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モダンダンスの先駆者といわれる女性。映画『ザ・ダンサー』フランス・ベルギー、2016年

19世紀末のヨーロッパで大人気だったダンサー、ロイ・フラーの伝記映画。原作は、ジョヴァンニ・リスタのイタリア語の小説『Loïe Fuller : Danseuse de la Belle époque』とか。だから、正確な伝記映画ではなく、ロイの男性関係や劇団の事情など、かなりエンタメ要素を加えているようです。

有吉京子『SWAN 白鳥』『ニジンスキー寓話』、槇村さとる『ダンシング・ゼネレーション』なんかで育った世代からすると、クラシックなバレエより新しいモダンバレエの男性的なイメージしかしらなくて、100年以上前のモダンダンスとの区別もよくわかりません。だから、先駆者といわれるロイが女性ダンサーだと知ってちょっとびっくり。

アメリカの農場で牛の世話をしながら、仕事の合間に『サロメ』の台本を読んで女優にあこがれる主人公メアリ・ルイーズ・フラー。25才のときに父を亡くし、母親のいるニューヨークの宗教的な組織に身を寄せて、女優を目指して活動しますが、端役しかもらえません。そんな中、偶然踊った彼女のダンスが観客に受けて、主人公は自分の創作ダンスを踊ることになり、ロイ・フラーと名乗るようになります。

ただし、映画の舞台は150年くらい昔。女性が踊るのは下品(酒場で踊る的エロチックなものしかなかった?)とされていた時代。ニューヨークの劇団では大した扱いをしてもらえず、自分で振り付けした踊りも他のダンサーに取られたロイ。助けてくれたフランス貴族の男性ルイのお金を持ちだして、一人フランスに渡ります。

フランスでは、とある劇団に体当たりでオーディションに望み、見事自分のパフォーマンスのチャンスを獲得。しかも、舞台にライトをつかった照明演出まで自分で考えて実現し、以後、大人気を博します。

ロイは舞台で大成功しますが、彼女は自分に自信がありません。舞台を降りると成功者としての社会的な生活をするのが苦手で、友人や恋愛関係もいびつです。ただひたすら自分の望むいい舞台を目指しますが、身体を酷使するダンスや演出の照明がロイを痛めつづけます。

それでも、ロイはバレエの殿堂パリ・オペラ座で踊ることを目標にあきらめません。ようやくチャンスを掴んだかと思えたとき、彼女の身体はボロボロでしたが、それでも彼女は舞台に立ち、観客を魅了しました。

舞台を降りると、無骨で愛想がなくて、不器用で男性的なロイ役の女優さんが、踊るときにはだけはとてもいきいきして、優美で女性的な美しさを表現する落差がすごく印象的な映画でした。映画的にかなり脚色を加えたものの、ダンス自体は可能な限り忠実にロイ・フラーのものを再現するようにしたとか。実際、この映画のロイは舞台も、舞台以外の不器用さも魅力的でした。

邦題:ザ・ダンサー(原題:La Danseuse)
監督: ステファニー・ディ・ジュースト
原作 :ジョヴァンニ・リスタ『Loïe Fuller : Danseuse de la Belle époque
出演: ソーコ、リリー=ローズ・デップ、メラニー・ティエリー、ギャスパー・ウリエルほか。
制作:フランス・ベルギー(108分)2016年


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