見出し画像

北海道神恵内村|『Fishtech』でウニの新ブランド確立、視察が400%増加、生産性30%向上

北海道の神恵内村(かもえないむら)は、小樽からさらに西へ車で1時間半ほど行ったところにあり、漁業を中心に発展してきた村です。
村のHPでは「札幌から一番近い秘境」と紹介されていまして、海沿いで自然豊かでサケ、ウニ、ナマコ、エビ、ホタテがとれるようです。人口は道内で2番目に少ない、840人です。

漁業に関するICT活用事例です。

漁業者の厳しい経営状況・・・乱獲、密猟、人手不足、生産性低下など

北海道のICT活用事例は何度かご紹介しましたが、北海道は全国平均を上回るスピードで人口減少、少子高齢化が進んでいます。

※少し前のデータですが、北海道庁のデータです。北海道の労働人口の減少は深刻です。

スクリーンショット 2020-09-23 10.54.06

神恵内村(かもえないむら)でも例に漏れず、高齢化が進み、漁業を営む人手不足という課題がありました。それだけでなく、乱獲(自然環境にある生物を無闇に大量捕獲すること)や密猟などにより浅海資源が減少、総漁獲量が低下しており、漁業者の経営状況は非常に厳しいものでした。

そこで、漁獲量を確保しつつ、新たな市場として訪日外国人観光客向けに地域ブランド化していく必要がありました。


『Fishtech®養殖管理』の運用実証をスタート

漁獲量を確保し1年中ウニを出荷できるようにしたい、という村長の想いのもと、安定的に生産できる体制を構築するために養殖へ取り組みました。
ウニは6月半ばから8月までという短い期間にしか捕れないためです。

そこで、富士通社と協力して『Fishtech』養殖管理システムを導入することになりました。

金融業界におけるIT化・デジタル化のことを「FinTech」と呼んでいますが、富士通社が出している漁業におけるITシステムを『Fishtech®養殖管理』と呼んでいます。"Fishtech"という呼び名は面白いですよね。

具体的な仕組みとして、まずウニ・ナマコの水槽にIoTセンサーとカメラを付け、水温・水質を常に測ることで、水槽内を適切な環境に整えます。そして、IoTやカメラで取ったデータはすべてクラウドシステム上で一元管理されるため、簡単に参照することができますし、データ分析も行うことができます。

画像4

スマホやタブレットでも操作できるため、いつでも、どこでも、入力や参照が可能になりました。例えば船の上でタブレットを見てデータを入力する、ということも可能です。

画像2

画像3


新ブランド「冬ウニ」の出荷に成功、視察は400%増加、業務効率化で生産性30%向上

Fishtech®養殖管理を導入したことで、非常に大きな効果が表れています。

◯安定出荷
季節を問わず、ウニを安定的に出荷することが可能になりました。

◯新ブランド「冬ウニ」
安定的に出荷できるようになったため、今までは捕れなかった冬でも美味しく食べられる「冬ウニ」ブランドを確立しました。2019年には136kgを出荷し、約400万円もの売上になっています。

◯業務効率化
養殖する場合、今までは紙で管理したり人づてに情報を伝えたり、ということがありましたが、煩雑な作業が自動化され、データ活用もできるようになったため、生産性が約30%向上しました。

◯雇用拡大
Fishtech®養殖管理を扱うことで、ノウハウがない人でも簡単に作業を受けられることができるようになりました。そのため、漁業経験がない人でも働くことができるため、雇用拡大に繋がっています。

◯知名度向上
メディア等の露出により視察が400%増加し、各庁の関係者など約200名が訪れました。


ポイント

今回の事例は最新の技術を上手くつかい、大きな効果まで出ているという、非常に優れた事例だと思います。ポイントが多すぎて全て解説できないのですが…一つあげるとすると「プロジェクトの体制を組めたこと」が成功の要因ではないかと思います。

今回の取り組みには様々な関係者が関わりました。

自治体:神恵内村、北海道経産局
金融機関:株式会社道銀地域総合研究所(北海道銀行のシンクタンク)
報道:北海道新聞
民間:(地元)沿海調査エンジニアリング、(大手)富士通、等

富士通さんのサイトで「今回のプロジェクトは腕利きの仲間を結成してドリームチームで挑んだ」と書いてありました。今回のような大きなプロジェクトは、自治体だけでも難しいですし、大手企業である富士通社だけでも難しい取り組みです。

関係者全員が協力しながら一体となって進めなければ、ここまで大きな成果はでなかったと思います。

その根幹にあるのは、村長の想いであり、そこに共感した人たちが協力していったのだと思います。あらゆるプロジェクトに共通して言えることですが、リーダーの強いビジョンと想いが重要ということがよく分かりました。強いビジョンと想いが共感を生み、周りを巻き込んでいき、ドリームチーム結成へと繋がっていくということですね。


※画像は富士通さんのサイトから拝借しました。ありがとうございました。こちらの記事も非常に素敵でした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?