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吃音に負けない。映画『英国王のスピーチ』イギリス、オーストラリア、アメリカ、2010年。


『鑑定士と顔のない依頼人』主演のジェフリー・ラッシュつながり。なんでこの映画をみたかというと、私もかなり長い間、吃音で苦労したから。この映画の制作チームは『ボブという名の猫』もつくっているそうです。

主人公アルバート王子は、当初、王様になるはずのなかった人。なぜなら、兄のデイヴィッド王太子が健在だったから。1936年、父親のジョージ5世が崩御した後、一時はデイヴィッドがエドワード8世として国王になる。しかし、新王が結婚を望んでいたウォリスはアメリカ人で、離婚歴があり、2番目の夫ともまだ離婚していない。揉め事必死の状態。

すったもんだした挙げ句、エドワード8世はウォリスと結婚。これには当時のボールドウィン首相やチャーチル元海軍大臣らが大反対して、即位してすぐに退位。アルバート王子がジョージ6世として即位する事態になってしまう。アルバートは小さい頃から吃音に悩まされていて、スピーチが苦手。突然の王位継承で苦手なスピーチを仕事にしなければならなくなってしまった。困ったアルバートは、支えてくれる奥さんと一緒に、オーストラリア人の言語聴覚士と吃音を克服する。

ジェフリー・ラッシュは言語聴覚士の役。彼は独自のやり方で、第一次世界大戦の戦闘神経症に苦しむ元兵士たちを治療してきた人物。王室に対する礼儀作法に反してアルバートを愛称のバーティと呼んだり、自身のことをライオネルとファーストネームで呼ばせたりする。対等な関係で、吃音独特の緊張状態を二人三脚で克服していくのが見どころ。

1939年9月1日、ドイツがポーランド侵攻。3日、イギリスはドイツに宣戦布告、第二次世界大戦が始まる。この日、ジョージ6世は大英帝国全土に向けて国民を鼓舞する演説を、緊急ラジオ放送で行うことになる。緊迫した状況の中で、アルバートが完璧な演説をこなすところが最大の山場。

私も小学校の頃から吃音に悩まされていたので、すごく主人公に親近感がわきました。というか、自分のことみたいにハラハラしました。私の場合、克服のきっかけになったのは、中国語の会話の先生。外国語や外国人の先生ってのが、わりと吃音克服のいいきっかけになるらしいってのも聞いたことがあります。

この映画は久しぶりに見た正統派の映画。困難を克服して、成功を掴む種類のお話は単純にホッとできます。たまにヒネた感想を持ちたくなることもありますが、そういうときは自分にお休みをあげるのがいいみたい。

ネットでレビューをあちこち見ていて驚いたのは、吃音の克服トレーニングが現代とあまり変わっていないということ。だって、映画は1930年代。ニンゲンは時代は変われど、根本が同じってことなのかな。いろんな意味ですごい。

邦題:英国王のスピーチ(原題:The King's Speech)
監督:トム・フーパー
主演: コリン・ファース、ヘレナ・ボナム=カーター、ジェフリー・ラッシュ
製作:イギリス・オーストラリア・アメリカ(2010年)118分



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