403 神様からの贈り物

 神様は私に素敵な二つの贈り物をしてくれました。それは「数学」と「汗」
 数学と言っても、真理を解明するというような大それた内容のものではなく、大学の入試問題を解いたり、解説したり出来る程度のものなのですが、数学に取り組む事が私を寂しさから救い出してくれましたし、数学を教える事で生活を成り立たせる事もできました。
 高校一年の時、数学の幾何の分野で図形の問題を解く事から得た快感は強く心に響き、私の一生を左右しました。一瞬にして解答に結びつくような補助線を考えついた時は、闇の中に一条の光を見出したかのように思えました。霧に包まれた視界が一挙に晴れていく心地よさに酔いしれたものです。
 事情があって、高校の頃から独りの生活を余儀なくされましたが、数学の世界に浸り込む楽しさは、ひとりぼっちの寂しさを忘れさせるには充分な力がありました。以来、その喜びに導かれ、今に至っています。
 親と離れて一人取り残されたとき、はたまた、妻が亡くなって孤独に苛まれたとき、いつも私から離れず、生きる力を与えてくれた数学・・・・・。とかく理屈の通らない世の中で、正しく考える事、地道な努力を積み重ねる事が正当な結果に結びつくという公正さ。間違っておれば、それはすべて自分の至らなさに起因すると結論づけられる潔さ。問題と紙と鉛筆さえあれば、どこでも取り組めるという手軽さ。まさに、数学は神様が私に与えてくれた宝物でした。
 数学の問題を解いていると、周りがいくら騒がしくとも気にならず集中できます。人との交わりが苦手な私にとって、何の気兼ねもなく自分の世界に浸り込める数学は、無二の親友となり、心の支えともなって納得のいくまで私と会話してくれました。退職した今、時間に縛られず考えに没入できる条件を手にしてからは、よけい数学が身近な存在となっています
 数学を教えることで、若い生徒達と交わることが出来、彼らから新鮮なエネルギーを戴いています。そして、多く学べば学ぶ程、上手く教えられるという側面もあり、これからの人生にやりがいも感じます。
 私の人生の前半は、決して家族に恵まれたものとは言えなかったけれど、数学と共に歩む中で手に入れた幸せは大きなものでした。これからの人生を一緒に歩むには十分すぎる程たくさんの練習問題があり、たとえ、身体が不自由になっても、数学を解きながら満たされた時を過ごす事が保証されているのは有り難いことです。
 このように、私にとって数学は単なる学びの一領域を越えて、人生を共に歩む良きパートナーとなっています。
それからもう一つ、神様は私に「汗」という、かけがえのないプレゼントをしてくれました。
 私は小さい時から無類の汗かきです。熱いものを食べるとすぐ汗が噴き出てきます。夏になれば常に汗ばんだ状態なのでタオルを手放せません。
 汗だくになって掃除したり、運動した後、シャワーで汗を流し、下着を着替えた時の清涼感は、いつでも手軽に得られる「幸せ」と直結しています。
 気分が重く感じられる時、問題が解けずにゆき詰まった時、とにかく動いて汗をかき、シャワーを浴び、一休みすることで気分が一新して、前が見えてきます。これほど簡単で確実な気分転換はありません。
 神様は、私に「数学」と「汗」を贈ってくれました。このことを強く自覚した上で「一日一題」「一日一汗」を味わいながら残りの人生を歩んでいく覚悟です。


【気付きと対策】

※ 人それぞれに、神様が与えてくれたとしか考えられない特質を持ち合わせています。

・ 神様からのプレゼントは一生物の宝物です。大切に扱い、育て上げましょう。

・ 感謝の心で、神様からのプレゼントを受け取れば、それは、常にその人に寄り添って窮地を救ってくれる事になるでしょう。

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