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大胆予想!?Clubhouseというゲームメカニクス

最近話題のClubhouseをしばらく観察してみたので、気づいたことを書いてみる。自分は、ゲームを作る人、AIテクニカルゲームデザイナーなので、その視点からモチベーションの整理なども。
あくまで今の時点での予想なので、将来は大きく違う形になっている可能性もあるし、どこまで続くかは有名人をどこまでつなぎとめられるか次第という部分は大きそう。

■ClubhouseというゲームのWhy/How/What

【Why】
今しか聞けないライブ(っぽい)体験、ココでしか聞けない話があるという価値、を提供するSNSを実現したい
【How】
記録・シェア禁止という規約によって実現させる
【What】
部屋が閉じるとその内容は他のどこにも残らないという一回性(アウラ)を演出して人を惹きつける
24時間、有名タレントやインフルエンサー、興味深い人が、いつもどこかで話している状況を提供する

今後の利用のされ方は、以下のようになっていくと予想。

■『3つのレイヤーに分かれた利用』

①(盗聴) 有名人の会話を盗み聞き     
②(参加) 有名人と直接会話できるドキドキ 
③(活用) 雑談・宣言・共有

それぞれの提供するモノは、
 ①(盗聴)→ココでしか聞けない話、見られない一面     
 ②(参加)→ココでしか出来ない体験 
 ③(活用)→ココでしか出来ない偶発的な繋がり
だと考えている。

体験デザイナー(ゲームデザイナー)としては、
①(盗聴)②(参加)を維持するためには、有名人に利用し続けてもらうことが必要。インセンティブによってそれを実現しようとして上手くいっていない(ように見える)サービスもある中で、Clubhouseは③(活用)の面で、有名人に「面白い」「ビジネスチャンスがありそう」と思わせることで彼ら自身に価値を提供しているので、一定期間はこのままで上手く回りそうに見えるので、まずはこのままで運用。
有名人の利用率が下がってくる前に、直接的なインセンティブではない形、あるいは広告モデルなどと組み合わせつつ、有名人の利用率維持を狙う。
というようなコントロールをするだろうか。

 一般人に対しては、①②に対しては有名人のトークルームによって達成してもらう。必要に応じて②が十分な数を発生させるためにイベント運営などを行う。③(活用)については、広く全ての人にモデレーターやスピーカーとして利用してもらうのは難しいので、ZOOM飲み会よりもカメラの準備、化粧はおろか着替えすら不要な半オープン飲み会(ランチ会)ツールとして活用してもらう。
これが定着するには、文化的な立ち位置を勝ち取ることが必須なので、コロナの外出・実際に会う事が難しいという環境を最大限に活用して、最速・最短で成功事例をシェアして確立させる。
といったところだろうか。

利用者のモチベーションフローも少し変わった部分もあり、面白い。

■利用者のモチベーションコントロール
(モチベーションフロー)

 ※ざーっと書いただけなので、MECEでなかったり、抜け漏れ、おかしな部分はあると思います;

 (a)全体のトークルーム一覧(検索)機能がない。
 (b)アクセスできるトークルームを増やすためにフォロイー(自分がフォローしている人の)数を増やしたい
 (c)自分の興味に完璧にマッチしていなくても、一定の一致度ならフォローしてみてフォロイー数を増やす

 (d)自己顕示欲、承認欲求から自分のフォロワー数を増やすために、
   (d1)ある人をフォローした後に表示されるオススメユーザー候補の上位に出たい
     (d-i)上位に出るためにフォロワー数を増やしたい→(d2)や(d3)に
   (d2)Followed by speakers の上位に出たい
   (d3)魅力的なトークルームを主催したい。
     魅力的なトークルームでスピーカーになりたい。

 (e)Followed by speakers の上位に出るためにトークルームを主催する人にフォローしてもらいたい
 (f)トークルームを主催する人にフォローしてもらうために
   (f1)主催者をフォローする
   (f2) 魅力的なトークルームを主催したい
     魅力的なトークルームでスピーカーになりたい。

 (g)大勢の人が参加している部屋で Followed by speakers 欄の上位に長く表示されたい
   (g1)大勢の人が参加しているトークルームにリスナーとして参加したい。

”現時点では”、どんな「有名人」(話を聞いてみたい人)でもClubhouseを利用しているというまでの浸透度ではないので、「有名人」の名前検索でその人につながることが出来ないことも多く、(a)~(c)という自分から積極的にあまり知らない人でもフォローしたくなるモチベーションフローがあるのが興味深い。

■利用の実態

今のところ①(盗聴)としての利用が活発で、
 ココでしか今しか聞けない話があるSNS
という形が成立していて、魅力的な空間になっている。

■今後

 有名タレントを中心に、堅実なリスクマネジメントが実施されてしまうと特別感を失う恐れがある。
ので、今の祭り的な空気が続くかは、マネジメントの入るタイミングと厳しさ次第。
 だからこそ、NGがない有名人が強い。Youtuberのヒカルや個人事務所に所属している芸能人、有名な個人起業家、インフルエンサーなど。
リスクコントロールを全て自分自身で出来るので、①(盗聴)に一番マッチする、ココでしか聞けなそうなグレーゾーンの話が提供できる。
終わった後に会社から呼び出されて大変。なんて事がない。
 ②(参加)は、一般人が有名人のルームでスピーカーとして指名され、直接有名人と話が出来てしまうパターン。
①(盗聴)を目的として参加しているリスナーがほとんどで、②(参加)を本当に期待しているリスナーはかなり少ないが、人生相談部屋など部屋の形式によっては②(参加)が出来る可能性が高い部屋がある。

 ③(活用)は、最終的に落ち着く形態だと考えている。
今はサービス開始直後のお祭り感で、テレビに登場していてもその人にそこまでの興味はなくチャンネルを変えるような有名人であっても、①(盗聴)を目的にルームに滞在している人も多いが、十分大勢の有名人が参加した後は、テレビのチャンネルを固定するような、Twitterをフォロー、Youtubeでチャンネル登録をしている有名人のみのルームに参加するようになる。
 そのうえで、Clubhouse固有の、有名人同士の偶発的なコラボ、スピーカーが入れ替わることでアメーバのように移り変わる話題、台本のないライブな会話を求めて、有名人同士も③(活用)するようになると思われる。
 特に、有名人のフォロワー(有名人)同士が交流するので、一定のクオリティが担保された範囲でスピーカーが入れ替わるので、クォリティを保ちながら内容が変わっていくという形式が独特なサービスになると思われる。

もし有名人の多くが離脱してしまった場合、①②をモチベーションにClubhouseを利用していた一般人の方はサービスから離れてしまうだろう。そうすると、一般人の数が減り、一般人の③(活用)においても、突発的な交流が発生する可能性が低くなり、身内だけの音声コミュニケーションツールとなり、カメラオフのZOOMミーティングとの差別化が難しくなる。
もちろん、有名人の数に限らず、一般人がサービスに飽きてしまった場合も同じリスクがある。            

■その他

個人的には以下のような使い方に可能性を感じる。

 本番イベントは実際に集まる有料イベントや別の(SNSなどオンラインを含む)場所での体験として用意した上で、
それの体験版として、公開打ち合わせや、前半部分の公開録音などを実施する。
そこで興味を持った人に、本イベントに参加してもらう。
体験版の中ではスピーカーとして参加していただき、本イベントで答える質問なども募集する。これにより、本イベントに参加していただける率を高める。

現象として面白いのは、
 既成事実。
 有名タレントに”面白いサービス”として広まってしまったこと。テレビで見たことがある有名人が、新しいサービスに対して不安を感じながらも頑張ってアプリを操作している姿が見られて、親近感が増したり、ちゃんとしたテレビでは見られなそうな有名タレント同士の身内トークが聞ける環境が、大きな広告費なしに成立しているという状況が興味深い。

実名制、招待制×BAN、永遠に残るデジタルタトゥーとしての招待者名×連座制BANという仕組み、トークルームに影響するためにはスピーカーとしてモデレーターに引っ張り上げてもらわなければいけないという仕組み、によって荒らしの発生を一定抑止しているのも面白い。

残念ながら、怪しげなゲーテッドコミュニティとの相性が良い機能が多い。
モデレーターに与えられた特別な権限。スピーカーに選ばれなければ一切参加することが出来ない弱い初期の立場。
今後、課金によってモデレーターにフィードバックが発生するトークルームの実装や制限人数の上限解放、有料会員のみが入れるトークルームの実装などは簡単に想像できる。これらは怪しげなクローズドグループにとって大変使いやすいツールになる。

漫画家さんなど、個人事業主で同業者だけど、日々の仕事の内容に共通点が多い職種の方々の朝会と相性が良い。共通点があるのでリマインダーになったり共感を得やすい。
個人事業主なので、情報漏洩リスクは自己責任自己管理。
Youtuberや有名タレント、インディーゲームクリエイターの朝会なども相性が良い。朝会の中で自身の作品を紹介することで、リスナーへの広告効果も期待できる。

■最後に

Clubhouseは、黎明期ならではの熱量と、偶発的な生物のようなトークの成長と世代交代があり、大変興味深いサービスだ。
コロナという環境でのZOOMの登場により、生放送の価値という幻想・呪いから解き放たれたと思われていた瞬間に、カウンター的に疑似的に人工的にライブの価値を担保したClubhouseが登場したのは大変興味深い。

いつか、ライブ、生放送、一回性の価値(アウラ)についても、考えたい。

※ここ数日(21.02.03付近)、夜の20:00〜24:00辺りはサービス(の回線)がかなり不安定。
せっかくノッてきたタイミングなのに、これを理由にITに詳しくない有名人を逃してしまうと、かなりの機会損失に見えるけれど…踏ん張れるか!?

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