スタートアップの上場における諸課題
スタートアプにおける上場に際しての諸問題(特に課題やエクイティストーリー、コーポレート・ガバナンス)について触れていきたい。
スタートアップ上場後、成長に伴う新たな課題に直面
経営人材や知見について
・経営陣を中心にVCや銀行、証券会社を中心とした金融機関がハンズオンでサポート・SOによる採用力の向上
→・多くの経営陣は上場企業経営は未経験・経営人材の採用が困難
組織
・社長が全社員を管理する組織規模(100人以下)・事業の成長が組織全体のインセンティブとして機能
→・組織規模の拡大にミドルマネジメント層の成長が追いつかない・上場タイミングや事業の成熟により士気が低下
事業
・多くの場合、ほぼ単一事業・全員が一丸となって最前線で戦う「執行」主体の運営
→・既存事業の成長鈍化に伴い、新規事業への成長投資が急務に・事業をポートフォリオ・マネジメントする「経営」への転換
資本市場との対話
・顔の見える投資家(VC等)とのコミュニケーション
→・投資家が入れ替わる結果対話相手が不十分に
資金使徒
・未上場で多額の資金調達が可能な環境
→・上場後の資金調達は実質的に限定的
踊り場局面の社内で観察された代表的症状
・タコツボ化・神学論争:既存サービスの延長線上の発想
・独善的な戦況の解釈:競争環境を自分たちにとって都合よく解釈
・不作為の経営:「決めない」ということを決めている
・他責・犯人探し:「悪いのは経営陣だなどなど」
会社の成長に応じて「経営者」の役割も変化
・創業期(0→1)起業家:プロダクトの作り込み
・成長期(1→10)事業家:プロダクトのビジネス化
・成熟期(10→10×10)経営者:複数事業を実行
基礎的な事項についてはいづれにしても共通であるが、競技が異なるから自分の役割については分析をして実行する。会社のステージの変化に伴い、経営者自身も自己変革が必要
エクイティストーリー
エクイティストーリーストーリーは起業家が語りたい物語ではなく、投資家が「投資する目的や理由」を説明するストーリーであるため誤解・誤認のないように
ストーリーを考えるときに3つの要素に分けて考える
①魅力:経営チーム・プロダクトやサービス・ユーザー基盤・TAMなどなど
②確率:潜在や顕在競合環境・法的規制・採用や組織・生産性・投資余力・開発力などなど
③時間:エクゼキューションや遅延リスク・市場拡大・市場認知・上場時期などなど
エクイティストーリー構築に際しての心構え10箇条
①投資家の視点に立って考える
②クリティカルな点を明らかにする
③事業計画の幅を考える
④時間軸を意識する
⑤フェーズごとの注目点を意識する
⑥ベンチマークを意識する
⑦削ぎ落とし、絞り込む
⑧市場が伸びるのか、市場を作るのか、市場を奪うのか
⑨変化幅とその理由で説明する
⑩会社の概要とエクイティストーリーを切り分ける
コーポレートガバナンスと聞いて浮かぶもの
・機関設計 ・監査機能(内部監査、会計監査、システム監査) ・内部統制 ・取締役の選任 ・報酬決定・開示 ・サクセッションプラン ・グループ会社管理 ・取締役会の運営方法 ・資本市場との対話 ・ESG ・経営と執行の分離 ・マネージメント・ボード、モニタリングボード
コーポレート・ガバナンスは何の為に存在するのか
・上場会社の経営者のあり方、、、、効率的な経営の確保及び経営上の違法行為の抑止のための、、、制度(江頭治郎)
・企業が法令を遵守して経営を行うこと(適法性ガバナンス)と、企業が生産性・収益性を維持・向上させて持続的に成長できるようにすること(後逸的ガバナンス)(田中亘)
・ステークホルダーが企業活動を監視して、長期的な企業価値の増大を目指す企業活動の仕組みのこと(冨山和彦)
・会社が、株主を初め顧客・従業員・地域社会の立場を踏まえたうえで透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うため(CGコード前文)
→コンプライアンスはあくまで一側面にすぎず、広義には「持続的な成長」に向けての仕組みや体制を整えることを指す
コーポレート・ガバナンスを構成する要素
①企業価値を毀損しない:⑴不正や避難を浴びることを行わない ⑵組織が弱体化しない ⑶特定のステークホルダーに偏っていない(経営者による私物化、親会社偏重など)
②ステークホルダーと長期的な信頼関係を構築する⑴投資家に透明性のある報告・説明をする ⑵顧客・事業パートナー、従業員などを不当に搾取しない ⑶リスクを議論する仕組み・文化が根付いている ⑷執行が逸脱しない(=過剰なリスクを取りすぎない)よう牽制する仕組みがある
③企業価値を長期的に高める:⑴正しいリーダーを選ぶ(サクセッション、指名員会など)⑵迅速かつ果断な意思決定ができる ⑶競争環境を正しく認識する ⑷自社の現状を正しく認識する ⑸成長に向けた動機付けがある(インセンティブ設計など)
取締役会設置会社に移行した後に留意するべきポイント
・過去の年功序列褒賞ではなく、未来の経営に対して貢献する人を選ぶ
・取締役会=手柄披露会ではない、むしろ積極的にリスクを洗い出し、ステークホルダーで共有できる関係性を目指すべき
・取締役の(事後の)新陳代謝は極めて困難と認識する必要がある。一度増やした取締役数を原因するのは至難
・「監査役会設置会社」にすることは、将来のボードの雰囲気を大きく規定することをよくよく認識しておくべき
・ボードの構成を考える前に、取締役会のアジェンダを練り直すことを最初にやるかただ効果的。そもそも誰がアジェンダを決めているのか?単に「規定上、取締役会のハンコが必要」という理由で上がってきた案件の集積になっていないか
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