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「ソンスクレ」という穴場

週末の昼にはフレンチやイタリアンを訪れることが多い。
人気店は2週間くらい前に電話しても予約が取れなかったりするけれど、割と予約が取れて、しかも安くて旨いのが並木通りにあるソンスクレだ。

値段と料理のバランスを考えた時、この店はレベルはとても高いと感じるのだが、なぜ予約が取りやすいのか、不思議で仕方がない。
もしかすると、苦手な食材だけ伝えて、あとは完全におまかせなのが気に入らないのだろうか。
または、デザートに豪華さがなくて、食後のドリンクが別料金なのがダメなのだろうか。
他人のことはわからないが、僕はいつも満足している。

ランチは3,080円と5,500円があるけれど、僕はいつも3,080円で完全に満足する。
前菜が2品出て、魚介料理、肉料理、アイスクリームというのが定番だ。

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ある日の最初の皿。
枯れ葉のように見えるが、ホウレンソウを乾かしたもので、パリパリと食べることができる。
その下に隠れているのはヒラメのカルパッチョと、燻製した牡蠣だった。

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ねっとりしたヒラメの身とカサコソしたホウレンソウのコントラストが楽しい。
牡蠣は半生で、磯臭さが薫香で良い香りに変わっており、牡蠣料理として満足感が高かった。
色んな素材を皿に盛り込むタイプではなく、3-4種類の要素をササッと合わせる今風の盛り付け。
僕は多様な要素を複雑に重ね、何を食べさせたいのか伝わらない料理をヨシとしないので好ましい。

ちなみにシェフは30代前半と思われるイケメンだが、お喋りはあまり得意じゃない様子。
いつも淡々と料理の説明だけしてくれる。

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少し前に食べて印象的だった。
マナガツオをフリットにして、毛蟹のビスクと合わせてあった。
底にはトロトロに仕上げた秋ナスが隠れている。
2皿目なので前菜ということになるが、メインを張れるほどの旨さだった。

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これも2皿目だったが、タラの白子のフライである。
タラの白子は質が低いと生臭いし、トロトロ感がないものだが、衣に包まれた内側の白子は臭みなど全くなく、トロトロ加減は絶妙だった。
そうか、タラの白子はフライにするとこんなに旨くなるのか!と衝撃的だった。
イメージとしてはひょふひょふのクリームコロッケ。
そこにリゾットを合わせるのが実にいい。
極上のクリームコロッケでご飯を食べているような気分だった。

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これは魚料理。
焼いたブリに紅芯大根のソースを合わせてある。
付け合せは蜂蜜に漬けて焼いた大根や、マリネされた大根が添えてある。
要はフレンチで仕上げたブリ大根だ。
なんだ、こういう遊び心もあるんだなと可笑しくなった。

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メインは鴨肉が多い。
流行りの低温真空調理ではなく、生肉からじっくり焼いてある。
僕は自分でも低温真空調理をやるので、その素晴らしさは理解しているけれど、ゆっくり時間をかけて焼いた肉とは全く仕上がりが異なる。
自分がどのように肉を焼きたいかが重要で、調理法はそこに至るまでの手段に過ぎないのだ。

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デザートはいつもアイスクリームが出る。
なんだ素っ気ないなぁと思う人がいるかもしれない。
しかしこれは、客に提供する時間から逆算して、直前にアイスクリーマーを回した、できたてのアイスクリームだ。
できたては空気をたくさん含んでいて、冷たすぎることなく、口の中でサラリと溶ける。
素材の風味が口の中に広がり、僕はデザートとして極上だと考えている。

これを冷凍すると、空気が抜けてカチカチに締まり、固くなり、口溶けが悪くなり、キーンと冷たく感じるようになる。
客が食べる時間を考えて作ったできたてアイスクリームは、レストランだからこそ出せるデザートなのだ。

これほどの料理を出していながら、予約が取りやすいのだから非常にありがたい。
フレンチ好きの皆様には、僕の席がなくならない程度に訪れてもらいたい。

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