備忘録 2

今日は少し雲が多いです。
でも、昨日の晴れた天気のおかげか、外は暖かく、春の陽気も感じられます。
そちらはどうでしょうか。2日ぶりに自由になった身体で、みんなに挨拶に回っているところでしょうか。

一昨日は心の準備も何もなくあなたの姿を目の当たりにしたので、驚きと動揺で涙を堪えられませんでした。
昨日は、心がだんだん受け入れ始めると同時にようやく現実のものとして実感が湧いてきたので、悲しみを抱えきれずに涙も堪えられませんでした。

何よりあなたが穏やかで、安らかであることを願っていました。
さぞ孤独だったでしょう。
自分の身に何が起こったのか、自分がどこに居るのか、それさえも分からないままに耐えることしか出来なかったのかと憂いていた私にとって、今朝の知らせは私の心に遅がけの春を運んでくるようでした。

みんな同じ気持ちでいると思います。
あなたの事ですから、10年20年の寝たきり生活も、その間家族の手を借りることも嫌い、それでもその意思を伝えられないままに生き延びてしまうことなど決して望まなかったでしょう。
それに最期が先延ばしになったとすると、その時私たちの心に刻み込まれているのは弱った、喋る事はおろか声をただ発するしか出来ないだけのあなたの姿で、みんなに愛された、元気で小さなあなたの姿ではなかったでしょう。

そんな不安が取り巻いていたこの2日間、その最後を苦しむ事なく旅立ったと聞いて、心の底から安心しました。

季節は春、今日は暖かくて雨の気配もない。流れる時間は穏やかで、あなたの最期に相応しい日です。
春のような人だったと、今気が付きました。

私が中学生、高校生の頃、学校や生活のことをあれこれ尋ねるあなたに辟易したことを覚えています。
でも大人になってそれは、愛情以外のなにものでもないことにも気が付きました。
その時、いつかこんな日が来ることを意識して、以降は与えてくれた愛情に感謝の気持ちで恩を返していこうと決めました。
贖罪、というほどではないですが、あなたにもこの気持ちが伝わっていたならば、嬉しく思います。
私としてはもっとたくさんの時間を感謝で満ちたものにしたかったと後悔もしますが、その一部でも伝わっていたならば、嬉しく思います。

いつかこんな日が来ると意識はしていましたが覚悟は出来ていなかったのでしょうか、やはり悲しみは大きく、手足が重い重い鎖に繋がれたような気分です。

でもきっとあなたのことだから、私のことは気にせず楽しく過ごしなさい、と言ってくれるでしょう。
もう少し時間はかかると思いますが、ゆっくりと鎖を解いて、しっかりと前を見て歩いていきます。

あなたも、あなたが周りの人々に与えた幸せの分、たくさんの幸せに包まれますように。その往く道が、光に満ち、穏やかでありますように。
これまで育ててくれてありがとう。

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