見出し画像

ミステリー小説をめぐるミステリー映画。『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』フランス・ベルギー、2019年


数年前の週末、私はなぜか仕事の予定を1日間違えて、しかも駅の改札をくぐるまで気がつきませんでした。せっかく切符も買ってしまったので、急遽、夫を呼び出して、映画デートすることに。二人の好みと映画の上映時間を考慮した結果、『9人の翻訳家』を見ることになりました。

ストーリーは、世界中にファンがいる覆面作家ブラックのミステリ『デュダリス』が完結編し、版権を持っている出版社の守銭奴社長が、10カ国語で同時発売するために、彼のお城に翻訳家たちを集めたところから始まります。デンマーク語、ポルトガル語、ギリシャ語、ロシア語、中国語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、そして英語の翻訳家たち。原文はフランス語。こういうの、大好きです。

エリックは『デュダリス』の内容が外部にもれないように、9人の翻訳家を地下シェルターに監禁して、厳重管理。いくらごちそうを並べられても、豪華な寝室があっても、これ辛いです。そして、事件は起こります。厳密に管理されている原稿の一部が流出して、社長に大金を払えという脅迫状が届きます。

その中で、疑いをかけられたデンマークの翻訳家が自殺。ショックを受ける仲間たち。なのに、また脅迫状が届くので、パニックになったエリック社長はお金を払ってしまいます。そして、9人の翻訳家たちに八つ当たりするように銃を向けて……。

この映画はストーリーが二転三転するところもおもしろいのですが、小説好きとか本好き、外国文学好きにとってのツボは、社長のエリック以外、登場人物たちがみんな本が好きで、物語の力を信じていることです。翻訳家だけでなく、出版社の社員も。こういうお話は、大好き。

そして、翻訳家たち個人個人の生活感あふれるディテールも好き。家族を抱えて、いろんな事情があって、生活のために翻訳している翻訳家たち。辛い仕事ではあるけれど、やっぱり物語が好きだから、あまり高くない給料でもがんばっている感がすごくリアリティあって、いいなあと。『最高の花婿』のフレデリック・チョーにもまた会えてよかった!

邦題:9人の翻訳家 囚われたベストセラー(原題:Les traducteurs)
監督:レジス・ロワンサル
出演: ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ、アレックス・ロウザーほか
制作:フランス・ベルギー(109分)2019年

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?