夕遊
やっと読めた超大作。『三体』劉慈欽
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やっと読めた超大作。『三体』劉慈欽

夕遊


私が好きな藤井太洋さんが、高く評価していた『三体』。自粛期間に1巻を読み、そのままになっていましたが、この年末年始でとうとう2巻・3巻を読むことができました。

文系の私には、1巻の最初の中国の文化大革命のところは読みやすかったのですが、途中から現代になって物理やゲームの話になると結構つらくて、一番つらかったのが2巻(上)の最初あたりです。主人公の羅輯をはじめ、登場人物の誰にも感情移入できなかったので。でも、私の好きな人達が、ツイッターで「読んだ!」と写真をあげているのを見るたびに、がんばろうと自分を励ましました(苦笑)。

ようやく話がわかりかけてきたのが、2巻(上)の途中から。『三体』の世界観に慣れて、理屈はわからないけれども、筋が理解できるようになってからです。羅輯は中国語で「ロジック」、天雲明は「運命」、そして程心は「誠心」かな、と思いながら読みました。人工冬眠という装置で、主人公たちがどんどん時間を超えていくのは、ワープよりも現実的でおもしろかったです。

あとは、おとぎ話の謎解きの部分がおもしろかったです。科学が発達しすぎて、科学の元の仕組みがわからなくなってしまった未来人が、冬眠を経験した前世紀人の知識で謎を解く設定はわくわくします。

なにより、危機が迫ったときのパニックぶりや、状況が変わるたびに、理屈や現実を無視して誰かを懲罰する政府機関とか、毎度でも同じ過ちを繰り返す人類に既視感しかありません。そういうところが、オバマ大統領も絶賛の理由かも。

うっかりすると厭世観に浸りそうな物語ではあるのですが、一方では人類社会が危機に陥るたびに、宇宙から真逆の介入があって、状況は180度変化します。物語は、まるで振り子のよう。毎回、派手に振りきれ、予想を裏切ります。なので、いつだって絶望の次の瞬間に真逆の展開を迎えることがあるし、可能な限り諦めないで粘れば、何かの解決策が得られるかもしれないと思わせられる物語でもあります。

私は、宇宙理論についてはさっぱりだし、SFにも全然詳しくないのですが、中国や欧米文学がたまに出てくると楽しいですし、田中芳樹の『銀英伝』のヤン・ウェンリーのセリフが出てきたときには笑ってしまいました。そういえば中国では、『銀英伝』は正式出版の前に海賊版がベストセラーになって熱狂的なファンがいたのでした。

苦労して到達した3巻は上・下を一気読みする面白さでした。未読の方は、ぜひこの機会にチャレンジしてみてください。私も、また二度目、三度目を読んでゆっくり理解を深めたいです。


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夕遊
信州生まれ。現在、大阪でお仕事中。一時、広島。神戸、松山での仕事経験あり。夫は小豆島出身。いつも、旅したい場所、読みたい本やマンガ、見たい映画をさがしています。更新頻度が高いのは、文章を書くと気持ちが落ち着くから。ときどき、以前書いた文章に加筆修正もしています。