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空飛ぶ自販機

夢の世界は自由だ。何もかもが理にかなっていない。
世界の理の外にある。僕はそう思う。
久しぶりの夢だった。
疲れていたのかもしれない。最近はバイトばかりで一日家でゆっくりなんて日がなかった。

アメリカだと思う。僕はホテルの一室で見知らぬ男と話していた。
「すまない、チケットは一つしか取れなかった。」
私と彼は一緒にこの地に降り、これから帰ろうとしていた。何をしていたのかわからないが僕たちには航空券を一枚しか取ることしかできない僅かなお金しか持ち合わせていなかったのだろう。
また彼はこう言った。
「なぁ、一緒に帰るって言ったよな、お前だけ帰るなんてそんなヤボな話はないぜ?いいな、このチケットは俺が預かっておく。」
そういうと今度は彼が何かいい方法を思いついたらしくついて来いと言うので彼について行くと、ホテルから少し歩いたところに中身が空洞の自販機があった。
「これは自販機?でもジュースも何も入ってないじゃないか。」
僕は言った。
すると彼は少し笑って僕に言った。
「これで帰ろう。」と。
僕は何を言っているのか分からずただその場に立ち尽くしていた。すると彼はその自販機を軽々と持ち上げ横に倒してその中に入った。
「お前も入れよ、さぁ帰ろう。」
僕は言われたままに彼の後に続いた。
ちょうど大人二人が入るぐらい横幅があり、彼が何かを操作するとその自販機は空を飛んだ。
空飛ぶ自販機だ。
太陽がやけに綺麗で眩しかった。
これで日本に帰ると思ったその時今までの事がなかったことのように次のシーンに切り替わった。
どうやら僕と彼はポリスに職務質問をされているらしい。
ポリスの後ろにはまた見知らぬ女性が立っていた。
女性が言った。
「この人達がそこのガラスを割ったのよ!私見てたのよ!」
何を言っている、私たちはさっきまで自販機で日本に帰ろうとしてたんだ、窓ガラスなんて割っていない、でっち上げだ。
僕はポリスに説明した。
だが聞く耳をもってくれなかった。
そして刑務所についた時には彼はいなくなっていて僕一人だけが牢屋に入れられた。
きっと彼は一枚しかなかった航空券で日本に帰ったのだろう。
彼女は何者だったのだろうか。
そしてあの空飛ぶ自販機はなんだったのか。
僕は何故閉じ込められている。
僕を取り巻く牢屋の暗闇がまた僕を眠りに引きずり込んだ。
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