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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#17.2020 J1 第12節 vs神戸 採点結果~

サンペールありとサンペールなしで大きく試合の流れが変わったこの試合。
前川のスリル満点のプレーに浦和も神戸も翻弄されたような気がしなくもないですが、お互いに相手チームの守備の仕方から攻め筋を準備してきたというのは感じられました。

そうした両チームの戦術的な部分は今回もボードを使った動画でレビューしていますので、よろしければこちらをご覧ください。

◎この動画で解説している主なポイント
・浦和 使えた「裏」と使えなかった「裏」
・神戸 サンペールのピボットとしての役割
・神戸 システム変更(4-3-3→3-4-3)による影響
・「運ぶドリブル(Conducción)」について

それでは採点に行きましょう。

採点結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 3点 (アンケート:2.6点)

ゴール前のチャンスは意図的なものと、そうでないものを合わせて何度もありました。レオナルド、武藤、興梠にその場面が訪れましたが、そこを決めきれず。。
ゴール前での決定力というのは特にレオナルド、興梠はJリーグトップクラスなので、チーム戦術とはまた別の部分で、あの中のどれかは決めてほしかったですね。

ただ、トーマスデンの同点弾は2015年山形戦の阿部勇樹のシュートを思い出すような豪快ミドルでした。そのあとの側転+バク宙も合わせれば衝撃度はそれ以上かもしれません。

中継の中で福田さんが「もっと山中を使った方が...」と何度も仰ってました。動画でも言及しましたが、山中が相手の裏のスペースを狙って走り出していたシーンはあったのですが、なかなかそこにボールが出てこず、後半はもっとボールを触りたくなってしまったのかポジションが低めかつ内側に終始してしまったのは非常に残念でした。
この辺りについては試合の流れとは別に個人戦術の部門で議論する場があればなと思ったりします。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的、情熱的なプレーをしていたか?
→ 4点 (アンケート:2.4点)

守備においては相手のバックパスに対して武藤もレオナルドも積極的に寄せていく姿勢が見えました。
しかし、そこは神戸のサンペールを中心とした的確なポジショニングや簡単には蹴り出さないという意思から、前からのプレッシングをパスで剥がされてしまうシーンも多々見られました。

攻撃においても狙いは相手IHがプレッシングに出てきた時の背後、いわゆるアンカー脇のスペースへ関根、武藤、長澤が入り込んで最終ラインから縦パスを入れるというシーンが前半は何度も見られました。
ボールを持った時に狙う場所を事前に共有していたため、そこにスペースが出来た時の判断は早く、前向きなボールを多く刺し込めていたなと思います。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 4
点 (アンケート:1.4点)

神戸のボール保持の陣形が両SBが外側かつ高めに配置するものでしたので、浦和としては奪ったらその背後というのは意識されていたと思います。
この試合で山中が西の背後へ走ってボールが出た唯一のシーンも8:12~の菊池から逆サイドで待つ西へのフィードが関根に引っかかったところからでしたし、
21:21には西川がボールをキャッチしてから鋭いパントキックで西の背後へ走った関根へボールを見事に届けました。

守→攻の切り替え、ポジトラの部分ではチームとして狙う場所が整理されていたため、ここの移行はスムーズでした。

一方でネガトラの部分では、神戸が奪ったら即カウンターというよりは、一旦ボールを落ち着けて自分たちの正しいポジションへ戻してから攻撃を始めるというスタンスでしたので、
浦和の即時奪回、それが出来なければ相手を遅らせるというスタンスとあまりぶつかり合うことがなく、攻→守の切り替えの切れ目のなさを発揮するシーンは作りにくかったかと思います。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 2点 (アンケート:2.2点)

この試合でボールを持つシーンが何度もありながら神戸の守備を崩しきれなかった大きな原因は「運ぶ」ことが出来なかったことだと思います。

この記事を見てからまた試合を見直してくれる方がいるか分かりませんが、試合を観ながらとったメモで「このシーンで運ぶドリブルが入っていれば...」ということを書いたシーンをいくつかご紹介しますので、よろしければそういう観点でシーンを見返してみてください。

見返したうえで何のこと?となったら是非気軽にご連絡ください。
一緒に考えて勉強しましょう。

この運ぶプレーへの理解は三年計画のプレーコンセプトにも含まれていることからも、これからの浦和のサッカーを考える上では欠かせないと思っています。
なので、これを機に知っておいて損はしませんし、勉強しておくべきプレーです!

11:51
槙野 前がオープン
→ここであと4mくらい運ぶと佐々木or小川が出てきてくれるので佐々木の背後の関根か外の山中が使えそう。。
29:06
槙野 前がオープンで運び始めるが途中でやめてしまう
→関根が佐々木の背後でスタンバイしてるし、山中が外から西の背後を狙える位置なのでもう少し運んで相手にアクションを起こさせたい。。
37:13
青木が槙野の横に下りる(山中は外) 山中下りてきちゃう。。
山中が下りずに青木が運んでいれば武藤、関根が小川、佐々木の背後を取っていたので、食いついたら刺し込めたし、刺し込んだら西が食いつくので山中が裏へ走れた

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 3点 (アンケート:1.4点)

分かりやすく最終ライン3人vs相手2トップという構図ではありませんでしたが、味方によっては数的有利と言えなくもない?という配置はあったのかなと思います。

これは神戸が4-3-3の時にはIHが積極的にプレッシングに来るのでその背後を取るために中盤に人を確保しつつ、それぞれがプレッシングに出て行った選手の矢印からずれて、
ボール保持者から見て少し斜めの角度で顔を出していたことが原因かと思います。

左サイドで言えば、槙野へプレッシングへ行く佐々木の背後に関根が入る。そのことで西が関根をケアすることになります。

10:46ではボール保持者である槙野の周辺ではなく、ボールの出し先周辺で西に対して手前に関根、外側に山中という2vs1の構図を作りました。
29:30も関根と山中が外側で縦関係を入れ替わるように動き、瞬間的に西に対して2vs1を作っています。

しかし、このどちらのシーンもその数的有利を活かすボールは出てきませんでしたが。。
数的有利を作る、作ろうとするところまでは来ているのですが、それを活かせていないというのはちょっと残念でした。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 2点 (アンケート:3.0点)

Q2のところで武藤、関根、長澤でサンペールの脇、相手の中盤ラインの背後のスペースを狙うことは出来ていたと書きましたが、その先までボールを進めてフィニッシュというのは出来ませんでした。

この試合の主なシュートシーンは長短のカウンターでした。
前半、自分たちが狙ったスペースにボールを入れられてもそこから先のシュートまでスピードアップしていきたいところで手詰まりになってしまっています。

この辺りは動画でも言及しましたが、
中盤の裏を狙うことへの意識が強くて、一番肝心な最終ラインの裏を狙うことへの意識が弱くなってしまったのだと思います。

そのため、スピードアップできるところでボールをさらに前に進めることがなかなかできず、結果フィニッシュまで行ききれなかったのかなと。

大槻監督の試合後コメントで

少しボールを持てる時間があったときに、最終列と中列の間のところでもう少し質のあるプレーをしたかったです。

という言葉があったのも、この部分についてなのかなと思います。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 3点 (アンケート:2.6点)

中盤背後を取るまではスピーディ、その先は停滞という流れでしたので、ここは3点にしました。
ボールを持った時に最初に狙う場所をチームとして共有するところは前節のガンバ戦から引き続きで出来ていると思います。

あとは、
何のためにそのスペースを狙っているのか、
その先でどういう展開をしたいのか、
ここまで整理が進むともっと良くなるはずです。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 2点 (アンケート:2.4点)

神戸のバックパスに対しては全体でラインを押し上げていけましたし、ボール保持での最終ラインが高くなっていたので、ネガトラでも前からプレッシングに行くことが出来ました。

しかし、そこを剥がされたり、神戸がサンペールを中心に一度ボールを落ち着けられてしまうと、浦和のラインは少しずつ押し下げられてしまいました。

神戸はボール保持での人の配置がきっちり決まっていて、それぞれの選手が浦和の選手に影響を与えるポジションを取ります。
それだけでなく、サンペールが象徴的ですが、後方でボールを持った選手は自分の前にスペースがあればボールをドリブルでゆっくり運びます。
さらに、前方でボールを待っている選手はバックステップを踏みながらボール保持者から少しずつ離れていきます。

これによって、ボール保持者もその周りの選手もゆっくり前進するので、浦和の選手はボール保持者にプレッシングに出るタイミングを失い、神戸の選手たちと一緒にゆっくりラインを下げていくことになってしまったのです。

8:12~の神戸が浦和のプレッシングをかわして、菊池が前向きにフリーでボールを持てた後のシーンを是非見返してみてください。

ボールを持った菊池がゆっくりとボールを前に運び、菊池の前にいる安井と初瀬がそのスピードに合わせてゆっくりとバックステップをしています。
安井は柴戸と長澤の間、初瀬は長澤の外側にいるので、柴戸も長澤もうかつに菊池に対してプレッシングにいけば、自分が明けたスペースへボールを通されてしまうので、一緒にゆっくりとラインを下げるしかなくなってしまったのです。

コンパクトなおかげで、ボールを簡単に内側に刺し込まれることはありませんでしたが、ラインが低くなってしまうと、先制点のシーンのようにクロスの対応が1つ上手くいかないだけで失点してしまいます。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 3点 (アンケート:2.2点)

相手のパスをカットしたり、パスの出た先をつぶしたりというシーンはなかなか作れませんでしたが、相手のパスが出せる場所を先に埋めてしまって、パスミスでスローインを獲得するシーンは何度かありました。

0:30はクリアボールからプレッシングに行きましたが、
武藤が菊池まで追いかけてサポートに行った前川へレオナルドが逆サイドへは反転させない角度でプレッシングに行き、長澤も下りた初瀬を覗ける位置まで来ていたので、前川のキックがずれてスローインを獲得しました。

20:50は初瀬からのバックパスを受けた菊池に対して内側にレオナルド、外側に武藤がいることで菊池のパスコースはこの2人の間に限定できたことから、長澤が素早く寄せて菊池からのパスを受けた初瀬からボールを奪っています。

63:35~は興梠とレオナルドのポジションからエヴェルトンが大崎→山口のパスを予測して素早くプレッシング。ボールが大崎に戻された後に興梠は大崎へ寄せて、大崎の隣の菊池に対しても柴戸が一気に寄せていきます。
そのため、大崎は一つ奥の初瀬へボールを飛ばしますが、ここにもしっかり橋岡が寄せていましたので初瀬は十分な体制でボールを受けられず、また大崎のボールも少し長かったことでスローインを獲得しました。

味方のポジションから次にボールが出て行きそうな場所を予測して動くことが出来たシーンもあります。
こういうポジティブなところはこれからもしっかり拾っていきたいですね。

Q10.試合全体の満足度は?
→ 3点 (アンケート:2.2点)

「全部が悪かったとも思っていないですが、全部がよかったとも思っていません」という大槻監督のコメントもあるように、試合の内容としては勝ち点3でも1でも0でも妥当だったかなというのが個人的な感想です。


定点観測 - 17_page-0001

最後に

皆さんの採点が低めなのが私としては少し意外でした。特に攻守の切れ目の部分では奪ってからの次のパス選択の判断が速く感じたので、この項目は結構開きがありましたね。

やはり浦和の決定機の数が多かったのに決めきれず、神戸の決定機は決して多くなかったのにやられてしまったというのがあったのかもしれません。

さて、次は大分戦です。
昨年は内容的にも完敗した相手です。
今年は大分はなかなか思うような結果はついてきていませんが、それでもしっかりとした準備期間があれば十分に立て直す力のある監督、スタッフ陣ですので、気を引き締めて臨みたいですね。


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