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圧倒的なインテリジェンスの差。『太平洋戦争日本語諜報戦』武田珂代子


サブタイトルは「言語官の活躍と試練」
太平洋戦争中、アメリカ側が日系アメリカ人の青年たちをどう使って、日本側の情報をつかんで戦争を有利に導いたかという話。日本軍の捕虜の供述や、押収した日記がかなりアメリカの作戦に役立ったというのは聞いたことがあったけど、ここまでまとめられるとすごいの一言。

一般的に、日本の軍隊から家族への手紙は検閲が厳しかった……みたいな話はよくドラマや映画に出てくる。でも、実はアメリカに比較するとかなりゆるかったらしい。あと、日本軍は兵士が日記書いてもOK。日清戦争に従軍した馬丁の日記なんて近代史研究界隈では有名で、馬丁でも日記が書けるほど教育があるって事実と、歴史史料としての価値の両方のポイントが高いのだとか。でも、アメリカ軍は日記禁止。そして、日本軍兵士の日記は押収して分析して作戦立案に役立てたのだそうな。

日本側には、日本語のできるアメリカ人に解読されるって発想がなかったのか、そもそも捕虜にした兵士の日記や押収した文書を解読しようって発想がなかったのか。英語の得意な人材集めて、情報分析とかできてもよさそうなのに……ってのは現代的な発想なのかな。日本国内じゃ、戦争中は英語禁止だったし。留学経験ある人は憲兵に見張られたって、知り合いのおばあさん言ってたけれど。

戦争中、日本軍の書類はかなり入手されて分析されたってあたりまで読んで、辛くてしんどくなった。日本軍は捕虜になった兵士が見方の情報をしゃべらないように、ジュネーブ条約とか捕虜の待遇なんかを教えず、「生きて捕虜の辱めを受けず」を教育した。けれど、逆に捕まった日本人兵士は、日本軍がやったような虐待や拷問を恐れてペラペラ情報をしゃべったとか……なんか、もう読み進めるのが本当に辛い。

諜報戦といえば、映画『イミテーション・ゲーム』。あれはドイツ軍の暗号解読のために、イギリスが開発されたばかりのコンピューターを使う最先端の話だったけど、日々の活動はかなり地味。そして、本来の諜報戦ってこの本に書いてあるみたいに、とにかく大量の情報を押収して分析して……って地味で労力のかかる作業だろうなと想う。


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