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PPP的関心2023#04【鉄道会社のサービス業と不動産】

週一回の定期発信。早くも2023年4回目になります。
今回は前に話し手としても参加させていただいたこともある 水インフラマネジメント大学(水マネ大学)という勉強会で聞いた「鉄道会社とサービス業と不動産」についてメモ的に記録したいと思います。
*写真は以前伺った時にパチリと収めたJR東日本秋田支社の社屋の入り口にあった「こまち」。

JR東日本の生活サービス事業

水マネ大学とは水インフラ整備に関わる企業や団体に関わる方々がインフラ整備の時代から維持管理、活用の時代に入ったことを受け、水インフラ事業に携わる方々が異業種(他業界・他社・ヨソ者)に属する講師の視点・知見による講義を通じて水インフラ産業の新たな価値や可能性を発掘する勉強会です。

そのような趣旨の勉強会ですが、たまたま以前お話をさせていただいたことがあるご縁で今回の講義に特別に参加させていただきました。
今回は「JR東日本の生活サービス事業の変遷と現状」といった話を伺うことができました。水インフラと鉄道は見た目は大きく違いますが、ラストワンマイル(あるいはそれに近い状況)まで整備をすることが中心だった時代を経て、先人が積み上げた資産であるインフラをいかに使いこなすか、という課題設定においては通じるものがあるのではないか、そんなふうに門外漢の自分には思えました。

注目。サービス業領域における「不動産」の活用

JR東日本に限らず、鉄道会社の事業には基盤とも言える輸送サービス事業、駅や高架下などを活かした生活サービス事業(商業、不動産活用)を持っていると思います。JR東日本の場合はそれらに加えて(Suicaを中心とした)ITインフラサービス事業も展開しています。
勉強会で見聞きした中身は水マネ大学のコンテンツでもあるので省きますが、個人的な関心としてはやはり鉄道事業者の不動産活用について興味深く聞きました。
以下はそれについて感じたことを書いていこうと思います。

価値の高い資産を持つ鉄道会社

話題提供の中で大手不動産会社と自社の保有資産の簿価と時価総額と含み益の数値について触れた内容があったのですが「やはり」というものでした。
ちなみに。お話してくれた内容から特に印象に残ったところというと、大手不動産会社の保有不動産の時価総額が簿価の2倍程度に対して、JR東日本の資産の時価総額は簿価の3倍程度だというところです。

不動産の「価値」につながる要素には、例えば都市的施設の充実程度による利便性の差、駅からの物理的・時間的な距離の差、インフラ整備の充足度による治安の良さの差など実に多様な要素があります。それに加えてそもそも不動産が生み出す付加価値(農地であれば収穫可能な作物の種類やその収量期待、建物付き土地であれば期待できる家賃収入など)によっても不動産の価値は変動します。
*以前にもこの辺りは書いています。

PPP的関心【公的不動産も不動産。生み出す収益・効用を最大化する使い方を考える】を参考

その意味で鉄道会社が持つ不動産の価値は、そもそも利便性による価格形成のセンターである駅であり、その場所に収益施設を新設・更新できる権利を有することは大きなアドバンテージを持っているということに改めて気付かされました。

有効活用が進む資産

お話の中では社宅や変電所の跡地利用や高架下の商業施設化などすでに多くの人も「見かけたことがある」プロジェクトが例示されながら、不動産活用がまちのあり方や機能を変える強い影響力を持つという、ある意味で当たり前のことを再認識できました。

地方での不動産活用

先ほど見たように不動産価値には都市的な要素の有無や充実程度が影響している、つまりヒトモノカネの集積と不動産価値には一定の相関があると言えるわけですが、裏返せば地方都市における資産活用は民間企業単体の取組みとしてはなかなか難しそうでもありました。しかし、地方における駅は民間資産でありながら公共不動産的なものとして認識されている場合もあると思います。
お話をいただいた秋田県と秋田市、JR東日本の3者による取り組みの例などは、地方の民間の資産でありながら「公的」な性格を持つ不動産をどう扱うかを考える際にはやはりこういう公民連携の座組みが必要だと思いました。

不動産は地域を元気にする基盤

たまたま鉄道会社による生活サービス業のお話を伺う機会があったわけですが、高いポテンシャルを秘めた、そして限られた資産である不動産(土地)を活用することでヒトモノカネの流れを呼び起こすことは地域を元気にする基盤だなと思います。
その意味で鉄道会社が蓄えてきたアセット、あるいは用を終えたアセットをきちんと使いこなすことは地域への貢献という点でも必須のことだと再確認できました。

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