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地味な話題かもしれませんが。Vol.2

試合のない、こういう時期だからこそ、こんな話題に触れてみたいと思います。
派手さはありませんが、大事な話ではないでしょうか。

「ホームタウンレポート」にて

「明治安田生命保険相互会社と「特別協賛」契約に基本合意」(Jリーグ)
あまり話題になっていないようですが、この件、なかなかすごいことだと思っています。

開幕当初のJリーグの各クラブでは、「社会貢献」「地域貢献」という言葉が行き交うことは少なかったと思います。それよりも「街おこし」という側面が強く、また行政との絡みも「具体的にどうすればいいのか」と、誰もが手探りでした。

Jリーグの草創期は「Jリーグオフィシャルガイド」(小学館。1992~1998年)の制作に関わっていました。
その中で、93年のニコスシリーズ(セカンドステージ)から「ホームタウンレポート」というページが始まりました。私は平塚(当時。94年サントリーシリーズ)、広島(94年ニコスシリーズ)、名古屋(95年サントリーシリーズ)、浦和(96年)の取材を担当していたことを思い出しました。

この「ホームタウンレポート」というのは、

自治体と市民、そしてチームが協力してホームタウンを形成する。これがJリーグの理念である。どこが強すぎてもいけない。3つの力が一緒になって、バランスがとれて、初めてJリーグチームが誕生する。(94年・ベルマーレ平塚の回の冒頭より)

という、概念の中で関係者の皆さんに話を聞きながら、「Jリーグの理念に賛同し、向かっています」ということをレポートしていました。

今考えると、表現としては「チーム」じゃなくて「クラブ」ですね。それぞれの皆さんの苦労話を伺い、これからに向けて前向きな話をまとめたものでした。

手前味噌ですが、「週刊ポスト」時代からこういうルポものは好きで、毎回楽しみにしていたものです。(それにしても、97年からコーナーそのものがなくなった理由を失念。ちなみに97年の号と言えば、岡野雅行選手(当時、浦和)の表紙で、ほぼ丸々編集作業に関わった思い出深い一冊です)

大方は、それぞれの歴史を振り返りつつ、市民からは「クラブの存在が街を元気にしている」、自治体やスポンサーからは「クラブに協力することは地域貢献、社会貢献の一つ」、そしてクラブは「市民から愛されるクラブ作りを。そのためにも結果を出すことが大事」という内容でした。

ですから端的に言えば、当時、クラブそのものが街に出ていって、関わるという姿勢が薄かったのです。というのも冒頭で書いた通り、市民も自治体も、そしてクラブも、まだそれぞれの関わり方を手探りで模索していた時代だったからです。

「なくてはならない」存在を目指して

振り返ってみると、当時のクラブそのものの活動を見てもボランティア的な要素、発想はあまりなかったと言っていいでしょう。なぜなら「プロになったんだから」と、選手たちのあらゆる活動が、契約に則った「有償」とされたからです。ある意味、選手の権利が尊重され始めた時代でもありました。

あれから20年たち、時代の流れの中で、企業が経済活動だけでなくCSRを重視するようになったことが大きいのですが、ただ勝った、負けたではなく、生活の中にJクラブの存在が根付き始めているということが、今回の協賛に繋がったと思うのです。

こういう話は蓄積があってのもの。地味な話ではありますが、担当者レベルの思い出だけで終わらせるのではなく、戦績と共にこういう記録も「証言」として、残しておいてほしいと願っています。

というのは、サッカーの土壌も何もなかったところからのスタートだったというクラブもあります。そんな中でやはり「応援するきっかけ」は、選手やスタッフたちの一生懸命な姿のはずです。

見てくれる人はいるのです。
しっかり見てくれる人の信頼を裏切らずに進めていけるクラブが、地域からの支援を得て「なくてはならない」存在になるのです。

その精神は、Jクラブだけではなく、他のスポーツでも、またアマチュアクラブでも同じ。「これくらいでいいだろう」では、理解されないのです。選手もスタッフも妥協しない姿勢こそが信頼を得て、前に進むことができるのではないでしょうか。

次は「社会を担う」存在に

さて、昨年からJリーグが「シャレン!」(社会連携活動)という取り組みを始め、先日「2020Jリーグシャレン!アウォーズ」が開催されて、各賞が選ばれました。

個人的には、大宮アルディージャの「手話応援デー」が受賞したことをうれしく思っています。
詳細については、
2020Jリーグシャレン!アウォーズ・ソーシャルチャレンジャー賞『手話応援デー/大宮アルディージャ』活動レポート

J2大宮が取り組む「手話応援デー」始まりは06年
をごらんください。

当初の混乱を目にした記憶がありますが、正直、試合中に手話で応援というのは、なんとも発想できないことでした。アットホームな大宮アルディージャだからできたのかもしれませんが、改めて故・田部井功さんのバイタリティと、もともとボーイスカウトの活動にも熱心だったその社会貢献の意識の高さに敬服します。お元気でしたら、どんなに喜ばれたことでしょう。

サッカーとは違うチャンネルで、サッカーと繋がる人が増えていけば、もっとサッカーは理解されていくと思います。

というか、Jリーグには、他国のように「経済を担っている」のではなく、「社会を担う」存在であってほしいのです。それこそ、今回のニュースはワイドショーでも取り上げてもいい話題ではないでしょうか。ある意味、これこそが「スポーツの可能性」。だからこそ、もっと日本国内で共有していきたいものです。

なんとなく、Jリーグは次のフェイズを迎えたような気がしませんか?

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