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不確実性に立ち向かう話 #技育祭 #ソフトウェアと経営

技育祭2020にて、オープニングのパネルディスカッションと2日目にて登壇させていただきました。そちらの登壇の中でお話した内容についてのnoteになります。

ちなみに、最近始めたnoteの有料マガジンでは、今回の登壇内容、特にAgilityとソフトウェア経営に関わる様々な内容を詳細に解説しています。ご興味ある方ご購読下さい、また感想をTwitterなどでつぶやいていただければ反省点や今後の記事内容などコンテンツに反映していく予定です。

登壇内容

今回の登壇では学生の皆さんのキャリアの参考になればということで、事業も会社もベースは一人ひとりの人間とその意思だという主旨の話をさせていただきました。テックカンパニーと題しているにも関わらず、60分の講演の中の50分はAgilityについての解説をしています。自分にとってそれだけこの概念がテックカンパニーにとって重要だということですね。

当日のスライドはこちらです。

お話したことの中からいくつかかいつまんで書いてみようと思います。

不確実性と問題空間と意思

不確実性とはなにか、事業における課題設定とその課題の解法が存在するであろう問題空間(これはサラス・サラスバシー著 エフェクチュエーションから持ってきた言葉です。)における探索という考え方で説明しました。問題空間の中でどの選択肢が正しいか、我々には事前に分からないことも多く、どこに進めばよいのか分からないのが事業です。この不確実な世界に対して日々細かな取り組みを行い事業を理解していくことが重要です。理想的には不確実性に対して自律分散的に取り組むことで、沢山の知識を獲得していくことが重要、そのためにAgilityが大切です。

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不確実性に立ち向かう上で我々は様々な施策を試していき新たな知識を得ていくわけですが、そうした活動を自律分散的に行うためには特に個々人の意志が重要となります。意思があって初めて一人ひとりが自分で選択肢とその裏にあるトレードオフを選び取る事ができるからですね。

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また、意志を持った上で様々なアウトプットをするために下記の事柄が重要だとお話をしました。

・領域間を橋渡しする。そのために自分の専門に対する深い知識と、その周辺の知識の双方を持つ。
・より大きな不確実性に立ち向かうための挑戦の量と質の意識、さらに量を質に転化すること。

結局テックカンパニーとは

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最近多くの講演・授業で出す図なのですが、不確実性に立ち向かうためにソフトウェア・データを活用しAgilityを高めていく、このあり方がテックカンパニーだと考えています。スケーラブルかつレジリエントなソフトウェアアーキテクチャを実現することで失敗することに対するダメージをコントロールしながら多くの人に改善結果を届け、データにより日々の改善を科学的に推進していくことが重要です。これらにより組織が同じ方向へ一人ひとりが挑戦できる環境を作ることでより多くの解を見つけ、不確実性を最小化していくことでよりよいサービスがユーザーに届き、継続的に改善され続ける組織になるのではないでしょうか。

頂いていた質問からピックアップ

当日講演を聞いていただいた質問に全ては答えられなかったのでこちらで回答させていただきます。

Q. 事業を成長させるうえで重要なことは、適切な問題空間を決めることでしょうか?その場合、今考えられている問題空間とその魅力を教えてほしいです。

A. 問題の設定が一番重要ですね。何をユーザーに届けようとしているのか、何を積み上げていくのか、それはなぜ今取り組むべき問題なのか明確に定義していくことが重要です。今自分が取り組んでいる問題ですが、それは日本の様々な大きな組織がソフトウェア、データを正しく活用することでAgility高い事業スタイルに至ることそのものです。DMMの改革過程から様々知見が溜まったこと、コロナ禍で多くの会社が変わろうとしている中で、これをより多くの会社に届けていくことで日本全体の競争力を少しでも上げていけたらと考えています。

Q. 農機具から消防車など多岐なものに携わろうと思った理由がききたいです!

A. 事業軸については単純に知的好奇心も強いので興味の赴くまま様々な事業に関わっています。

Q. どこかの事業に特化せずにいろいろな事業を行うことのメリット・デメリットをどのようにお考えですか。

A. メリットは様々なチャンスに対して賭けることで知識や様々な方法論がたまり続けることです。新しく事業をスタートするときのスタートラインを高い位置に設定できるようになります。デメリットの一番はリソースの集中ですね。どうしても開発組織はいつもリソースが不足気味な状態で、その中で配置をうまく調整することで対応していますが、スタートアップと比べて集中という意味では勝てないのではという課題を感じています。ここは今事業としてどこに集中するのか、明確化している最中です。

Q. 松本さんは数人規模のスタートアップから、DMMの様な大規模な会社まで携わってきたと思われますが、ソフトウェア開発における、会社の規模による違い(流れ、考え方など)はありますでしょうか?

A. 会社ではなく事業の規模で違いがあります。特に不確実性の大きいスタート直後の事業では、正しいアーキテクチャを設計しようと思っても何が事業の正解か見えてるわけではないので、正しさが定義できないですね。なので完璧なアーキテクチャよりも、捨てられるアーキテクチャであることを意識しながらひたすら試すことが重要になります。事業拡大していく中で少しずつ正しいアーキテクチャの姿に近づけていくことになるのが現実なのかなと思います。

最後に

一人の人生も組織と事業についても、意志が最も重要です。自分で考え続け、トレードオフを取り続けることでいつの間にか様々な知識・資産が積み上がっていくものだと思います。常に考え続けていきましょう。

最後に、意志を持とうという話について明確に意識する事になったのは昨年亡くなった瀧本先生に負うところも多いのですが、先生の講演が本になっていますので興味ある方ぜひご一読を。


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