環境法の特徴1/横断的整理・同時並行的学習が可能

少しずつですが,司法試験環境法の特徴をお伝えしたいと思います。その上で,具体的にどのような学習をしていけばいいのかというところまでお伝えできればと考えております。

主に,2021年以降に司法試験を受ける方に向けて記事を連載していきますが,2020年受験の方も,直前期の視点確認のためにご利用ください。

横断的に整理する手法を体得することができる

例えば,「行政法」であれば,「行政事件訴訟法」の中で規定された訴訟を選択することが求められています。そのため,「行政法」の枠組みだけで検討すれば問題ありません。

一方,環境法の場合は,民事訴訟法,行政事件訴訟法で使うことができる手段を念頭に置いて考察を進めていくことが求められています。

例えば,以下のような事例を考えてみてください。

【事例1】ある工場が,大気中に排出基準を上回るばい煙[※]を排出しており,周辺住民の健康被害が生じようとしている場合又は健康被害が生じてしまっている場合,どのような訴訟により救済を実現するべきか。

[※]違法に汚染物質を排出しているという意味です。

大きく事前的救済と事後的救済とに分けることができます。

事前的救済

・工場を運営している法人を被告として人格権に基づく民事訴訟としての差止訴訟

・行政が規制権限を行使していないとして行政事件訴訟法に基づく義務付け訴訟

事後的救済

・工場を運営している法人が適切な措置を講じなかったとして不法行為に基づく損害賠償請求訴訟

・行政の規制権限不行使により損害が発生したとして国又は公共団体を被告として国家賠償請求訴訟

を提起することが考えられます。このように,環境法では一つの事例に対して,複数のアプローチを考えていくことになります。

同時並行的に学習が完了する

上記のような事例を環境法の視点から検討すると,一つの事例を検討するだけで,民法,民事訴訟法,行政事件訴訟法,国家賠償法を整理することができます

私自身,学部生の頃に『環境被害からの差止的救済』というテーマで卒業論文を書いたのですが[法学部には珍しく卒論がありました],この事例の検討だけで,民法の不法行為や,民事訴訟法の差止訴訟,行政事件訴訟法や国家賠償法を同時並行的に整理できたので,のちの司法試験対策に絶大な効果を発揮し,また,現在の講師業にも活きています。

次回は,主に民法の「不法行為法」の分野の学習が進むことについて書いていこうと思います。

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