見出し画像

【雑感】2024/11/10 J1-第36節 浦和vs広島

昨年ほんの少しの差で浦和が届かなかったACL2の舞台に立っている今季の広島ですが、彼らは木曜日にオーストラリアのシドニーで試合をして、そこから中2日でこの試合を迎えたということで、時間の経過とともにちょっとしたボールコントロールや球際の競り合いの部分でコンディションの差が出たのかなという印象があります。特に後半に加藤がシュートを打とうとしたら足が攣ったのか上手くミートできずに外してしまった場面は「助かった。。」と思う反面、「大変だよな。。」と同情もしてしまいます。

広島は基本的に保持/非保持ともに縦へ縦へというスタンスで、どれだけアクセルを踏み続けられるかというスタイルのチームだと思いますが、だからこそこの試合は先制できなかったことが重たくのしかかったのかなと思います。ただ、この内容で3-0というスコアは広島にとっては理不尽な気もしますし、浦和としても額面通りに受け取って良いものでは無いなと思います。


広島のビルドアップに対して浦和は片方のSHを縦スライドさせて3バックに噛み合わせに行く、その時にSBはそれに連動して前に出るのでWBを捕まえに行く形になっていました。6'50~の広島のビルドアップでは松尾が20mくらい離れている中野まで長い矢印を出していて、後列の長沼も松尾の脇にいる新井まで長い矢印を出しています。広島の方はこの浦和のプレッシングに対して、加藤や松本が前向きに矢印を出した浦和のSBの背中へ向かって走って行って、そこへ後ろからロングボールが出てくるという流れが多かったです。

広島のビルドアップでの配置は主に3バック+塩谷という形なので、ロングボールを飛ばしたときには前線の選手に加えて川辺も早めに回収役になることが出来ていて、試合序盤は浦和が高い位置からプレッシングに行っても広島がロングボールで裏返す、そして中盤でのこぼれ球の回収でも先手を取ってそのまま押し込んでいくという流れが多くなりました。

ただ、押し込むと今度は浦和の選手たちがゴール前に集結するのでシュートコースが空きにくくなってしまいます。また、その前段の浦和のプレッシングを裏返したときも最初にボールが行くのが外レーンでそのままゴールには向かえないので浦和の選手たちが戻ってくる時間が少しですが生じてしまいます。その少しの時間でグスタフソンがマイナスのコースを埋めることが出来ている回数が多かったり、逆サイドのSBがきちんと絞っていたり、戻ってくる場所を間違えている場面がほとんど無かったことも大きかったように思います。

そもそも浦和の方もプレッシングの形からしてそこにボールが来るのは織り込み済みだったのかSBの背後へのCBのスライドが早かったというのもあったかもしれませんし、そういったことが重なって広島の方が圧倒的にボールを持つ時間が長いし、シュートも打っているけど決定的な場面は意外とないという展開になったのかもしれません。

また、地味に大きかったのが浦和の選手たちがクリアをする方向がラインの外に逃げるか、その後すぐに自分たちがプレーをし直せる方向へ弾くかのどちらかに出来ていて、クリアボールがどフリーな相手に渡ってノーガードでシュートを打たれるという場面は無かったのではないかと思います。そういったことの積み重ねが前半終了時点のシュートが17本だったのにゴール期待値が1.20という数字にも表れているのかなと。


浦和からすると、攻め込まれ続けたけど最後にゴールが奪えて良かったねという形で試合を折り返すことが出来ましたし、後から試合を振り返れば戦略勝ちという捉え方をされるかもしれませんが、試合前にスコルジャさんがコメントしていたのは「マンツーマンで非保持をする相手に対して攻撃のソリューションを準備してきた」ということだったことからも、相手に押し込まれることを前提としてゲームプランを立てていた訳では無かったと思います。

プレッシングを仕掛けて広島がそれを裏返すようなロングボールを出したのが流れてマイボールになった時に、そこから自分たちできちんと保持が出来ればもっと試合を安定させられたと思いますが、ビルドアップがなかなか上手くいかずにミドルゾーンでボールを失って再び撤退を強いられるという展開になってしまいました。

恐らく前半の中で今のチームが狙っていることをやろうとしたのが見えやすかったのが21'07~のビルドアップだったと思います。「今のチームが狙っていること」というのは横浜FM戦の雑感で書いたようにレイオフを多用することなのですが、この場面も井上から下りてきた関根に縦パスが入った時にグスタフソンが手前に、石原が関根の脇にポジションを取って関根から前向きにボールを受けられるようなポジションを取っています。

さらに、石原が関根からボールを受けると、今度は石原がリンセンに縦パスを入れたところに対して関根がレイオフの落とし先になれるようにポジションを取っています。この場面ではリンセンのパスが塩谷にカットされてしまいましたが。

動きがスムーズになってレイオフが成功する場面は出てきましたし、これが成功すれば美しいです。それがハマったのは42'00~のリンセン→渡邊→関根の連携で抜け出した場面ですね。偶発的な感じもありますが関根は安居からリンセンに入った時もスピードアップしてボールを受けようとしていますし、そこでボールは出て来なかったので減速しましたがリンセンから渡邊に入った時には再びスピードアップしています。これは恐らく普段のトレーニングから意識づけされた動きで、それが表現されたものなのではないかと思います。この場面では関根もスピードアップしていたのでボールコントロールの難易度が高かったですし、一目散に中野が絞ってきたのもあってシュートは決まりませんでしたが可能性を感じる場面でした。


どちらも結局はボールが繋がり切らなかったのですが、この2つのシーンには大きな違いがあって、前者は自陣なのでボールを失うとそのまま相手のチャンスになりやすい、後者は相手陣なのでボールを失ってもすぐに相手のチャンスにはなりにくいです。レイオフを成立させるにはボールに最低3人が関わることになりますし、2人目、3人目の距離は近くなりやすいです。お互いの距離が近いのでプレーを成功させるにはスピードが必要ですし、そうなると技術的な要求レベルも上がります。そのリスクを自陣で犯すべきなのかというのはこれまでの雑感でも書いてきた通りです。

28'45~はプレッシングを仕掛けてボールを蹴らせて回収した後にビルドアップを開始していますが、ホイブラーテンからパスを受けた松尾に対して安居が近くにいますが、安居は位置的に塩谷の正面(管理下)なので松尾はそこへパスを出すにはリスクがあります。安居を通り越してグスタフソンの前にあるスペースへボールを出せば脱出できたかもしれませんが、レイオフを前提としているように見えるこの安居のアクションによってかえって自陣で詰まってしまっています。

マンツーマン志向の相手であれば自分たちが距離を取ることが相手の距離を広げることにもなりますが、そうではなく近接することで相手の距離も近づけてしまっているので、この点はもう少し「楽に」というと語弊がありますが、プレーの難易度を下げながらも効果的なプレーが出来る可能性が他にあるのではないかと思います。


後半はロングボールのこぼれ球を拾った流れから松尾が抜け出して関根の決定機や石原のバー直撃ミドル、さらに松尾の突破からリンセンのヘディングと立て続けにチャンスを作りました。これらによってプレーエリアが広島陣内になったことで一気に浦和優勢な流れになりました。見た目の印象ですが、浦和がグッとよくなったというよりは前半終了間際に失点して、そこからハーフタイムでいったん休憩を挟んだことで広島の方の体力が落ち着いてしまったというか、活力が落ちてしまったのかなと思いました。単純に前半よりも浦和のボール保持者に対するアプローチのスピードが下がったような気がしました。

それでも2点目の場面は西川からのロブパスが関根まで渡り、この時の関根はかわし方が上手かっただけでなく左足で正確に素早く逆サイドでフリーな松尾まで通したのが素晴らしかったですし、シュートをヘディングで正確にコースを変えたリンセンも素晴らしかったのですが。


浦和が2点リードしても広島がそのまま落ちた訳ではなく、58'08~はCHに入っていた松本が浦和の2トップ脇でオープンに前を向くと関根ーグスタフソンのゲートを通してアルスランにパスを渡しています。そしてアルスランの対応をするために前に出た井上の背後へ加藤が抜け出したのですが、加藤がまさかのシュート直前に足を痛めてしまいました。

浦和からすると、前半から2トップ脇にはSHが縦スライドすることで簡単にはそのエリアでオープンにボールを持たせないようにしていましたが、この場面では関根が脇にいる東に引っ張られて佐々木への縦スライドをしていませんでした。

6分後の64'15~では、今度は関根が佐々木まで出て行って後列の石原が連動して東のところまで出て行ったものの、松本が一旦東から横パスを受けると見せかけて渡邊の背中に出て行くことで浦和の中盤ラインを突破して一気に前進し、加藤へのスルーパスでまたしても決定機。渡邊はちょっと早とちりをしてしまったというか、松本に上手くやられてしまいましたね。このどちらかの場面でゴールが入っていれば試合の雰囲気も全然変わったと思います。

結局後半も浦和は保持が安定しないので、広島が押し込む展開が続きました。最後は原口元気のゴールで大団円となりましたし、これで残留を確定させることが出来たので結果としては良かったわけですが、今節のような試合を繰り返していきたいよねと言える内容では無かったと思います。

それでも、ここでようやく「来季に向けて」と胸を張って言える状況に出来た訳ですから、残りの2.5試合を少しでも実りのあるものに出来るように、そして昨年は観られなかったスコルジャ体制がどのようにシーズンとシーズンを繋げていけるのかを楽しみにしたいと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!