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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#19.2020 J1 第14節 vsC大阪 採点結果~

お互いに攻守ともにバランスを保つことを志向するチームなのでオープンな展開は発生せず、しかしそれでもスコアは差がついてしまいました。

守備ではこれまでの課題が継続していて、それがこの試合でも失点につながってしまったなと。一方、攻撃では少しずつ今目指しているものの具体性が高くなってきてはいるなと。
ただ、やろうとしていることは表現でき始めていても結果が伴わなければ評価してもらえないのがプロの世界なので、0-3というスコアに対しての批判があるのは理解しています。

その中で、今回も目指している方向に対して見えたもの、見えなかったものを考えていきたいと思います。


採点結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 2点 (アンケート:2.0点)

攻撃面においては個の能力のポジティブな面が見えたと思います。
関根、興梠、長澤の相手の背後スペースでボールを受けた時の強さであったり、
デン、槙野、エヴェルトン、柴戸の縦パスを出せる力であったり、
チームとして狙っている場所とそこに起用された選手の特性はマッチしていたと思います。

しかし、シュート精度の高いレオナルドがこの試合では普段よりも不満げな声が多く、精神的に安定しなかったのか枠内シュート0でした。

また、途中交代の汰木もオープンな状態でボールを受けても前向きに仕掛けることがなかなかできませんでした。これは対峙する松田のポジショニングもあったとは思いますが、彼の特徴である大きいスペースで大きく仕掛けることが出来なかったのは少し気掛かりです。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的、情熱的なプレーをしていたか?
→ 3点 (アンケート:2.2点)

ボール保持でも非保持でも前への意識が見えているのは継続しているかなと思います。

ボール保持では相手の中盤背後に関根、興梠、長澤がポジションを取り、ビルドアップ隊はそこへボールを刺し込むことを目指していて、前方向への意識を持ちながら最後尾でボールを持っていたように見えます。

しかし、これは決定機にはなかなか繋がらなかったですし、狙っていた場所はピッチの中央スペースでセレッソ側もそこを使わせないように守備をしていましたので、簡単にはボールが通りません。
そこを通すための一工夫を用意できると、もう少し簡単にボールを使いたい場所へ運べそうに見えます。

ボール非保持でもブロックを作るよりも前向きなプレッシングを積極的にかけようとしていましたが、どこでボールを奪うためのプレッシングなのかがあまり整理されていなかったように感じます。

的確に目指す場所があって、そのためにポジションを取ることが出来るチーム相手には、無闇なプレッシングで背中のスペースを空けてしまうと簡単に底を使われてしまいます。

また、サイドにボールが出てもそこに閉じ込めるとか、
次のボールの出し先を内側に限定してそこに待ち構えてボールを奪うとか、
そういったプランまで表現できるようになるとこの前向きさが報われると思います。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 3点 (アンケート:1.7点)

この試合に向けて大槻監督は「まずは崩さなくてもいい状況で点を取れることが一番いいと思っています」と話しており、会見の中では「セットプレーのことか?」という問いに「そういうこと」と答えています。

大槻監督のこれまでの傾向からするとボンヤリしたことまでは自分から話すが、具体的なものについてははぐらかしたり、記者が提示した言葉に対してだけYES/NOを返すことが多いので、「崩さなくても良い状況」をセットプレーに限定してよいのかは微妙なところです。

試合後の長澤のコメントで
「全員の共通認識で、ボールを奪ったとき、相手が守りのブロックを作る前に攻め切るというところは狙ってはいたんですけど」
という言葉もあったので、
「崩さなくても良い状況」はセレッソの守備ブロックがセットされる前に攻撃を完結させることを目論んだ可能性が考えられます。

この試合で見えたことで言えば、守備から攻撃に切り替わったところで、攻撃時にはサイドに開いて幅を取ったり、内側に絞ったりして守備時のポジションとは違う位置にいるセレッソSBの背後スペースへ関根や長澤が走ろうとするシーンが5:08、19:27、25:05、29:10と何度も出ていましたので、
守備から攻撃への切り替えの部分で準備していたことを表現しようとしていたことは感じられました。
それをやりきることは出来ませんでしたが。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 3点 (アンケート:1.5点)

この試合で一つ喜ばしいことは83:47~にやってきました。
浦和の最終ラインでのボール保持に対して、セレッソはブロックを作って構えた状況で、槙野がすぐにボールを離すのではなくゆっくり前のスペースにいる左ボランチ(奥埜)の方へ向かってボールを運びました。

このシーンでは外側に山中が立っていたことで坂元の意識がそちらに向いており、奥埜と坂元の中間背後に汰木がポジションを取っていました。

汰木に対してはSBの松田が距離を詰めていたので、汰木はこれを嫌って下がりながらボールをもらってしまいましたし、
山中も槙野が運んでいるところで立ち止まってしまっていたので坂元が少しずつ下がりながら山中と槙野を同一視野に収めて対応していたのでチャンスにはなりませんでした。

これまでなかなか槙野が運べないことを嘆いていましたし、1:25のように運んでほしかったシーンはありましたが、意識的に運んだのか、偶発的なのかわかりませんが、それが出たのは大きな進歩だったと思います。

また、3:34、6:57のようにビルドアップ時に相手から離れて前向きにボールを受けられるようにポジションを取るシーンもありました。
これまではボールを出したらそのままであったり、相手のプレッシングを受けている味方に対してもなかなかサポートのポジションをうまく取れずに自分も苦しくなってしまうことが多かったですが、
これらのシーンのように小さいですが出来ることは増えているので、そこは継続して、さらに回数を増やしてもらいたいです。

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 3点 (アンケート:1.5点)

ビルドアップでは柴戸が最終ラインに下りてセレッソの2トップに対して数的有利を作るシーンが見られました。

8:25は柴戸が2トップの間に立つことで槙野が外側に開き、それによって1列後ろの坂元が槙野を気にしたことで山中が浮き、その山中へボールが入ったところを松田が対応したので、外側に出て行った関根がフリーでボールを受けることが出来ました。
残念ながら関根からのクロスは通りませんでしたが、数的有利を作ったことでチャンスを作れたことになります。

数的有利を作り、相手が前がかりになったことでそれが前方までつながりました。これが相手が前がかりにならずにブロックを作った時にも運ぶプレーで自分たちから数的有利を繋げていけると良いですね。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 3点 (アンケート:1.0点)

最終ラインから中盤背後の選手へボールを刺し込んでからは一気にスピードアップすることが、今の約束事のように見えます。
この試合のシュートシーンはゆっくり1列1列ではなく、最初の1列を突破したらその勢いでやりきろうとしていました。

しかし、一度進むと寄り道(外のスペース)を使わないので、Q2で言及したようになかなかフィニッシュまでたどり着けない、たどり着けても決定機にはならないといった感じでした。枠内シュート0というのがその証拠かなと。

短時間への意識は強いですが、それだけでゴールを陥れることは難しいです。この辺のバランスをうまくとってくれると良いのですが。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 3点 (アンケート:1.5点)

これもQ2、Q6での言及と重複しますが、狙う場所は共有されていたのでスピーディではあったと思います。
しかし、それの成功率や効果を高めるためのものも必要だなと。

まず1つはあるので、それはここからの積み上げになるのでしょう。
78:32は恐らくこの試合で唯一セレッソの中盤背後のスペースへボールを刺し込んで相手が中央に寄った状態から外のフリーの選手へボールを渡して深い位置まで進めたと思います。
必ず中でやりきるということではないと思うので、こういうシーンも混ぜていくと良いなと思います。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 2点 (アンケート:2.0点)

前線が積極的にプレッシングに出て行くようになってきており、最終ラインもハーフライン近くまでは上げていますが、決して全体がコンパクトにはなっていませんでした。
1つ理由としてあるのは、プレッシングによってどこへ相手を追いやるのかが曖昧なため、最終ラインや逆サイドの選手が積極的に密集してコンパクトな守備がしにくいこともあるように見えます。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 1点 (アンケート:2.2点)

Q8に関連して、この項目が足りていないことが失点にもつながったのではないかと思います。

1点目は浦和の右サイドで密集を作ろうとしましたが奪いきれずに、清武から坂元へ大きなサイドチェンジ。
2点目もセレッソの最終ラインへプレッシングして、浦和の左サイドにボールが流れましたがそこで奪うアクションがなく逆サイドへ脱出され、さらに右サイドでも奪うアクションがなく、藤田から坂元へ大きなサイドチェンジ。

プレッシングやトランジションからの流れでサイドの狭いエリアにボールが来ているが、それが意図的であったようには見えませんでした。
意図的ではないということは、事前に予測して動くのが遅れることになり、アクションが遅れれば相手に脱出するためのスペースと時間が出来てしまいます。

個人的には全部プレッシングに出るのではなく、再開後のFマリノス戦のようにミドルゾーンでブロックを組んで中央のスペースを埋めて、
ボールがサイドに入ったところで全体で密集して奪いに行く、バックパスが出たところで全体を押し上げて蹴り出させて回収したり、そこで奪いきってショートカウンターというように、メリハリがあった方が良いのではと思います。

しかし、今のチームはそうではない方向へ舵を切っていますので、その意思を尊重した上で、今後どのようにボール奪取の形を用意していくのか見ていきたいと思います。

Q10.試合全体の満足度は?
→ 2点 (アンケート:1.7点)

ピッチ上で表現されたものだけを見ると、
試合を通して何かがものすごい悪かったというわけではなかったのですが、それでもスコアに差がついてしまうのが今の実力を表しているのかなと思いました。

少しずつこういうことがやりたいんだなというものは見えてきているのは評価しつつ、
やはり結果が出てこないと観ていて満足はしませんね。。

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次の試合は水曜日の鳥栖戦です。
8月の途中から全体練習がストップし、今節の横浜FC戦でリーグ戦に復帰し、早速3-0で快勝しています。
今年はこれまでの対戦相手の事前確認で観た試合が鳥栖の試合だったことが何度もあったり、個人的に金明輝監督は非常に基本に忠実で、采配も論理的な印象を持っているので、この対戦は楽しみにしていました。

キーパーを含めて相手を見ながらポジションを取ってきっちりボールを繋いでいけるチームですので、意図のないプレッシングは空転してしまう可能性が十分にあります。
横浜FC戦はこれから確認しますが、これまでの試合では守備も非常に整理されていて、コンパクトな4-4-2で中央のスペースを埋めて奪いに行くところでは全体でスプリントしてきます。
組織だった守備をするということは、逆に狙いを立てやすくなることにもなりますので、準備する時間は短いですが、しっかりと選手の頭を整理してあげて欲しいなと思います。

次節も試合後にアンケートのリンクを出しますので、ご協力をお願いします。
では、また。

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