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[日記]2021年3月10日(水)

 『未来のコミューン─家、家族、共存のかたち』(中谷礼仁著 インスクリプト)の読書会である。仕事を終わらせBREWBOOKSへ駆け付ける。

 「家」におけるナンド(納戸)の役割から、表された聖俗について考える。建築史は全く無知の範疇ではあるが、モダニズムという概念が立ち現れて、合理的あるいは機能的な造形を理念とする潮流であることは理解できた。モダニズムの理念に則り、生殖や排泄の機能を抱えた空間は排除されゆき、より極端な機能美が追求されるようになった。ミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸や白井晟一の虚白庵に代表される。

 読書会の場では、生殖や排泄を「俗」として括り、それらが隠される場所、秘匿される場所としてのナンド、地面へと貫かれている排水溝が隠されたまま、それでも生活の中心に据えてあるという旨の発言をしたが、果たしてそうであっただろうか。

 昔、ここでいう昔は産業革命以前であるが、人間の「俗」的部分(動物的部分と呼んでも良い)を隠すことによって、神(聖)に近づこうとしていたことはまだ理解ができるが、果たして産業革命以降の人間が神(聖)に近づこうとしていたのだろうかと、些か疑問を持った。生活、習慣、宗教、様々な理由で目指す対象は異なれど、モダニズム建築が潮流に乗り出した日本において何を目標にしていたのかを明確に認識しなければ、「聖」的側面が屹立すべき歴史を語ることができないと感じた。

 それでも生活は家に縛られ、家は生活を支配し得る。疫病が蔓延している世情において、我々が過ごす空間は生活環境以上に大きな意味を持っている。現在の生活が内包する多くの意味を解き明かすためにも、本書は役に立つだろうと明るくない頭で思う。

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