やっちまった市の対応。

ある通学路で、飲酒運転のトラックが児童の列に突っ込んだ。

この通学路は、以前から地元住民より改善を求める意見が出ており、
過去には事故も起こっていた。

この話は事故が起きる数年前のやっちまった市の対応である。


2018年、やっちまった市道路管理部にて。

部下A:T部長、AS小学校の通学路を改善してほしいと嘆願が来ました。

T部長:ああ、またあそこか。あの地域は過去に事故があったが、一度だけだ。
   それも高齢者の運転だぞ。
   それにな、そんなことで一々対応してたら、我々の仕事が膨大な量になってしまうぞ。
   A君、キミは給料も上がらんのに、仕事が増えても構わないのかね。

部下A:それについてはなんとも言えませんが…。しかしながらあの道は
   抜け道に使われて、けっこうなスピードで車が往来してますよ。
   私も何度か利用しましたが、危険だと思われます。

T部長:A君、よく考えたまえ。市民の苦情を一々処理などできるか?
   それにな、市民というものは行政が甘い態度を示すと、際限なく
   問題を持ち込むものなんだよ。

   この件に関しては…これで話は終わりだ。

部下A:わかりました。では、この嘆願はファイリングしておきます。

T部長:キミはバカなのか?話が終わりという意味がわからんのかね。
   証拠を残すと碌なことにならない。シュレッダーをかけて
   破棄するんだ!

部下A:わかりました…そのようにいたします。


2021年、近隣住民の杞憂が、現実のものとなった当日。

部下A:T部長時代に嘆願が出ていたあの道で、とうとう事故が起きてしまった…。
   なんとも痛ましい事になってしまった…。
   T部長は定年退職してしまったので、とりあえず前の経緯を知るのは私しか居ない。
   Z部長には報告しておこう。

Z部長:A君、何だこの報告書は。

部下A:以前在籍しておりましたT部長時代のことなのですが、
   市民から嘆願が出ていた通学路で事故が起こったので、
   とりあえず報告をと思いまして…。

Z部長:嘆願を無視したのはT部長だよな。私は今初めてこの嘆願を知った。
   なので私はキミの上司ではあるが、この件に関しては責任は負えない。
   かといってT部長に責任を負わせることもできない…な。
   そうなると…A君が今後の対応をすることになるな。

部下A:なぜそうなるのですか!私は嘆願を取り上げはしましたが、最終判断を
   する立場にはないのですよ!

Z部長:まぁまぁ、落ち着きたまえ。キミは何年この職場、組織にいるのかね。
   新人ではあるまいに、何を焦っているのだ。w

部下A:しかしながら、すでにマスコミはこの件を嗅ぎ回っていますよ。

Z部長:T部長は当時、キミへこの嘆願をどう処理しろと言ったかね?

部下A:ファイリングせずに破棄しろと…あっ。

Z部長:そうだ、そのような嘆願は届いてなかったのだ。
   これが全てだよ。いま、あの事件を知った、ということだ。

   公務員たるもの、市民へ謝罪するという行為は絶対に避けねばならない。
   万が一謝罪しようものなら、責任問題へ発展する事になるからな。
   だが、過去に責任をはっきり取った公務員を見たことがあるかね。
   我が市に限らず、そんな公務員がいたかね?
   
   警察に逮捕された場合は、その者だけが勝手に動いた事になる。
   一人が組織を救うのだよ。
   もちろん、その後の就職に便宜は図るがな。

部下A:しかし、市民は何度も嘆願したとインタビューで…。

Z部長:証拠はあるかね?市民の直筆の書類があるかね?
   そのようなものが無いのに、どう対処するのかね。

C課長:キミは有給休暇が残っていたな。あ、熱があるんじゃないか?
   今すぐ自宅待機しなさい。感染の恐れがあるから早く帰りなさい。
   これは命令だよ。早退の手続きは私がやっておこう。

部下A:あ…あ、ありがとうございます。

Z部長:あ、オレも熱っぽいな。C課長、後を頼むよ。

C課長:この部所から2名も感染の恐れのある者が出たぞ!
   しかたないが2週間、道路管理部は閉鎖だ! 


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