対象外 →解決策:適用範囲広める
・問題:非正規雇用に頼る経済 →解決策:様々な面からのアプローチ
・問題:少子化 →解決策:女性の社会進出を制度面からバックアップ
・問題:労働の都市集中 →解決策:産官学連携

(↓年金労働①チームのスライド)

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本当に様々な切り口から、社会保障の諸問題について議論が繰り広げられました。
ディスカッションの後は各チームにフィードバックや質疑応答の時間を設け、各自疑問点などを明確にしました。

●第3部 ディスカッション2

今度はマクロに社会保障について考えてもらうべく、シャッフルして新たに作成したグループで、ポストコロナの社会保障政策全体について議論し、最後にスライドを使って全体発表をしました。
また発表後、もう一度グループをシャッフルしてフィードバックを行なったことで、様々な視点からの議論ができました。
各グループで、ユニークな枠組みを設定して発表を行ったので、一部ご紹介します。

(↓グループ2のワークシート)

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グループ②では、第2部で議論した医療・介護・労働・年金の4つの要素を、社会保障の概念を構成する「自助」「共助」「公助」の視点に分けて考えました。
その結果、今後の社会保障のあるべき姿について、”no one left behind”というvisionを前提に具体策を講じました。

(↓グループ4のワークシート)

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グループ④には、「悲観的」と「楽観的」という観点に分類した上で議論している点が非常に面白いというコメントが多くありました。
現段階で起こっている問題から展望を考える際、どうしても悲観的に考えてしまいがちです。しかし、このように楽観的な視点から考えることでまた違うアプローチの仕方ができるので、今後の勉強会でも参考にしたいと思いました。

6月勉強会を通して得た学び

勉強会後には事後課題として、「ポストコロナ社会における社会保障政策」はどうあるべきか、について再度考えを述べてもらいました。以下、一例を掲載します。

今回のコロナによって新たな問題が生起したと言うよりは、これまでの新自由主義的政策の実施や雇用政策の怠慢による欠陥が顕在化したということ。そして、「誰が社会的強者/弱者なのか」、「それを生んでいる構造とは何か」を再定義する必要がある(新しいカテゴリーを作るか、カテゴリーを設けないようにする)。これまでの強者は「若者」で、弱者は「高齢者」であったが今はそうではない。

今後あるべき社会保障の体制は、
・現行の制度の設計当時の前提条件であった人口構成や経済成⻑、雇用形態や家族や地域社会の構造が変化したため、それに合わせた抜本的な制度改革が必要。
・ 社会保障を負担からだけ見るのではなく、消費や雇用、産業振興など、経済との好循環、相互依存関係から積極的な観点から考える(ポジティブウェルフェア)ことが重要。低成⻑に喘ぐ社会の不安を解消し成⻑を実現するために、社会保障の機能はむしろ強くしなければならないという議論に(国⺠の生活の安定こそ、国の経済発展につながる)。

具体的には、
①人口減、少子高齢化をチャンスに変える政策。大きな方針としては医療・福祉産業の経営改革、産業としての投資と労働市場の抜本的改革の二つ。
②社会保障の給付の現役世代へのシフト。雇用の流動化による格差と貧困や、子育て支援の不足による女性の就労や出産・子育ての妨げなどを改善すべき。働き方・業種にかかわらない平等な福利厚生の実施や、女性に限らず、全ての人が働きながら結婚し家庭を築き、子どもを持ち、子育てをするような社会のあり方=家族政策。年金の弾力化・ベーシックインカム の実施も検討すべき。
そして同時に必須なのが③財政赤字の解消。法人税増税や過剰貯蓄の有効解消などを実施し、また給付型社会保障ではなく、雇用創出−サービス充実型社会保障に転換すべき。
これら3つを抜かりなく同時進行させる(むしろシナジーを作る)。

そして、そうした個人の生活が保障されつつも、社会全体の経済的発展(しかし経済発展の定義が必要)が促進され、不安やリスクを最小化する社会という、社会保障の基本理念にもう一度立ち返り、社会モデルを再構築すべき。

また勉強会から得た気づきに関して、興味深かったものをピックアップしました。以下、塾生のコメントです。

・わからないことがあればすぐに調べるのではなく、答えを導き出す努力をする。
・初歩から順番に学んでいくことで、現在の問題、問題の原因、解決策を厚みをもって説明できるようにしたい。その上で、理想の社会を想定すべきだと思った。
・自分が勉強会に取り組む姿勢・やる気を見せることで班のレベルも底上げされることがわかった。

今回のテーマが調べてすぐに理解できるものではなかったこともあり、抽象度の高いものに直面した際の、皆さんの対応の違いがみられて面白かったです。
そのなかでも大切だと感じたのは、

① わからなくても、まず仮説を立てるなりして思考し、リサーチを進めていく力
② 大学で一般教養を学ぶように、日頃から幅広い知識に触れておき、必要な際にそれを総動員して考える力

の2点です。
また、勉強会後の感想で
”生活に密接に結びついている社会保障について、当事者意識をもって考えられてよかった”
という声が多く聞かれました。まさしくこれが勉強会の第一の目標であり、勉強会担当として嬉しく思います。
今回の勉強会で全く触れられていない社会保障の側面もたくさんありますが、皆さんがこれから歩むライフステージの中で常に関わることでしょうから、今後も個人の興味に沿って考え続けて欲しいです。

さらに今回は6期で初めて、ディスカッションという自由度の高い形を採用したので、今まで以上に個人の事前準備やグループワークでの方向性のすり合わせが重要だったと思います。
進捗を共有したり、リマインドし合ったり、スケジュールをうまく合わせたりと、チームビルディングについても学ぶ点が多かったのではないでしょうか。
speak with logic ももちろん大切ですが、それに加えて人間力やチームワークの面でも成長できたらな、と思います!

(↓6月勉強会での集合写真)

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以上、薮中塾6月勉強会の報告でした!
7月は「日本の教育政策」に関する勉強会です。お楽しみに!
                              6月勉強会担当

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