【ショートショート】#66 醤油貸して。
引っ越した先のアパートは今時珍しく
住民同士のコミュニケーションが盛んだ。
多く作りすぎたカレーを分けてくれたり
実家から送られてきたミカンをくれたりする。
僕にはそうやってあげられるものがないので
なんだか申し訳なさを感じていた。
ある日の夕方、隣の部屋の住人が訪ねてきた。
どうやら醤油を借りたいらしい。
今までの恩をやっと返せると快諾した。
数日後、今度はハサミを借りにきた。
お菓子の袋が開けられないらしい。
もちろん快くお貸しした。
数日後、郵便物を開けようとハサミを探したが、無い。
そうか、お隣さんに貸したままだったか。
そういえば何日も姿を見ていないな。
返してもらおうと立ち上がるとインターホンが鳴った。
ドアを開けると何故か警察が立っていた。
「隣の〇〇さんが亡くなっている件で
お話があるのですが。
凶器のハサミにあなたの指紋が付いていまして。」
物書きになりたいという夢を叶えます