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黒岩涙香から松本清張へ『日本ミステリー小説史』堀啓子

日本人はもともと謎解きが大好き。江戸時代後期には、大岡裁判ものが流行っていたそうです。でも、西洋から新しい文学が入ってきたときと同じように、「推理小説」も日本に定着するまでには、かなり時間がかかったとのこと。

堀先生は、江戸時代の裁判ものが、明治に入って森鴎外の『雁』みたいなミステリにつながる流れ、そして影響している海外のミステリーなど紹介してくれます。あと、日本で流行した「毒婦」(=悪女)の犯罪実話みたいなお話が、新聞小説として人気になり、やがて「探偵小説の父」黒岩涙香へとつながってくるお話もおもしろいです。

私は、日本の推理小説やミステリーに疎いので、この本で黒岩涙香の名前を初めて知りました。明治の作家たちが、翻訳するとき日本人向けに結構原作を変えてしまうっていうのは、昔は普通だったようですが(確か、シェークスピアもそうですよね)、中国の裁判ものも日本風に書き換えていたとは。

なにより、明治時代の日本人の英語ミステリー大好き熱に驚きます。大好きなミステリを原書で読んでしまう人たち。おもしろかったミステリの内容を書き換えて、新聞で連載する作家。いろいろ、すごい熱量を感じます。

ミステリー好きは国内・国外を問わず、熱烈な人が多いように思います。なんせ、ネットで見かける本の感想とかレビューが、普通の小説よりも熱いものが多い気がしますし。

ただ、この本は単純な日本ミステリー小説の入門編というわけではなく、ミステリー小説の流行した明治20年代からだんだん鉄道文学や恐怖文学、過程小説など文芸の多様な流れに移っていく話がメインのようです。

なので、この本は、単純なミステリー初心者の入門編というよりは、日本の文学好きに「実はミステリー小説って、こんなに日本文学に影響あったんだよ」っていうのを説明する中級以上の人向けっぽいですね。

まだ初心者の私には高度な内容ですが、ここに出てくる本を読んで、またチャレンジしたいです。きっと読んだ後の印象が変わる気がします。


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