ヴァーチャル帰省

「ここが夕菜の部屋、ここが陽菜の部屋」

先日、父と妹と三人で今話題のZOOM飲み会というものにトライしていた。うちは父子家庭で、実家は関西の田舎にある。東京住みのわたしと東北に住んでいる妹と、関西の父とで遠隔飲み会。はじめ父はZOOMに対して回線が中国を経由するので危ないのでは?と年齢相応の猜疑心を抱いていたが、娘たちの押しに負けてダウンロードしていた。

通信環境があまりよろしくない実家のため、父は電波のつながりやすい場所を探してあちこち動いていた。駆け出しのユーチューバーの自宅紹介のように、激しい手振れのもと自宅を回った。「ヴァーチャル帰省だ!」と妹が言った。

久しぶりの家族団らんで、お酒も入っていた父はだんだん楽しくなってきたらしい。冒頭の通りそれぞれの部屋の紹介をし始めた。私たちは歓声をあげながら部屋をまわった。妹は2か月ぶり、私は半年ぶりの実家だった。みんなで飲んで喋って、楽しいひと時だった。

インターネットってすごいけど、いつでもつながれるようになって便利になった私たちは果たして本当にこれを求めていたのだろうか?本当は今月か来月あたりに帰省をする予定だった。でももうその必要を感じなくなってしまった。きっと父は楽しみにしていたはずだけれど、ヴァーチャル帰省であらかた満足してしまった。毎回帰省をして、お金と時間をかけてしていたことが今やインターネット上でできるようになってしまった。

このような「これでいいんだろうか?」というのは、きっと文明が進む瞬間毎度誰かが感じていることなのだろう。私が携帯を持った瞬間、ゲームにはまった瞬間、親や祖父母に怪訝な顔をされたことを今でも覚えている。けれども時代は進んでいるし、父もスマホ版のマリオカートもZOOMもダウンロードした。

世の中が進んでいく中で、きっと私だって「これでいいんだろうか?」と思う瞬間はこれからさらに増えてくる。人生経験が増えていくからこその感性だ。この感性はいままでの積み重ねでもあるから大切にするべきだけれど、人間はアップデートしなければ世の中や後に続く世代に取り残されてしまう。

どんどん新しいことを吸収しよう。いまある感性を大切にし、新しいことを学んでいこう。未来はきっとそんなに悪いものじゃないはずだ。けれども私は「ちょっと古い」かもしれない経験もちょっと積んでいるので、今年も必ず帰省をして、ヴァーチャルでは味わえない実家の日々を感じにいこうと思う。

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