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きっかけは、ある夜の満月

書いたものを誰かに読まれるのが嬉しい。

初めてそう思ったのは中学二年生の時。その発端は「宿題」からでした。

私の通っていた中学校では、教科書や問題集を使った一般的な宿題のほかに、「日記を書く」というのがありました。日記を書いて担任の先生に毎朝提出する。それを読んだ先生はコメントをつけて帰りのホームルームで返却する、というもの。

他の宿題は日によってあったりなかったりするのに、この日記だけは毎日ありました。しかも五行以上書かないといけないとか文量も決められていたので、非常にめんどくさかったです。

当時私は柔道部に所属しており、部活が終わって家に帰るとだいたい二十時過ぎ。へとへとになって夜帰宅するのに、家で宿題なんかやってられない。宿題にかける時間は極力減らし、疲れた身体を休める時間に充てていました。

なので、宿題の問題集は答えを写すか、次の日の朝、友達に写させてもらいます。でも、日記だけはどうしようもないので、夜帰宅してから貴重な時間を使って自分で考えて書きました。書くネタがない日は地獄だったけど、文字を大きくしたり、一文で改行したりして、なんとか決められた行数を凌いで毎日書きました。


その日もいつも通り、帰りのホームルームで先生が日記を返却していきました。

ただいつもと違ったのは、先生が「気に入った日記があるからその内容を紹介したい」と言い、プリントを配りだしたこと。

配られたプリントを見てびっくり。見慣れたやたらと大きい文字や、一文ごとの雑な改行、そこにはなんと、私が昨夜に書いた日記が印刷されていたのです。意味が分かりませんでした。

印刷されていた私の日記の内容は、「月がきれいでした。」という書き出しから始まり、私がその夜に見た満月について感想をつらつらと書いたもの。

それを書いた夜は、ちょうど満月の日でした。

部活が終わって家へ帰っているとき、私が帰っている方向には家に着くまでずーっと大きな満月が見えてました。印象的な夜だったのを覚えています。

日記には「いつもより道が明るかった。」とか、思ったことを飾りもせず書いた気がします。先生ウケを狙ったということはなく、ただただ書くネタに困っていたので、その日に印象的だった月について適当に書いただけです。それが皆の前で紹介されたので、驚きでした。

先生いわく、「自然の風景をきれいだと思える感性がよかった」とのこと。起きている現象を気にも留めずスルーする人が多い中、満月を見てその感動をきちんと表現できているところが、先生は気に入ったそう。たしか「皆さんも身の周りの美しさを感じる力を養ってください」と、そんなこと言ってたような。

匿名で紹介されたけど、最初プリントが私の日記だと認識できた瞬間は、恥ずかしかったです。「何しとんねん」と、正直思いました。でも、皆が私の書いたものを読んでいるのを見ていると、なんだか嬉しくなってきました。先生に褒められたことよりも、皆に読まれていることが嬉しくて気持ちよかったです。

その日以来、書くことを前向きに捉えられるようになった気がします。次第に日記の文字も小さくして書く量も増えていきました。

日記で書いた満月をきっかけに、自分は書いたものを読まれるのが好きなんだとわかりました。


今宵のスーパームーンを眺めながら、そんなエピソードをふと思い出す。

いま見えている月も、きれいだと思いました。


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2017年からブロガー始めました。複数のジャンルで運営しています。こちらは私の思考や経験などを枠にとらわれず書くつもりです。四国出身。ディッキーズの服が好き。