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【おすすめ本】主人公は「きみ」!?前代未聞の2人称小説!『しらみつぶしの時計』法月倫太郎

小説をあまり読まない人にも是非読んで欲しい小説を紹介します。

本書の紹介

法月綸太郎の、2009年本格ミステリ・ベスト10で19位を獲得した「しらみつぶしの時計」です。短編集ではありますが、その中の表題作である本作だけでも見る価値は必見です!

見よ、本格の真髄を!
名手が仕掛ける極限の推理
1440個のうちたった一つ!
正しい時計の見つけ方とは?
気がついたとき男は閉ざされた施設の中にいた。そこは、無数の時計が配置された不思議な回廊だった。そして時計はすべて異なる時を刻んでいた。1分ずつ違った、1日24時間の時を示す1440個の時計――。昼夜も知れぬ不気味な空間から脱出する条件は、6時間以内にその中から、たった1個の“正しい時計”を見つけだすこと!
 神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎! 名手が放つ本格ミステリ・コレクション!

主人公はまさかの自分、2人称で描かれる極限ミステリー

本表題作の特徴は何と言っても文章が全て2人称で描かれている事です。

地の文が主人公目線であれば「1人称」、第三者の目線であれば「3人称」で、世の中の大半な小説はこのどちらかで書かれてます。しかし、この小説では目の前の人物から語り掛けられるように主人公は『きみ』と呼ばれます。

この表現が、タイムリミットのある状態での極限状態とマッチしていて、まるで自分が難問を解いているかのような気持ちにさせてくれます。

味方は自分のみ。論理的思考のみで正解を導きだす

主人公である『きみ』が、時計に溢れている謎の薄暗い回廊にたたずんでいる所からこの物語は始まります。

そして、ナレーションにより、この薄暗い回廊にある1,440個の回廊に『只一つ存在する正確な時間を示している時計』を制限時間内に見つける事を言い渡されます。

なぜ『きみ』がこのような場所にいるのか明確な理由は示されてはいないですが、作中で『きみ』が語った、シンクタンクか何かの入社試験という説明が個人的にはしっくりきました。(いや、実際こんなテストを行う会社は無いですが)

ともかく『きみ』は何もヒントが無い状態でこの難問に挑む訳ですが、時計が『デジタル時計とアナログ時計に分かれている事』と『正解は只一つという事実』により論理的に正解の時計を絞り込んでいきます。

結論をいうと、デジタル時計で対になる時間を示している時計が正解候補と当たりをつけます。アナログ時計だと1周で12時間分しか示す事が無いので、『正解は只一つという事実』にそぐわない形になるからです。

つまり、デジタル時計で、例えば「AM5:32」と「PM5:32」を示している時計を見つければ、そのどちらかが正解という事になります。

敵は1,440個の時計!タイムリミットは後僅か

おいおいそこまで言ってしまってよいのか。ネタバラシしてしまってるんじゃないかと思った方、安心してください。本番はここからです

正解の当たりを付けたとしても、時計は全部で1,440個。しかもきちんと時間を刻んでいるので、時計のペアを判断するのは至難のワザです。

タイムリミットはたったの6時間。その時間の中で正解の時計を見つけていくために『きみ』は知恵を駆使して、1,440個の時計を選り分けていきます。ここのプロセスも丁寧に描かれていて主人公と一緒に焦りを感じるように出来ています。

最後の瞬間の主人公との一体感は圧巻

時間をかけてついに『きみ』は1組のペアになる時計を見つけます。しかし、最後の最後、そのどちかが正解かを絞り込む一手が見つかりません。

ここは是非、主人公と一緒に考えてみてください。この最後の一手に関しては読者も考えれば分かるようになっています。

自分も小説を読んでる途中で正解に辿り着き、この問題を自分で解決したような気分になりました。正直見ている途中でページを読む手が震えました。。。

短い作品ですが、この表題作だけでも見る価値は非常にありますし、何よりも2人称小説というなかなかお目に掛かれない小説ですので、話のネタにも是非とも読んでみてください。

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