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怖すぎたけど、大好きだった。『検屍官』シリーズ。パトリシア・D・コーンウェル。


ミステリーはアガサ・クリスティ以外うけつけなかった私が、唯一、学生時代に読んでいたシリーズ。確か、後輩にすすめられたのがきっかけ。読み返すと懐かしいです。

この作品の何が魅力的って、一番は検屍官から見る事件と検死のディテール。それに加えて警察内部や政治の黒い事情、女の出世に対する男の嫉妬、家族の無理解、姪との信頼関係……などなど。いろんなものにリアリティがあるところ。著者は、もと事件記者として間近に見てきたことだから、嘘っぽくない説得力がありました。

いまでこそ、いろんな推理小説があるけれど、私の学生時代は、やたら完璧な男性の探偵や警察関係者の主人公が活躍するミステリー、ご当地紹介ものみたいな中途半端なご都合ミステリーしか目にすることができませんでした。出てくる魅力的な女性は、だいたい主人公を好きな同僚(脇役)。もしくは犯人。

キャリア女性が主人公で、私生活は悲惨だけど、専門知識を駆使して問題を解決するっていう小説はとっても新鮮で、大好きでした。それに、離婚していても料理上手だし、お金があるからキッチンも素敵。料理をつくる描写は、いつも魅力的でお腹がすきました。

ミステリーとしては、若干構成に問題ありとかいう話も聞きましたが、私はパズルの完璧さにそれほどの興味を持たないので、猟奇的な犯罪の展開にホラーのような恐怖を覚えて、新刊が出るたびに怖くて寝れない夜にドキドキしつつ、スリリングなストーリー展開と専門知識のディテールを楽しんでいました。

ちょうどパソコン通信からインターネットへ私が趣味を広げていった時期とも重なっていたりして、主人公の姪がパソコンやロボットを使って大活躍する姿にワクワクしました。私のバイト先が病院だったのも、知ってる専門用語が出てきたりして楽しくて。

あとは、私が仕事先の人間関係に悩んでいる時期に、作品の主人公も男の上司に足引っ張られたり、同僚に嫉妬されたりして苦労する描写があって、かなり精神的に助けられました。自分ひとりだけが悪かったり、ヘマだったりするんじゃないってわかるだけでも気持ちが楽になりましたっけ。

ちなみに、娘がミステリ好き高校生なのですすめてみましたが、感想は「怖すぎる」で、シリーズ第1作しか読んでもらえませんでした。ちょっと残念です。





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