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北海道の気象レーダー(1)

気象レーダーが進化しています。あと1時間ほどで雨になりそうとか、いま降っていても間もなく上がるだろう…など、気象予報士でなくてもスマホで手軽に推測でき、それが良く当たるようになりました。これは気象レーダーの性能アップによるものに違いない!

どこにある?

気象レーダーって、どこにどれぐらいの数が設置されているのでしょう? 北海道内に限って探してみました。

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▲北海道の気象レーダーマップ

この図は、気象庁と北海道開発局の気象レーダー(どちらも国土交通省)の配置で、道内10か所にあることが分かりました。札幌飛行場(丘珠空港)にも防衛省管理と思われる局地気象レーダーがありますが、詳細が分からないため省略しました。こちらの記事「札幌進入管制区と丘珠のレーダー」で少しだけ触れています。他にも、研究機関や民間の気象レーダーがあるかもしれません。

気象庁のレーダー

気象庁のwebサイト「気象レーダー」によれば、北海道には札幌、釧路、函館の3か所に気象レーダー観測所(上図の赤丸)があります。(2021年3月現在)

・札幌:毛無山(けなしやま)、アンテナ海抜高 749.0 m
・釧路:昆布森(こんぶもり)、アンテナ海抜高 121.5 m
・函館:横津岳(よこつだけ)、アンテナ海抜高 1141.7 m

昆布森気象レーダー観測所は海岸線に近い丘の上ですが、毛無山と横津岳の気象レーダー観測所は山上に設置されています。

これらの他にもう一つ、以前からある気象庁の気象レーダーを知っています。新千歳空港の空港気象ドップラーレーダー(上図の青丸)です。DRAWといわれるこのレーダーは、道内ではこの空港1か所にしかありません。(2020年10月現在)

・新千歳DRAW、アンテナ海抜高 60.6 m(2020年に更新)

※ DRAW : Doppler Radar for Airport Weather、空港気象ドップラーレーダー

新千歳空港のドップラーレーダーは、離着陸時の風向や風速の急変(低層ウインドシアー)を高分解能で検出できるようにアンテナを大型化し、送信パルス幅を狭くするなどして航空機に影響を及ぼす気象観測に重点を置いた気象レーダーと言えるでしょう。

電波の周波数に着目すると、いずれもCバンド(4~8GHz帯)、その中でも5GHz帯を使用しています。

・毛無山:5345 MHz
・昆布森:5345 MHz
・横津岳:5360 MHz
・新千歳:5340 MHz

※ 5000 MHz = 5 GHz(MHz:メガヘルツ、GHz:ギガヘルツ)

あえて「ドップラー」とうたっていないCバンドレーダーでも、今ではドップラー気象レーダーが常識になっています。ドップラー効果(救急車のピーポー音の変化などに例えられる)により雨粒の動きを検出できるので、雨の強さだけでなく風向・風速も分かるようになったのです。

開発局のレーダ

少し意外ですが、北海道開発局もレーダを設置し運用しています。「レーダ雨雪量観測所」(上図の黄色丸)と名付けていますが、これも気象レーダーです。道内4か所の千メートル級の山に設置されています(道東は低いですが…)。

・道央:ピンネシリ、標高 1100 m(1987.11設置)
・道南:乙部岳(おとべだけ)、標高 1017 m(1990.11設置)
・道東:霧裏山(むりやま)、標高 613 m(1992.11設置)
・道北:函岳(はこだけ)、標高 1129 m(1993.10設置)

このレーダ雨雪量計システムは、30年以上も前から北海道にあったんですね。知りませんでした。一般には「レーダ雨量計」と言われますが、北海道では「雪」が入って「レーダ雨雪量計」とされているようです。冬に大雪や暴風雪をもたらす低気圧の観測も、北国では重要ですからね。

開発局のこれら4基のレーダも、気象庁のレーダーと同じくCバンド帯を使っているそうです。具体的な周波数までは分かりませんが、5GHz帯です。

XバンドMPレーダ

これまでに掲げたCバンド気象レーダの他に、近年ではXバンドMPレーダというレーダ雨量観測所(気象レーダー)が急速に増えました。Xバンドとは、Cバンド帯より高い周波数の8~10GHz帯のことで、気象レーダーとしては約9GHzの周波数を使用します。一般にレーダーの周波数を高くすると、観測距離が短くなりますが分解能(解像度)が高くなります。つまり、Cバンドレーダの方が広範囲をカバーでき、Xバンドの方が細かいところまで見えることになります。

さらに、MP(マルチパラメータ)という、二重偏波観測が可能なレーダなのだそうです。「偏波」について正しく分かりやすい説明ができる自信がないので省略しますが、水平と垂直の偏波の組み合わせにより雨粒の形(粒径分布、つまり降雨強度)をより高精度に観測できるようになった、と私は解釈しました。

北海道開発局のXバンドMPレーダは、北広島と石狩の2か所にあります(上図の緑色丸)。いまでは国土交通省の「XRAIN」、あるいは気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」として防災に欠かせない情報ソースになっているので、特に意識しないままご利用の方も多いことでしょう。

※ XRAIN:eXtended RAdar Information Network、エックスレイン

・北広島レーダ雨量観測所(2013.3設置)
・石狩レーダ雨量観測所(2014.1設置)

Xバンドのレーダは探知距離が短いので山上に設置する必要性は薄く、いずれも平地にあります。

マルチパラメータ(二重偏波)によって観測精度が向上するのなら、従来のCバンド気象レーダもMP化すればよいのでは? そうです。Xバンドだけでなく、CバンドもMPレーダに置き換わりつつあります。北海道では、2017年度に乙部岳が「CバンドMPレーダ」になっており、今年度中に道東の霧裏山もCバンドMP化される予定です。

レーダーサイト

ここまでに紹介した10基の気象レーダーのうち、これまでに8か所のレーダーサイトを訪れました。残り2か所(ピンネシリ、霧裏山)は北海道開発局のレーダで、いずれもアクセスが容易でない場所にありますが、この目で見る機会をうかがっているところです。

次回以降、訪れたそれぞれの気象レーダーサイトを紹介します。お楽しみに。

北海道の気象レーダー(2)、毛無山
北海道の気象レーダー(3)、昆布森
北海道の気象レーダー(4)、横津岳
北海道の気象レーダー(5)、新千歳
北海道の気象レーダー(6)、北広島
北海道の気象レーダー(7)、石狩
北海道の気象レーダー(8)、函岳
北海道の気象レーダー(9)、乙部岳


※ 冒頭の写真は、新千歳空港の空港気象ドップラーレーダー、2020年10月5日、やぶ悟空撮影

※ 気象庁では「レーダー」、北海道開発局では「レーダ」としているので、そのまま混在させています。私自身の表現は「レーダー」としました。(RADAR : RAdio Detection And Ranging)

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