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建築の何処をみるのか

職業として建築をやってきてその殆どを設計を軸にきた立場として、改めて思うのは「建築の何処をみるのか」である。
というのも、単純に写真の整理を始めよう、と考えて写真を整理していると、700GBほど――13万枚ほどがある事に気がついたので整理しながら分析するのもひとつかな?と思うのです。

結論を考えると、僕自身では下記の通りではないのだろうか?

・設計している上で、悩んでいる事やよりよくしたい事についてみている
・好きなもの(斗きょうの形や軒の曲線)等に惹かれている
・経年劣化具合等、今後のプレゼンでの参考になるものがある

に、集約されるような気がする。
では、その内容に触れていきましょう。

・設計している上で、悩んでいる事やよりよくしたい事についてみている
 表紙にも出てきました平等院鳳凰堂です。雰囲気が良く、建物の形状や配置も含めてとても魅力的な建物ですよね。

写真で食べている訳でもないので撮る写真は、他の方々が撮られるようなものではありません。

・自分自身が後で確認して分かるように
・誰かに説明する際に分かるように

この2点に尽きるような気がする。
では、上の写真は――というと
「捨て熨斗」が何枚入っているのか、を確認したかったのと避雷針設備の取り付け方法と形状を確認したかったのです。

あ、ちょっと見にくくなった。
右側が捨て熨斗と言って、瓦の一部を割ったりして加工して降鬼へ曲線を表現したりしています。これを何枚にするかによってこの付近の曲線が変わったりするのですが、大体3枚までで描いていたように思います。
下手な瓦屋さんであれば、カクカクしたものになります(瓦を焼いた際に微妙にサイズ感が異なっているのですが、それを調整せずにそのまま載せていくとガタガタした屋根になることもあるんです!)
左側が避雷針です。古いものであれば、下へ落ちているように動線の束になっているものが屋根の上にあるんですが、最近になってくると大体板になってきています。

・好きなもの(斗きょうの形や軒の曲線)等に惹かれている

僕が大体伝統建築で惹かれるのは、軒の美しい曲線や柱等の構造美だ。もちろん、鳳凰堂では内部撮影禁止なので撮ることは敵わないのだが――(苦笑
それでも軒反の美しさには目を奪われるものだ。

こんな形の降鬼等、普段設計しないので余計に楽しい。

軒廻も面白い。出組も余り設計しなかったので、こうした三手先等は設計中恐らく発狂するなぁ、などと思いながら撮っていた記憶がある。

・経年劣化具合等、今後のプレゼンでの参考になるものがある
仕事として、新築案件よりも改修案件の方が好きだ、というのが分かったのもあり、大体プレゼンする方法を考えていた。誰かに伝えるっていうのは、非常に難しい。
今でこそ、3Dモデリングを自分で作成して、iPadで持ち運べるようになったが(その前までは5kg以上あるALIENWARE……現在も現役で使っているが――)
本当に説明する中で思うのは、実際に目でみていると人は理解しやすいし、こうだからこうしたいんですよ!と説明すると理解を得やすい。
お金がかかるから余計に無駄な事には使いたくないんですが――ですけど、こうする事で……とは説明する訳です。

鳳凰堂自体は何度の修復をされているものの、大本を辿れば1053年に建立されたものである。新しいもの(例えば瓦や鳳凰等)も当然あるが、古く残っているものも幾つかある。こうしたものの中でどのようにして劣化していくのか、を見定めていくのも伝統建築に携わる人間の使命なのではないのか、と思っている。

彩色をされているので、わかりにくいのはあるけれども、各パーツをみていると継ぎ足された部分があるのはみて取れる。
実際には文化財のレベルによって修理する際に残すレベルが分かれているのも要因ではあるが、それはそれで追々語る事ができれば、と考えています。

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