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やるべきことをやって勝ち切る(2021/9/25 FC東京vs浦和)

ACL出場権を得るための3位、あるいは天皇杯優勝チーム次第でおこぼれがもらえる可能性のある4位、この枠をめぐる争いに入るかどうかのラインがFC東京までになりそうな状況でこの試合を迎えました。

東京は水曜日の名古屋戦でレアンドロが退場した後に前の枚数は削らずに中盤を減らした4-3-2にして最後まで勝ち点3を取りに行ったところからも、この争いに加わるラストチャンスとしてこの連戦を位置づけていたと思います。


この試合に向けてという点で東京は、DAZNの試合前インタビューで長谷川監督が「浦和相手には走らないといけない」と強調したように、永井、田川、渡邊、高萩とフレッシュなメンバーを入れて前向きにプレッシングをかけて、スクランブルを起こして、中盤から前でガチャガチャした展開を作りたいというのが大まかな狙いだったかなと思います。

また、保持の基本配置はSBとSHがそれぞれ1列前に出た2-4-4のようになり、開始早々の先制点のシーンのように最後尾がオープンにボールを持った時には浦和の4バックvs東京の2トップ+両SHで数的同数になるので、誰かが引いて空けた場所に次の人が入るという関係性を作りやすくしたかったのかなと思います。


先制点はキックオフから高萩、永井が積極的にプレッシングをかけて岩波に蹴らせて回収してかなり手前に深さを作ってからなので江坂、小泉が森重をオープンに持たせないというのは難しいかなと思います。

あの場面については浦和の4バックが横に広がり気味だった隙間を狙って走った田川とそこにボールを届けた森重が良かったですね。浦和からすればプレッシングへ移行する場面とは言え、人を捕まえるのではなくまずは中央のスペースを埋めてCBを越されてもSBがカバーできるようにすれば良かったのかもしれません。

ただ、それ以降はボランチやSBがあまりサポートに下りてこず、CBが少し開き気味にボールを持ったところから始まるFC東京のビルドアップに対しては、小泉と江坂がしっかり内側から横方向の規制をかけて東京のCBを外に追い出しつつパスコースを前方向、それも出来るだけ外レーンのみに限定することが出来ており、東京としてはボールを持っても落ち着ける時間がなく、前に蹴ろうとしても蹴った先でこぼれ球を拾うためのポジショニングが間に合っていないので、浦和が回収して再び守勢に回るという展開となりました。なので、浦和は1点リードされていながらも自分たちのテンポで試合をコントロールできていたと言えるのではないでしょうか。


前節のセレッソと比べると東京はかなり中央を締めて、縦の長さもコンパクトに保ちながら、2トップ脇のスペースをSHが縦スライドした時も4-2-4にならないようにSBが連動して縦スライドしていました。これに対して浦和の方は特に右の酒井、関根、小泉が連動して田川、長友の前、間、背中を狙って揺さぶりをかけて行きます。

5'08は酒井が手前に引いて田川を引き出し、関根が田川の背中を使おうと下りることで長友を引き出し、長友の背中へ小泉が斜めに走り込むといった具合に、相手の矢印の出し方、それによって空く場所をしっかり認知して使えた場面が序盤からたびたび見られました。

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また、16'41にはショルツが高萩の脇から一気に運び、前にいる汰木、明本が合わせて前に動くことで渡邊と鈴木を押し下げることが出来ています。

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このように東京が前向きなアクションを出そうとしたらその裏を取る、前に出てこないならそのまま押し込む、といった具合に浦和がしっかり相手を見ながらボールを前進させたことで東京のブロックの重心はどんどん下がっていくことになりました。

さらに言えば、この2シーンのように外から行くだけでなく、へその部分には柴戸か平野が必ず入っていて、東京のMF-DFの間には江坂、小泉、汰木、関根がポジションを入れ替えながら漂うことで中へのパスコースも使うことが出来ていました。

これだけ中にも外にもバランスよく人を配置しているのでボールを失った後のトランジションも早く、先述のプレッシングと合わせて浦和のターンを長くして東京の前向きなエネルギーを削いでいったのではないかと思います。


そして、前半の最後に中央の縦パスをきっかけに最後は外から酒井が斜めに飛び出してきてゴールを奪いました。この場面は平野が2トップの間でボールを受けてターン、平野からCHのゲートの奥に江坂へさらに縦パスをつけて江坂もターンと、ほんの2、3秒で東京のFW、MFのラインを中央から越えています。中から運んで相手が中を閉めたら、今度は外から酒井が上がってきて外へ広げる、広げたことで空いた隙間を通す、と見返せば見返すほど気持ちよくなれるゴールでした。なんで一回オフサイドにしちゃったんだよ!

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東京は前半守備に追われて消耗していたように見える渡邊となかなかトランジションでボールの預けどころになり切れなかった高萩を下げて、東とディエゴオリベイラを投入。さらに60分にアダイウトン、64分に三田を投入してより好戦的な体勢を取りにいきます。

しかし浦和は、48'01には右の外レーンに酒井、小泉、江坂、関根が縦に揃うことで東京がSH、SBの縦スライドで出す矢印を利用して前進してエリア付近での小泉の連続切り返しをした場面を作ったり、50'50にはまたしても浦和の右サイドから関根が田川の背中を取ることで長友を引き出し、小泉のサポートを伴って長友の背後へ抜け出したり、前半と同様に相手の出す矢印を利用しながら再現性を持ってボールを前進させていきました。


64'40には西川までボールが下がった時にディエゴを先頭に東京がプレッシングをかけてきますが、岩波がしっかり手前に深さを取ってアダイウトンから距離を取った状態でボールを受けたところから、酒井、江坂とパスが繋がってプレス回避。先にポジションを取って相手から離れてボールを受けているからこそ、相手が出す矢印を確認してパスを出すことが出来ており、ボールを持っている選手が相手を観察している間に次の選手がポジションを取るという好循環でした。

この後のクリアボールを岩波が拾うと東京が最終ラインを押し上げる時間も与えないうちに平野、酒井とパスを繋いで東京陣内へ侵入して関根が強烈ミドル。バーに当たったボールを江坂が丁寧にシュート。関根がフリーでボールを持った瞬間から時が止まったように感じましたが、ゴール前であれだけ落ち着いて当たり前のようにボールをゴールへ転がすのってとても難しいのではないかと思いますが、そういうことを簡単そうにやってしまう江坂は流石ですね。ユンカーも自分でゴールが欲しかったともいますが、江坂に譲ったのは好判断でした。


後半の飲水タイムで東京は長友を右へ移動させて3-5-2に変更しますが、これが東京としては奏功したと思います。終始浦和が優位に試合を進められたのは中央でのトランジションにおいて平野、柴戸の回収、展開が上回っていたことが大きく、東京はこの中央のスペースに3MFを置いてポジショニングの質で上回る浦和に対して人数で対抗してきました。

73'48に岩波からのパスを小泉がつつかれて奪われた場面も、74'56に平野が安部、東、三田の3人に囲まれて奪われた場面も、東京がピッチ中央に人数を割いたことで浦和の最終ラインにプレッシングをする人数を確保しつつもボールの出し先になる中央で相手を囲む人数も残すことが出来るようになったことが一因だと思います。

前向きにトランジションを起こしてスクランブルを起こす東京らしい場面が試合終盤に増えて浦和のゴール付近までボールが入ることが増えましたが、浦和の方も酒井は負傷で後退したものの槙野を投入して5-4-1に変更して逃げ切り成功。連続無失点は途切れてしまいましたが、失点した後の90分は無失点なので実質無失点ということにしておきます。たらればですが、東京の方がもう少し早く中央を3枚にしていたらもう少し展開が違ったかもしれません。


試合開始早々の失点ということで、そこで引きずってしまってバタバタしてしまうということもなく、失点してもやるべきことをきっちりやり切って自分たちの得意な局面を作り続け、同点、逆転と結果を掴み取る強さは本当にたくましいです。

9月の試合はこれですべて消化し、ルヴァンの川崎戦は2分け、リーグ戦は3戦全勝と結果だけでなく内容も充実度が上がってきました。そして、いよいよやってくる勝負の季節をその渦中で過ごせるこの緊張感。とてもワクワクします。月が変わりますので、また1ヶ月分のまとめをしますので、神戸戦以降についてはそちらで書こうと思います。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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