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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第398回 夏は来ぬ(佐々木信綱)

卯の花の匂ふ垣根に 時鳥(ほととぎす)早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ
(真っ白なウツギの花が美しく映える垣根に、夏が来てホトトギスの鳴き声が初めて聞かれた)
 
 明治の歌人、佐々木信綱(ささき のぶつな、1872~1963)の「夏は来ぬ」の第1連。1896年、小山作之助が作曲して『新編教育唱歌集』の1曲として発表された。
 佐々木は三重県鈴鹿で歌人、佐々木弘綱の長男として生まれた。父の教えで5歳から歌を詠み始める。東京帝大文学部に進み、1890年には父との共編で『日本歌学全書』の刊行を始めた。1896年、落合直文や与謝野鉄幹らと新詩会を起こし、新体詩集『この花』を発表した。
 また、短歌結社「竹柏会」を主宰し、歌誌『心の花』を創刊した。ここから、歌人の木下利玄、前川佐三男、柳原白蓮のほか、国語学者の新村出、国文学者の久松潜一らが輩出した。
 佐々木は昭和期には、宮内省の御歌所寄人(おうたどころ よりうど)になり、貞明皇太后はじめ皇族に和歌を指導した。


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