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徐々に蝕まれる、私たちの関係性

自分の言葉で語るのも、何より抗い方が難しすぎるのだが、「サービスの産業化(市場化)」がもたらす弊害について、どうすればもっとこの危機感を共有できるのだろう。

貧困が見えにくい、とか言うけれど、今の日本で最も見えにくい、かつ深刻な社会課題であるとさえ感じている。

例えば保育園。

保育園が保育サービスを“提供”し、保護者は“利用”する。この構造は実はとても危ういのだが、たぶんこの違和感は日常ではほとんど語られない。保育中にできたほんの小さな傷を、迎えの時に真っ先に報告することの背景にある、保育士-保護者間の見えない壁。見えない壁によって生まれる、あっち側とこっち側。

保育士-保護者間に壁が生まれると同時に、保護者-保護者間にも壁が生まれる。そうなって起きるのは、孤立。互いに表面上は関わるが、本音はなくなりここにもあっち側とこっち側が生まれてく。その環境の中で過ごすことの影響(子どもにも、おとなにも)はその時には分かりにくいので、誰にも気づかれずに通り過ぎていく。

「サービスの産業化(市場化)」が厄介なのは、そうした方がある時点ではラクなことが多いから。便利になったり、時間がかからなくなったり。グレーゾーンがないから話し合わなくて済むようになったりもする。
でも、徐々に徐々に、ホントに見えない具合に関係性が蝕まれて、個人は孤立していく。目の前で起きている「私たちの問題」が「誰かの問題」になっていく。

この課題に対しての打ち手は、今のところ見つかっていない。一個人としては、保育園で、飲食店で、行政窓口で、小さく小さく抗っていくことしかできない。NPOとしての取組の源流にももちろん埋め込んでいるつもりではあるが、一組織の取組みで歯止めをかけるなど到底できない。

途方に暮れたくはない。どこかに糸口を見つけていきたい。

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という、この10年くらいずっと気になってることをTwitterに書き連ねたら、わざわざDMまでくださった方がいたので、ここにも書き留めておくことにした。

ちなみに、Twitterに書き連ねた前日にお会いしていたのが、西川正さん。ここに書いたようなことも含め、今の時代に大切な示唆を与えて続けてくれる西川さんに触発された形なので、参考文献としてこちらをご紹介。

https://www.amazon.co.jp/あそびの生まれる場所—「お客様時代」の公共マネジメント-西川正/dp/4907239238

読んでいただきありがとうございます。子どものウェルビーイングのために事業を行う「認定NPO法人PIECES」の事務局長をしています。いただいたサポートはNPOの活動資金にさせていただきます。