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PPP的関心2023#03【観光地の「移動」。MaaSにまつわる雑感】

2023年が始まり2週間。色々と新しい体験を面白く感じながら日々を過ごしていますが、昨年末から決めていた休暇で金沢を訪問しました。
今回はそこで感じた観光地の「移動」についての雑感をメモしておこうと思います。
写真は長町武家屋敷跡の野村家のお庭(筆者撮影)。

金沢周遊バスって便利。でも…

観光地・金沢の街中をあちこち回る手段としてバスは便利な選択肢の一つだと思います。駅から近江町市場を経由して片町界隈までの主要な観光エリアの間にはひっきりなしにバスが通ります。タクシーも街中移動の近距離でも好感度の高いもてなしで移動を助けてくれました。

でも。ちょっと疑問というか惜しいと思ったこともあります。
それは他都市圏で使われている交通系ICカード使えるのは「金沢周遊バス」と言う路線だけということです。それ以外のバス路線では地元バス会社発行のICカードか現金が必要でした。金沢周遊バスの時間帯の狭間で移動しようと思った時にたまたま必要な小銭がなくて歩いて回ったりもしました(天気が良くてよかったです)。
こうしたことに直面して感じたことは、不慣れ場所で事情に精通していない人が注意して選ばないといけない… みたいな要素が残っているのは観光地「サービス」としては向上の余地ありということです。

地域の脚の混乱と観光客の利便性のために地元路線と観光客路線を意図的に分離しているのかな?とか、事業者の追加設備導入、設備入れ替えにかかる費用や手間がかかるからなのか、あるいは地元市民がすでに所有しているICカード入れ替えなどで不便をかけないためなのか。色々理由を考えてしまいます。
スイッチコストの話は提供サービスの品質向上と費用のバランスを事業者がどう考えるか次第ですが、「地域の脚の混乱と観光客の利便性のために地元路線と観光客路線を意図的に分離」については、仮に観光客を快適にという配慮の結果だったとしても、実際に乗車した際に見た金沢周遊バスの乗客は観光客しか乗らないという感じでもなかったことを考えれば、あまり意味がないあるいは意図通りになっていないのではないか?そのような疑問も少しばかり生じました。

MaaS にまつわる雑感

自分たちも日常の決済手段(都市圏で使える交通系ICカード)が使いにくいことで若干困ったわけですが、同じ交通機関にも関わらず複数の決済手段が存在することは外人さんにとってはもっと難しそうです。
受けたサービスの支払いの仕組みを共通化、単純化することは改めて大事なことだと実感した機会となりました。

モビリティを「サービス」に

以前のPPP的関心でも移動「サービス」と地域の活性化の関係について触れたことがあります。

以前の記事での引用「MaaSとは」の再掲です。

(参考)MaaSとは
国土交通省のサイトでは
・地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス
・観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段
■2015年のITS世界会議で設立されたMaaS Allianceでは
・さまざまな形式のトランスポートサービスを、オンデマンドでアクセス可能な単一のモビリティサービスに統合
公共交通機関、乗車、車または自転車の共有、タクシー / レンタカー、リース、またはそれらの組み合わせなど、顧客の要求を満たすためのさまざまな輸送オプションのメニューを提供
国土交通省ホームページより

今回の経験は顧客の要求を満たすためのさまざまな輸送オプションのメニューの提供という観点からも、単純なもの(どのバスに乗っても同じ)であり共通なもの(多くの人が使うカードは幅広く使える)の必要性を再確認する機会にもなりました。

観光地におけるCX

観光地では交通、物販、飲食など訪問者がその場所自体や場所の持つ文化や習慣に接する機会、暮らしを営む人々との交流機会はいくつもあります。
事前の情報収集が容易となった現代において飲食や物販との接点はある程度の予見があっての訪問となる一方、交通との接点については事前の選択機会もあまりなくかつ突然必要になったりするものだと言えます。
そのような違いを考えると、交通利用の容易さ(今回の体験のような支払いの共通化とか、単純化など)を上げる優先順位は高いと思います。
そして交通、物販、飲食などの地域との接触「体験」をより良いものにすることこそ地域の賑わい創出につながる基盤となると思います。

体験をより良いものにする価値については、CX(カスタマー・エクスペリエンス)という視点があります。
CXとは「商品やサービスの機能・性能・価格といった【合理的な価値」だけでなく、購入するまでの過程・使用する過程・購入後のフォローアップなどの過程における経験「感情的な価値」の訴求を重視するもの】とされ、「顧客経験価値」「顧客体験価値」とも言われています。

観光地の活性化にあたっては「ここにしかないもの」「そこでしか体験できないもの」をどう開発・創造するかということに目が行きがちだが、CX向上と活性化という観点についても考えるべきだと思います。
・・・という旅先での雑感でした。





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