牡丹を巡る不思議な話【4】
私の小さな店は古いアパートメントの2階にある。
ある日階段を降りて中庭を歩いていてふと目に止まった葉の形に見覚えがあった。
牡丹だ。
何故こんなところに?牡丹園でしか見たことがない牡丹がこんなに近くにあった。
そして8月。お盆のお墓参りにいった自分のお寺で今まで全く気がつかなかったけれど、門から本堂の間の花壇に沢山の牡丹の木がずらりと並んでいた。
その光景に息を呑む。
聞くところによると、ここは牡丹で有名なお寺らしい。お参りの時期には花が咲いていないので今の今まで全く気付かなかったのだ。
やっと気がついてくれたのねと言わんばかりに牡丹は自己主張をしだした。
あまりにも不思議なのである日友人と店の中にどれだけの牡丹があるか調べてみた。
カウンターテーブル、お茶を入れる螺鈿のテーブル、鎌倉彫りの鏡、いくつもの骨董のお皿も牡丹柄に溢れていて圧倒された。
そして10月
結婚式で出雲に行くことになった。
せっかくだからと穴道湖のホテルに二泊して観光をした。
有名な穴道湖八珍を食べさせてくれるお店があり珍しい海老などをいただき、ほろ酔いでお店をでた。
穴道湖沿いの泊まっているホテルが遠くに見えてなんとか歩けそうな気がしたので、人に尋ねながら歩くことにした。
明日は松江城のお祭りらしくその練習か祭り囃子も聞こえてくる。
知らない言葉をきき知らない町を歩くのは面白い。
もうこの辺りのお店は閉まっているところがほとんどだけど遠くにひとつだけぽうと灯りが見えた。
近づくと中国茶のお店。
小さなお店で客は私ひとりきり。おかげでゆっくりオーナーさんとお話しができた。
この辺りでは一軒だけの中国茶のお店で私も同じく中国茶を出しているということで話が弾んだ。
そして次の日、神社巡りをしたあと食事を終え、温泉でゆっくりして夜のお祭りに備えようと思った時に昨夜のオーナーさんより「ご存知かもしれませんが牡丹で有名なお庭があります。行ってみてはいかがですか?とホームページのアドレス入りのメッセージが届いた。
また牡丹だ。
でも季節は10月、牡丹の咲く時期ではない。そしてそういうところは辺鄙で車でないといけない処が多く、次回かなと思いつつHPを開いてみた。
「一年中牡丹が咲いています。」
この一文に胸が高鳴る。
行こう。
早速ここからの交通機関を調べると1時間に一本くらいバスがでている。バス停に急ぐ。そしてバス停についた瞬間に来たバスがまさに牡丹園行きのバスだった。
まるでお迎えに来ましたと言わんばかりのタイミング。そしてそのバスは私を牡丹の咲く有志園に運んでくれた。
牡丹の紋 壁絵は赤い大きな牡丹。
そして本当に牡丹は溢れるように咲いていた。
呼ばれたのだ。牡丹に。
もし食事のあとにタクシーでまっすぐ帰っていたら有志園の事も知らずに帰っていただろう。
つづく
牡丹を巡る不思議な話【1】|牡丹|note
https://note.com/y_botan/n/n64d653cba00b
牡丹を巡る不思議な話【2】|牡丹|note
https://note.com/y_botan/n/n6b0db394cdaa
牡丹を巡る不思議な話【3】|牡丹|note
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