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困った時に自分を助けてくれたデザインで、三方よしを。

Xデザイン研究所

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際にどんな学びがあるのかという教室の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第8回目はベーシック、マスター、アドバンスコースと学びを重ねて、現在はマスターコースでアドバイザーをされている日野隆史さんです。

日野隆史さん
大手通信会社でサイバーセキュリティの業務に従事。セキュリティの現場にもUXデザインを取り入れた改革や改善を行うと同時に、社内外で幅広い分野でUX デザインを活用した課題解決に取り組まれています。HCD-Net認定人間中心設計専門家。国立、私立大学等でも教鞭をとられています。

現在、どんなお仕事をされていますか?

私は仕事としてサイバーセキュリティに携わっています。情報漏洩とかウイルス感染とか、不正送金とか、クレジットカードの安全とか、そういう企業におけるセキュリティ全般について管理・戦略・企画と多岐に渡る業務に従事しています。皆さんも日常でよく利用されているサービスを提供するIT企業の持ち株会社に在籍しており、いろんなグループの会社と一緒に事に当たっています。

デザインで飯を食うぞ!と思ってからの、異動通知。

サイバーセキュリティ!デザインと一見関わらなさそうですね?

そうなんです、UXデザインやサービスデザインを専門的にやってきたキャリアではなくて。一番最初は会社で品質管理の仕事をしたんです、WEBの品質ですね。品質っていろいろあって、ユーザーの人が普通に使えるいわゆる当たり前品質だけでなく、ユーザーの人が使うことによって嬉しくなり魅力を感じてもらう品質があって、そういうことを勉強してる中でUXデザインとかサービスデザインという分野があるぞというのを知ったんです。そこで、HCD-Netが提供していたサービスデザインやUXの講義に出会ったのがこの世界に入るきっかけですね。その講座は人気あって最初に申し込んだ時は落ちたんですが、何とかして入る方法はないか考えて。そしたら見学できるよというのがあったんで、その枠に応募してスタートしました。そこで勉強した結果、もうちょっと勉強したいと思ったんです。その時に産業技術大学大学院で半年間のUXデザイン講義がありまして。一念発起ですね、自分はもうUXデザインで飯を食うぞと思って講義料も支払い終わって、会社に行ったらなんと異動通知が出てたんです。サイバーセキュリティの部署に行ってくださいと言われて、何だこれは!と。正直希望していなかったんですが、当時はショックながら、異動後に学校だけは行かせてほしいと上申し、それは通って半年通いました。大人の学びとして一つ言えるのは、こういう逆境があると逆に学びたくなるっていうこと。人って環境に障害がある時こそ逆に学びにどん欲になれるんじゃないかなとも思います。

そこからデザインの学びが始まったんですね。

大学院に通いながらHCD-Netのイベントなどに顔を出していたんですが、どこかの発表会終わった後にみんなで飲み行ってたんです。その時山崎先生と浅野先生と席を同じくして、教育論みたいな話になった時に驚いちゃったんですが(今でも驚いてますけど)、じゃあ学校やったらいいんじゃないですか?みたいな話をしたら、そうだよ、やった方がいい、って二人が言い始めて。そしたらそれからすごく短い間で学校のための法人を登記したというのが聞こえてきて。彼らはまさに実行し始めたんです。で、この2人が始めるならおもしろいの間違いないから、と受け始めたのがきっかけです、Xデザイン学校は。当時はコースが一つだったんですが、翌年はマスターってもう一つ増えて、その翌年アドバンスってもう一つ増えて。結果3年間通いました。それで、もともと学校を始める時にも、学んだ人たちが逆に教えるような立場になっていければいいな、という話もあって、今マスターコースのアドバイザーをやっています。

免許をとったら、他の免許がついてきた!

アドバイザーってどんなことをされるんですか?

講義の中で発表があるんですが、その発表に対してコメントやアドバイスを毎回フィードバックとして話しています。ここで一つまたスキルが付いたのは適応力で、Xデザイン学校ってUXデザインを学ぶつもりで来てる人がすごく多いんですね、当たり前ですが。だけど、Xデザイン学校って知らないうちに違うスキルが付くっていうのがわかって、すごいことだと思ってます。話す上で適応力って大事ですからね、ビジネスやる上で。それだけじゃないんです。もう1つ付いたスキルがあって、それがファシリテーション能力なんです。先生方が講義やってますよね、そのファシリテーション能力ってめちゃくちゃ高いんです。そこで一緒にやり続けると無意識のうちにそのスキルを覚えちゃうわけです。こういう時はこういう風にファシリテートすればいいんだと。それがなぜか本業で役に立ってるんです、今。本業の話で言うと、コロナが長くなって社員間のコミュニケーションが全然取れなくなったとか、いろいろと課題が生まれてるんですね。から、昨今少しコロナが下火になったところで企業に何が起きているかというと、“皆さんで顔を合わせて考えましょう”がすごく大事になってきてるわけです。そうなると、じゃあワークショップやろうってなる。それってファシリテーターの出番なんです。で、「日野くん得意そうだね、ちょっと手伝ってくれる?」って言われる。これ自分から学んでないんだけど覚えたんですね、見て、聞いて、やって。それが本当に役に立って会社でもありがたがられて。何か免許を取ったら、他の免許もついてきたみたいな感じです。

本業だけど本業じゃないところで役に立ってる。

サイバーセキュリティでもめちゃめちゃ役に立ってて。異動したばかりの頃は全然その分野のことがわからないわけです。サイバーセキュリティって実は仕事の範囲がすごく広くて、戦略を立てる人もいれば、実際に攻撃を監視する人、それを分析する人もいれば、攻撃に対してどうしたらいいか関係者を教育する人もいる。異動する前はもうサイバーオタクみたいな人ばかりだと思ってたんですけど、実はいろんなスキルを持った人が集まった集団にならないとダメなんです。でも当初は少人数で仕事も細分化されておらず何でも屋状態、全然わからなくて辞めちゃおうかと思うくらい悩んでたんですが、上長が話したことを未だに覚えていて、サイバーセキュリティもどんどんいろんな人材が必要になるから、と。で、教育をやってみないか?って言われたんです。それって専門的な知識も大切ですが、相手に“どうやってサイバーセキュリティのことを理解してもらうか?”、そのプロセスがすごく大事なんです。つまり、“相手=ユーザー”で、“ユーザーに教育というサービスを届ける=サービスデザイン”で。そこでサイバーセキュリティの教育を始めたわけですが、例えばユーザビリティテストが役に立つわけです、考え方として。何名かにランダムにテスト受けてもらって、フィードバックもらって、場合によってはインタビューして「わかりにくかったですか?」とか聞きながら改善していくと、少しずつよい方向に進み始めたんです。

「こんなこと一度もありません・・・」からの逆襲。

やはり繋がっていきますね。

もう一つ鮮烈な経験をしていて、CSRとして社会のために大学で教育をやろうという話があって大学で講義の責任者をやることになりました。なったはいいですが、これまた全然わからないわけです、どんなことやればいいのかって。大学の講義をどう作っていくか、どう人を集めるかってそもそも知らないので。学生も大学が集めてくれるんだろう、ぐらいに思って。それで1回目の講義をやったら、なんと来たのは指で数えられるほど。それは講義を廃止にするかの会議が行われるぐらいで担当教員に聞いたら「こんなこと今まで一度もありません」と。帰りの飛行機の中で報告書いて、会社内でも会議があって、継続にネガティブな意見が多かったんですが、私の尊敬する上司が一言、「最初はそんなもんだ」って笑い飛ばしたんです。最初はそんなもんだから続けてやれよって言ってくれて。それで僕も火が点いたんです。じゃあ何とかしなきゃ、と。で、何が悪かったんだろう?ってことを考えたわけです。そこで考えたのが、講義を知らないと人来れないのでそもそも知らなかったんじゃないか、と。よって、シラバスを作ろう、と。それともう一つ、どうやってこの講義を学生が知るんだろう?ってことを考えたわけです、タッチポイントを。それがすごく気になって何をしたかというと、「すみません、ちょっと出張させてください」と。で、学生がどういう動きをしているかを見てたんですよ、ずっと。それって実はエスノグラフィーなんですね。そしたらあることがわかって。大学の構造って掲示板があって校舎がいっぱい奥にあるんですが、みんなその掲示板を通ることがわかったんです。この掲示板に貼り出されてて、チラチラ見ながら教室に行くと。ここだ!と気付いて何をしたかというと、IT企業だからITを使うべきとか考えたんですが、人が歩いてて人が通ってるんだから人に渡せばいいよねって発想でビラ作ったんです。“こんな講義がありますよ”ってビラを急いで作って印刷してひたすら300枚ぐらい配ったんです、「みんなどうやって講義決めてるの?」ってインタビューもしながら。するとサークル経由も多いってこともわかって、サークルの先輩がこの授業はおもしろいよ、って口コミですね。だからサークルで宣伝しといてね、とか言いながら渡すようになって、ビラを全部さばいたわけです。

どうなりました?

次の回その教室ガラって開けたら、もう映画みたいなんですが、人で埋まってたんです!あれは感動しましたね。120人ぐらいの部屋が満杯で。やったなと。で、これを今度は継続的に人が来るにはどうしたらいいか?を考えました。そのためには講義を受けた人がインフルエンサーになったらいいなと思ったんです。この講義はいいよと広めてくれる。つまらないと誰もインフルエンサーにならないので講義も工夫をしたんです。「どういうことが聞きたい?」ってアンケートに書くわけですね。すると、いわゆるサイバーセキュリティの専門的な話じゃなくて、一年生が多かったのでまずはうちの会社のこと聞きたいって、どんな会社かって。それと身近なサイバーセキュリティについて聞きたい、と。自分のスマホがウイルス感染したらどうする?みたいな話ですね。まさにニーズを調べて授業にどんどん生かして反映していったんです。で、今度は次の世代、次の年になるから、安藤先生の累積的UXのようにいい体験をどう残すかってことを考えました。そこで講義を申し込もう→講義を受ける→講義を受けた後→その経験を人に話すって流れがあるから、初めて仕事で使ったんですが、カスタマージャーニーマップに落としてみたんです。それぞれあるタッチポイントを全部良くしていけば講義としてうまくいくだろうと初めて使ったわけです。結果としてどうなったか?最初数える程だった講義が4桁寸前の数まで申し込みが増えました。最大の教室を使わせていただいてもそれでも申し訳ないのだけど抽選になって、大学から表彰もされて式典にも呼ばれて。そうなるとロールモデルになるんですよ。モデルになるとどこでも適用できるので、他の大学でもこのモデル使えば人が増えるはずですね。逆に人が来すぎて困る状態になったというくらいで。

学びと結果が、素晴らしく結びついてる。

僕の考え方はUXデザインでもサービスデザインでも“デザインを学ぼう、広めよう”ではなくて、基本的に仕事で課題に直面した時に、どう学びを生かすか?って考え方なんです。デザインプロセスってありますが、先生方もそれをなぞれとは言ってないんですよ。自分のビジネスや必要とされてるところでどうその考え方を生かせるようになるか?ってことが大事だし、状況に合わせてその一部使えばいいわけです。マスターコースでもベーシックで学んだことを実践にどうやって生かすか?というのを、徹底的に実践ベースでトレーニングされるので僕もすごく共感してるし、自分も困った時にそれらを使って解決することを体で覚えたので、そんな経験が少しでも授業に役に立てばと思ってやっています。

目指せ、激レアさん。

何を目指して学ぶといいと思われますか?

僕はセキュリティの講義でも、“激レアさんになれ”って言ってるんです。サイバーセキュリティの世界ってものすごい専門性高い人がいるんです。世界でも有名なぐらいの。それってトップになるんですが、トップってある意味一人二人なんです、その分野で。そこを目指すのも一つの生き方ですが、それって一人か二人しか目指せない。才能もいるし努力したからなれますって世界じゃない。そしてどんな仕事でもトレンドの影響も受ける。30年前は花形産業だったのに今は斜陽の業種になっているとか日常ですよね。専門性が高いといただける対価も高いですが、逆にそういったデメリットもある。だから逆に1番2番でなくていい、20番30番でもいいと。だけど、そんな分野を1つだけじゃなく2つ持ってると強いんです。それを組み合わせることによる、その人しかない価値が出てくる。僕の場合だったら、UXデザインとセキュリティの2つやってる人ってあんまりいないんですよ、世の中に。すると、価値が出るわけです。セキュリティの課題をデザインで解決する、もしくはデザインの課題をセキュリティで解決することもあるかもしれない。そっちの方が山は登りやすいです。だからNo.1の孤高のトップを目指すだけでなく、オンリーワンとしての激レアさんになるって、キャリアの一つの考え方としていいと思ってて、今までキャリアを積んできた部門から急に異動させられた時とかは、今までの積み重ねはなんだったんだろうとか、その時は茫然とするわけですが、後で考えると解決手段も広がりが出るし、副業アリの会社なら副業もできるようになる。激レアさんになれって大事だなと思います。

デザインは目的じゃなくて手段ですもんね。

デザインってみんなどこかで昔の美術大学的なイメージを持ってたりするんですが、実はそうじゃないんだよ、と。何でもデザインするんだよ、と。組織もデザインするし、人もデザインする、本当に何でもデザインするんだよ、と。そんなデザインの意味って、ものすごく広義の意味があると思ってて、社会人がデザインを学ぶ時には、領域を自分で狭めないことを勧めたいですね。実はそれを理解したところところから本当の学びって始まるんじゃないかと思ってます。領域って限界を作るわけです。それは要らないと思ってて。デザインってもっと自由なものだと思ってるんで。だから何に使ってもいいんです。そういう柔らかさが本当はあるものなのに、デザインやってると“あなたはデザイナーだから、このWEB制作やってください”とか言われちゃうのって違うと思っていて。それはone of themなんですよね。Xデザイン学校にそんなイメージで来る人も多いと思うんです、会社でこういう風に役に立つって幅を決めてくる人。でも学んでいくうちに気付く人がいるんですよ。“あっ、こういう世界だけじゃないんだ!”って。結果、Xデザイン学校に来ると転職する人が多いとも言われるんですが、今まで気が付かなかった分野や世界に興味を持っちゃうんです。

私にとって、デザインとは「困った時に助けてくれたもの」。

そんな日野さんにとって、デザインって何ですか?

困った時に僕を助けてくれましたよ、デザインは。助けてくれたよ、本当に。知らなかったらそこで止まってるわけですから、物事が。だから何て言うんだろう。最初に目的を持ってサービスデザインをやるぞって言って学んだことももちろん役に立ってるけど、それ以外の困った時にデザインの考え方が役に立つっていう。だから本当に困った時に助けてくれたものですよね。それになぜアドバイザーをやってるかというと、今までそうやっていろんな人にお世話になってるわけです。大学の講義で困った時も尊敬する上長の鶴の一声で助かってる。そういうふうに人って助けられていく。でも助けられた人に何か返すってできないことが多いんです。なぜかというとそうした先輩たちってやっぱり偉大でスキルも高くて、自分はそこには返せない、どうすればいいかというと、次に来る人なんです。次に来る人に対して自分が経験したりしたことで少しでも役に立つことを返す。その人が取捨選択してくれていいけれど、1個でも何かそういうもので、後進がキャリアや人生を進めていく中で役に立つことがあれば、と後ろに返していくしか方法はないと思ってるんです。三方よしと山崎先生は言うんですが、本当にそうだなっていうのはつくづく思いますね。自分だけいいと思ってたら結局回らないんですよ。僕を助けてくれた会社の上長も、なんで自分たちは生きてるんだ?と。社会や人々が我々のサービスを使ってくれて飯食えてるんだから、その人たちに少しでも返せって言うんです。だから大学の講義もけてて。そういう受けた恩義を微力ながら返していく、それを新しい人たちが吸収しながらちょっとずつ世の中より良くしていこうという考え方で循環していったら、国も良くなるだろうし、いろんなものが良くなると思っています。


デザインが自分を助けてくれたと語ってくれた日野さん。そんなデザインの学びを後進へとバトンパスしながら世の中が少しでも良くなったら、素晴らしいです。デザインのおもしろさ は、やっぱり広くて深いです。